いじめ救済イベントが始まる前に首謀者を殴るからな(予告)

 イケメン2人の間でご飯とか地獄だわ…。

 視線が痛い。


「誰よあの女」


 金髪縦ロールお前の言葉聞こえるんだけど、せめて心の中で言ってくれるかな?!聞こえるように言ってるかもしれないけどさ?

 他の女子からの視線も痛いほど刺さる。


 この中でもし私をいじめようとか考えたやついたら、私は女でも男でも殴るかんな?!

 次の日どこぞの悪役ポジションに就いた奴は徹底的に潰す。

 いじめられてたヒロインを助けるなんてよくあるイベントを未然に防ぐために。


「大丈夫?」

「は、はい!至って元気でございます!」


 不意打ちはやめて、なんか変な返事しちゃたじゃんか。


「ユキナちゃんは好きな食べ物とかある?」

「何でも食べるので特に無いです」


 これくらい素っ気ない回答ならいけるやろ。


「そうなんだ~。良いね好き嫌い無いの」


 やべ、逆効果だ。

 好意の目が嫌な人に素っ気なく返せば、そうなるだろ学習しないね私は!


「ヒカリバ先輩はどうなんですか苦手な食べ物とか」

「俺はピーマンがダメです…」


 子供だ。

 嫌いなものが子供だ。


「ササキ先輩は?」

「ゴーヤ」


 生徒会は子供の集まりか?

 苦い物が苦手なんですね。

 そのお皿の隅っこに寄せてるのはゴーヤですね?


「ちゃんと食べましょうよ…」

「…食べなくても体は健康体そのものだから気にするな」


 ササキ先輩それは子供の良い訳です!

 ヒカリバ先輩も嫌な予感がして案の定見ると、ピーマンを残している。


「先輩方、好き嫌いはいかがなものかと」


 めっちゃ子供!かなりお子様!

 モニターの前でお前らかっこいいって思った私の乙女心返せよ!


「食べないと2人の口に突っ込みます」


 悪いな。好感度を下げれるなら私はいくらでも嫌われ役になってやる。

 これは我ながらいい作戦だ。

 流石に嫌いな食い物を突っ込まれるのは拷問だろうから。


「それならいけるかも…」

「え?」


 照れながらヒカリバ先輩は言った。

 生前近所の幼稚園児にしたら嫌われた方法が撃沈した気がする。


 いやヒカリバ先輩がそうなだけかもしれない。

 私は淡い希望を持って、ササキ先輩を見る。


「……」


 何顔赤面させてるんだよ?!

 私は自分の作戦が失敗したことを理解する。

 そして幼稚園児ごめんなお前が食べれるまで一生トマトをあーんするとか言って。


 生前謝れなかったことが悔しい。

 これ恥ずかしいよな、イケメンにあーんするんか私は?


「はい」


 ヒカリバ先輩は私にフォークを渡す。


 本当にあーんしないといけないらしい。

 また先輩から犬の耳と尻尾が見える気がする。


「あ、まじですか」

「うん」


 恥ずかしがれよ!

 私は自分で言ったことに盛大に後悔したよ!


「…口開けてください」

「はーい」


 抵抗なく口を開けるんですけどこの人。

 私は震える手でフォークを持ってピーマンに突き刺す。


「口閉じないでくださいね」


 私は先輩の口にピーマンを入れた。

 パクっと効果音が付きそうな動きで先輩はピーマンを食べる。


 すごく嫌そうな顔で食べる先輩。

 そんなに嫌いなんだね、食えお前の好感度下げるまでは永遠に食わせてやるからな?


 私は次のピーマンをフォークに刺す。

 その様子をヒカリバ先輩は見て顔を青くする。


「ま、まだ食べるの?」

「はい!残さず食べてください。それが食べる人の責任です」


 満面の笑みで私は言う。

 これだけ鬼畜なら好感度下がるでしょ、多分。


「が、頑張る…!」


 先輩。やった本人が言うのもなんですが、そんな涙目なるくらいなら、ギブアップしてください…別に私が残り食べるので。


「先輩無理なら…」

「食べます!俺やります!」


 立場逆転してんのよ。

 ヒカリバ先輩を見て何か思ったのか、ガタガタと震えながらササキ先輩もゴーヤを食べている。


「ササキ先輩も無理なら良いんですよ」

「会長が食べているんだ。学園の代表になるのだから苦手な物くらい克服できなくて…どうする!」


 そんな壮大なことじゃない。

 嫌いな物を克服するのは良い事だけどね?!

 そんなこの世の終わりみたいな顔で食べるものでもないから!


「うう…もう一生食べたくない」

「同感です」


 2人ともまさか全部食べるとは…。

 私は2人に水を渡した。


「お疲れ様です」


 食わせた側に罪悪感が来るくらいには申し訳ないと思った。

 そんな時ササキ先輩が私にこそっと耳打ちをした。


「次は会長じゃなくて俺に食わせてくれよ」

「はひゅ!」


 私は1日一体何回変な声を出すんだ。

 イケボ体制の無い私の耳を恨む。

 ここで反応しなければササキ先輩がおもちゃを見つけたと言いそうな顔をしていなかったかもしれないのに。


「私で遊ばないでください!」


 精一杯私は睨むが、ササキ先輩は怖がってない。

 顔が赤いのもあるから、照れてるのを誤魔化してるようにしか見えない。


「冗談だよ、俺はもうできるならゴーヤを食いたくない」


 私は疑いのまなざしをササキ先輩に向けた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る