少し話してこの好感度はバグってる

 私には夢がある。

 仲のいい友達と寮で楽しく毎日を過ごすことだ。

 小さな夢だと思うが、私にとっては、重大なことだ。


 あんなに濃い1日を過ごしたんだ疲れて当然だ。

 眠い早く布団に入って眠りにつきたい。

 けだるい体を引きずって自分の指定された部屋に入る。


「あ、ユキナと同じ部屋なんだ。良かったー!」

「ホンダさんよろしくね。私も嬉しいよ」

「私たちもう他人じゃないんだから、カナって呼んでよ」


 流石乙女ゲーム。少し話したらもうお友達は当たり前のことらしい。

 私には到底真似できない芸当だ。


「カナちゃんよろしくね」


 呼び捨ては難易度が高いからこれで許してほしい。

 私にしては頑張ったんだぞ許して。


「よろしく。今日は疲れたね」

「先輩たちに話しかけられたときは私の学校生活終わったかと」

「そんな大げさな。でもすごかったねまさに両手に花と言いますか」


 違うよ両手に災害だよ。

 私にとっては、悪夢だよ。


「あはは…」


 言えない。

 学園のトップである生徒会の2人が苦い食べ物が苦手だなんて。

 言えない。

 イケメンの服の匂いを直に感じたこと、イケボでささやかれたこと。

 言ったら私はこの学園で生きれなくなる。

 いじめが起きると思う。


 起きたらまず何をすると思う?

 助けを求める?

 泣く?

 否、主犯を潰す一択である。


「生徒会入るの?」

「成り行きで入らないといけなくなった」


 そう私が言うと、カナちゃんは目を輝かせて私を見る。


「え、すごいよ!あの女子生徒を入れないで有名な生徒会に入れるなんて!みんな羨ましがるよ」


 待てカナちゃん、その言葉はまずいぞ。

 あの金髪縦ロールみたいな奴らに睨まれながら仕事をせにゃいかんのか。


「大丈夫かな…私」

「大丈夫だよ自信を持って!」


 絶対勘違いしてる。

 私の大丈夫は暴力沙汰を起こしそうだから心配なんだ。

 やられたらやり返すが私のモットーだからやるからには徹底的にやる。

 相手がギブアップしたら、流石にやめるが。


「ありがとう。頑張ってみるよ」


 話を合わせておこう。

 かみ合わない会話の処理は面倒臭いから。


「勉強以外にも恋とか青春も楽しまないとね!」


 そろそろだろうか。

 好感度チェック。

 私は自分の部屋に入る時に思い出した。

 いるじゃないか好感度チェックしてくれるサポート枠が。それが彼女、カナちゃんである。


 特技は相性占いと都合がいい子だ。


「私の特技である相性チェックでユキナと意中の相手との相性を占っちゃう」

「いいの?」


 ヒロインの言っていたセリフをまねて言う。

 何か間違えて話が脱線したら最悪だから絶対に間違えたくない。


 占いをしてくれるのは1週間に一度だけだ。

 今回は初回だから全員の好感度を確認できる。

 普通なら全員最低値を表す白色になっているはずなのだが。


 このゲームは色で好感度を表している。

 白は他人、青は友人、黄色は親友、赤は好きな人、ピンクは恋人という感じになっている。


「任せて!」

「じゃあヒカリバ先輩との相性占ってもらってもいい?」

「オッケー」


 そう言ってカナちゃんは占い始める。

 彼女は水晶を使って占いをする。

 彼女の得意とする魔法は予知これから起こるであろう未来を見ることができる。

 当たる確率は5割、良い未来より悪い未来の方が的中率が高い。

 相性は魔法の特訓をしていた時にできるようになったらしい。


「えっとね…ヒカリバ先輩とユキナの相性は…すごい良いよ!このままいったら恋人になるかも!」


 水晶は黄色に輝いている。

 話して数時間でその好感度はおかしいよ!このゲームバグってるよぉ!

 製作者さーん!


「他に占いたい人いる?」

「あー、じゃあササキ先輩で」


 頼む神様!ササキ先輩も黄色だったらやばいんだよ。


「すごいササキ先輩ともいい関係だよ!ユキナ!」


 水晶の色は無慈悲なことに黄色である。

 今すぐこの水晶玉を壊したいと思った私がいるが、物に八つ当たりしても仕方ないので我慢した。


「うん、ありがとう…」


 まだ会っていないタイガ先輩ナナミくんは確認しようと思ったが、まだ会っていないから他人だろうし確認しなくても良いかなと思い最後にカゲミくんを見てもらうことにした。


「ウキハとは友達みたいだよ。このまま話しかけていたら親友になれるかも」


 ならなくて結構です。友達が良いです。

 それ以上は本当に遠慮します。


 カゲミくんルートは後半からか甘さが多くなる。

 カエデくん以外の人は、最初からクライマックスみたいな感じですごい甘い。


 カナちゃんにべったりな彼だが、このままではいけないと思い始める。

 でも人見知りでどうしたら良いか分からない時にヒロインの顔を思い出し、彼女なら大丈夫かもと考え、頼ることにしたことから始まる。


 始めは目を合わせて会話してくれなかったけど、少しづつ目を合わせるようになる。

「ねぇ」とか言ってたのが、名前を呼んでくれるようになったりと、変わる彼の様子には喜びを覚えた。


 ヒロインがダンジョンで負傷したことがきっかけになりに自身の弱さに怒りを覚えたりと、感情をはっきり出すようになる。


 ヒロインが他の男子と話してるとむっとしたり可愛いところもあって私はプレイ中何回も悶えた。


 占いを終えると寝る準備を私たちはする。


「ユキナ明日から本格的に授業始まるね」

「そうだね、頑張らないと」

「そのためにも今日はもう寝ようか」

「うん。お休み」


 私たちはお互い自分のベッドに入った。

 ベッドがふかふかなおかげで私はすぐに意識が遠くなった。





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