私シナリオブレイクします!

 このゲームはRPGと乙女ゲームの要素が詰まっている。

 RPG初心者でも乙女ゲーム初心者でも、誰でも気軽にプレイできるようになっている。

 私も生前は楽しんだものだ。

 今はその物語の主人公になってしまったのだが。


 世界観は魔法が生活の主軸になっている世界。

 魔法の技術を磨くためにヒロインは魔法学園に通うのだ。

 ヒロインは争いを好まない性格で攻撃系の魔法はほとんど習得せず、バフデバフと回復とサポート特化になっていいる。

 でも後半くらいに攻撃系があったはず…。


 攻略サイトで見ただけだからその情報が定かかどうかは分からない。

 まぁ自分で検証すればいいか。


 攻略対象は5人。

 そのうちの2人には会っている。


 堅物ギャップ萌えメガネことササキ先輩は初めに会った人だ。

 けっこう怖いのだが、好物の甘い物を食べるときはあの険しい表情がやわらかくなる。

 彼のそんな秘密を知ってしまったヒロインは先輩に監視されるようになる。

 彼は過去に秘密にしてほしいことを信頼していた人に言われてしまいそれ以降、人を信用することができなくなってしまっていた。


 でもヒロインは誰にも言わずにいた。

 そんな彼女に惹かれて先輩はヒロインとの関係が少しずつ変化していく。


 ハッピーエンドは良かった。

 いつも甘い物を食べた時にしか笑わない先輩が。

 ヒロインに告白をして成功したときの安堵の笑みが。

 うん。最高に可愛かった。


「……」


 何か視線を感じるような?

 私は周りを見る。


「…大丈夫?」

「ひょえ!…何だカゲミくんか」


 笑顔で私は言っているが驚きすぎて心臓がバクバクと音を立てている。


「ごめん、驚かせた」

「大丈夫だよ。どうしたの私に何か用事?」

「カナが、他の子と話しているから、暇になって」


 可愛い奴め。

 ちょっと寂しそうな顔するな。

 構いたくなるでしょうが。


「私も暇だから話しようよ」

「…!うん」


 やばい感情が顔に出てて分かりやすいよ。

 これ詐欺とかに引っかかるタイプの人だ。

 守ろう。この子は私が守ろう。


「…セラは…どんな魔法を使えるの?」

「傷を癒すとか前線で頑張るみんなをサポートするのが得意だよ」

「いつか一緒に戦うときは、よろしく」


 あはは。少年よ一応ヒロインは戦闘が苦手なんだぞ?

 戦闘なんて…戦闘、なんて…。


「よろしくね!」


 超大好きです!

 だって目の前で命のやり取りの緊張感を味わいながら戦えるんだよ?

 最高に決まっている。


 でもヒロイン的には逸れてしまった。

 これでシナリオがおかしくならないことを祈るばかりだ。


 後はカゲミくんルートに入らないようにしないと。

 カゲミくんは極度の人見知りで基本は幼馴染のカナにべったりだ。

 そんな彼だけど戦うとなると優秀だ。

 索敵能力と素早さのステータスが高いのが特徴。

 私は生前脳筋プレイヤーだったので、使ってないが。

 ちなみに心を開くと笑顔で話してくれるようになるので、最高である。


「セラがいたら心強い」

「戦闘面はからっきしだけど、サポートは任せて!」


 ヒロインはこんなこと言わないのだが、いっそのことシナリオブレイクしていこうと思う。

 私の目標は誰のルートにも入らずにこの学園を卒業して第2の人生を謳歌することに決まった。今決めた。


「セラ、楽しそうだね」


 不思議そうな顔をしてカゲミくんは言った。

 彼の言う通り私は今テンションが高い。

 だって私には新しい目標ができたのだから!!


「もちろんこれから学園生活が始まるんだもの」


 私は絶対にこの決まった運命のカード何て選ばない。

 自分でカードを作ってそれを神様に突き出してやる。





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