おバカな私には理解できそうにありません

 笑いすぎだと思う。

 ナナミくん私が話す度に笑うんですが、相当彼のツボに入った様子。


「そんなに面白い?」

「うん。こんなに笑ったの初めて、でっ」


 またナナミくんは思い出したのか笑っている。

 本当に何が面白いんだろうか?


「そういえばセラさん敬語抜けたね」


 そう言えば敬語忘れてたな。


「嫌なら敬語に戻しますけど?」

「今敬語で話されると違和感しか感じないから遠慮しとく」


 じゃあお言葉に甘えて普通に話そうかな。

 …ナナミくんってこんなにやわらかい感じだっけ?

 何か素気なさが消えている。

 認識を改めようとは思ったが、ここまで私の見た彼と違うと困惑しそうだ。


「次、ペア組まないといけないよね?」

「あーそんなこと先生言ってたね」


 朝の時、連絡事項で言ってたな。

 …ペア、いないですね。

 ぼっちですね。


「セラさんはペアいるの?」

「いないんだなこれが」


 残念なことに1人もいない。

 クラスメイトが1人も声かけてくれないの。

 カナちゃんはカゲミくんと組むって言ってたんだよね。


「じゃあ良ければ俺と組まない?」

「…良いの?」


 てかナナミくんもぼっち?

 仲間?すごい親近感が湧くなぁ…。


「誘ったの俺だし断ったらやばい人だよ俺?」

「でも私の魔法サポートしかできないし」

「俺は戦闘面以外はからっきしだから助かるよ」


 嘘をつくな嘘を。

 お前のステータスはきれいだろうかどこかが低いとかないだろうが、尖ってないでしょうが。

 体力、魔力、攻撃、防御、索敵、素早さでキレイな6角形ができてるでしょうが。


「え、そんなこと無いでしょ?」

「治癒とか身体強化はできないんだよ俺」


 もしかして今まで素の強化なしの攻撃で殴っていたってこと…?

 それであんなチートな性能ってコト?!


「ナナミくんって人だったんだ…」

「え?人だと思われてなかった?」


 てっきり何か魔改造されているものかと。


「…人だと思ってる、よ?」

「せめて疑問形は消して欲しいな」


 普通の会話してるな。

 何か青春してるような…ハッ!


(仲良くなってどうする!)


 本来の目的を忘れていた。

 私は何とかしてシナリオをぶっ壊してやろうって思ってるのに、このままじゃ乙女ゲームみたいな展開が起きて修正されちゃう。


「セラさん?」

「は!」

「大丈夫?体調悪い?」

「元気!私超元気!!」


 ナナミくんは顔を覗き込むような動きをしているせいか、イケメンなご尊顔が視界を埋める。


「そうならいいけど」


 ふっと短く微笑んでナナミくんは言う。

 イケメンは何しても絵になる。

 これは好きになるよ誰でも…私は絶対に抗うけどね?!


「ユキナちゃんー!」

「は、ぐえ!」


 声をかけられた時には遅かった私はイケメンな大型犬に突進されていた。

 ここでイケメンに抱きつかれれば普通の女の子は赤面をするところだが私はしない。

 なぜかって?赤面するのは私の性に合わないからだ。


「ナナミくん、教科書を、守って…ヒカリバ先輩苦しい、離してください」

「う、うん」


 ナナミくんは驚いてる、先輩がどんな誘い方をしたか何となく想像がつく。


「ユキナちゃん早速カエデと仲良くしてくれて俺は嬉しいよ!」

「分かりましたから、ここは公衆の面前だということを思い出して離れてください」

「えー仕方ないなー」


 少し不満げな顔をして私から離れた。


「ヒカリバ先輩だよねセラさん」

「うん」

「初対面の時すごい落ち着いた雰囲気だったんだけど…」

「カエデも抱きしめてあげよう!」


 何のノリだよ。

 ヒカリバ先輩は宣言通りナナミくんを抱きしめる。

 ナナミくんは「え?は?」と声を出している。


「先輩、ナナミくんが困惑してるので離してあげてください」

「あ、ほんとだ。ごめんねカエデ」

「ダイジョウブデス」


 どう見ても大丈夫じゃないように見えるが言わないでおこう。


「ヒカリバ先輩ってこんな人なの?」


 現実を直視できないのか、キャラ崩壊してるように見えるような様子で聞いてくる。


「根は良い人だから」

「ユキナちゃん根は良い人だとそれ以外はあんまり良くないみたいに感じるんだけど…」

「そんなことないですよ…多分」


 私は目を逸らして言った。

 先輩は不服そうな顔をしている様子。


「ユキナちゃんは素っ気ないなー」

「私が好意的な感じで、先輩はすごくいい人ですって言うのどうですか?」

「…ユキナちゃんならありなような?」


 私ならありって何だよ。

 無しだよ無し!


「先輩そろそろ…」


 ナナミくんが申し訳なさそうな顔をして声を発する。


「ごめんね授業あるもんね。そうそう君たちに連絡しようと思ってたんだった、放課後生徒会室来てね」


 大事なことなら先に言えよ!

 先輩はひらひらと手を振って去っていく…嵐みたいな人だったな。


「セラさんは先輩みたいな感じの人が良い?」

「どうしたの?」


 突然の質問に私は驚く。


「ヒカリバ先輩みたいな人は別に悪いとは言わないけど」


 これが攻略対象じゃなければなー、という言葉は言わないでおこう。


「俺はダメかな?」

「うーん?…はい?」


 俺はダメかなってなんでこのタイミングで言うんだ?


「何でナナミくんがそこで出てくるの?ヒカリバ先輩とナナミくんは比べる必要は無いと思うよ?」

「そ、そういうことじゃ…まぁいいか」


 何か的外れなことを言ってしまったのだろうか?

 馬鹿な私には分からない。


「ごめん私何かおかしなこと言ったよね」

「いや気にしないで良いよ……なだけだし」

「何て言ったの?」

「何でもないよ、行こうか」


 重要な部分が聞き取れなかったがナナミくんは聞き返す時間をくれない。


「ちょっと待ってよー」


 私は彼の数歩後ろをついていくように歩き出した。
















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