後ろにいて守られるお姫様じゃない
生徒会での私の役職は書記になった。
字がきれいだからという安直な理由で決まった。
先輩たちとはいつも通り話せるがナナミくんとは少し気まずい。
後で説教が待ってるからだ。
「今回はね…とてつもなく面倒なことをします」
ヒカリバ先輩はだるそうな顔をして言う。
面倒なこととは何だろうか?
そもそも生徒会の仕事全般面倒臭い印象があるせいで想像ができない。
「またですか。言ってるじゃないですか、断ってくださいって運営だけでもきついのに」
「面目ないです…だってあんなに必死に頼まれたら断りずらくて…」
ササキ先輩はため息をついて呆れている。
私とナナミくんは置いてきぼりで全く話が分からない。
「2人とも年間スケジュールって見てる?」
「一応見てはいますけど」
「私はあまり…すみません」
「謝らなくて大丈夫だよ」
本当にごめんなさい、行事とか興味が無くて。
今度からちょっとは目を通すようにしよう。
「今年もチーム対抗ダンジョンタイムアタックやります…」
あったなそういうイベント。すっかり忘れてた。
序盤経験値乱獲イベントだと私は思っている。
夏に行われヒロインはそこまでにメンバーを勧誘して参加するか、観戦するまたは今の私のように運営にまわり働くという選択肢ができる。
「ダンジョンは毎年先生方が準備してくれるから良いけど、ダンジョンに毎回中継用のカメラなどの準備は残念なことに俺たち生徒会の仕事になってます…」
まじですか。
ダンジョンには当然モンスターがいる。そんな中私たちに中継カメラを付けるのか…。
「1年生には流石にこれはやらせられないよ何かあったら嫌だし」
「私行きます」
「…話聞いてた?」
もちろん聞いてましたとも。
「モンスターがいるんだよ授業とは訳が違う」
ヒカリバ先輩が珍しく険しい顔で言うが知ったことか。
どんな理由で生徒会に入ったとしても私は目の前にある仕事を責任を持ってやりたい。
「理解してるつもりです。そのうえで志願してます私は」
「足手まといになる」
「自分の身は自分で守ります。それくらいできないのなら今ここで退学届け出して学園やめてやりますよ」
本気である。
戦闘は好きだがそれについてくる命の重さを理解はしているつもりだ。
さぁどうする先輩。
「会長。彼女は本気ですよ」
ササキ先輩は面白い物でも見るかのような顔をする。
「はぁ…分かったよユウガ二手に分かれてやる。俺とユキナちゃん、ユウガとカエデで」
「了解です」
「カエデ勝手に決めてるけど大丈夫かな」
「問題は無いです問題は」
ナナミくんは私を見ながら強調して言った。
あ、これ怒られるわ。
「後は…今年の予算の確認とかあるけど、明日にします俺は疲れた!」
それで解散するのっていいのか?
「じゃあ3人とも明日も今日と同じ時間にお願いね」
こうして私たちの初日の仕事は終わった。
そして私は怒られに行く。
帰る時にナナミくんに言われた場所に行くとナナミくんが先に着いていた。
「セラさん何で俺が怒っているか分かる?」
「スカートで蹴って見苦しい物を見せたことでしょうか…?」
「それもあるけど違う。お見苦しい物を見せたってところは違うスカートはちょっとあるけどね」
腕を組んでいるとナナミくんの背後には何もないはずなのに阿修羅が見えるような気がした。
「違う?!」
「違うよ?」
思いつかないてっきりスカートで蹴ったことを怒られるものかと思っていたから。
「…シールド何であの時俺のシールド解いて自分を守らなかったの?」
「前線に出てるナナミくんを守るのが最優先だから、私は自分で治せるし」
それを言うとナナミくんの顔はますます険しくなる。
「治せるからってあんな無茶して良い理由にはならないだろ!」
「……ごめんなさい」
他人である私に対してここまで怒る彼の心情は分からないが、心配してくれていたことは分かる。
「ごめん怒鳴って、次はその俺もセラさん守れるように頑張るから」
「私もナナミくんを守れるように頑張るからね!あと次はもう少し上手く蹴れるようにする!」
「だからー!セラさんはサポートでしょ?!」
「私、お姫様じゃないから後ろで待ってるような人じゃないもの」
私は誇らしげ気にナナミくんに言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます