私はヒロインですけど絶対に運命に逆らって幸せは自分でつかみます!

赤猫

平凡は死んだ

 ごく普通の高校生というのが私、西園尚美にしぞのなおみの肩書きだ。

 特にこれといってすごいことはない。

 勉強も普通。

 運動も普通。

 友達もそれなりにだがいる。

 普通の生活だ。

 ⋯前世は普通だったんだ前世は。


「じゃあどうして今!こんなことになってるのよ!」


 校門前で私は自分の前世を思い出してしまった。

 見覚えのある身の丈に合わない容姿。

 見覚えのある風景と目の前に大きくそびえ立つ校舎。


「はは···嘘でしょ」


 どうやら私は乙女ゲームの世界のヒロインに生まれ変わったみたいです。


「帰りたい⋯今すぐあの普通な日常に」

「そこの新入生」

「は、はい!」


 嫌な予感がする。

 こげ茶の髪にメガネと一見地味そうに見えるが、地味に見えない。

 腕の腕章からして彼は2年⋯すなわち私の先輩だ。

 名前は…ササキユウガだっけ?


「何をしているもう貴様らは教室にいないといけないはずだが?」


 目付きが鋭い。

 怖い!やめろ睨むな!


「…すいません、き、教室の場所がその…分からなくてですね…あはは…すいません」


 私の脳内は恐怖で埋め尽くされる。

 助けて誰か私殺されるんじゃないかな?なんて馬鹿なことを考えてしまう。


「…はぁ、ついてこい」


 ため息をしてササキ先輩は歩を進める。

 私はついてこいと言われたので慌てて歩き出す。


 校舎の中に入るとまるでまだ誰もいないんじゃないか思ってしまうほどきれいな状態に驚く。

 これが怖い先輩と歩いていなかったら騒いでいたんだろうなぁ…。


「ここだ」


 ササキ先輩が指す視線の先。1年A組が私の教室らしい。

 教室まで案内してくれたんだ…てっきり殺されるのかと。


「ありがとうございます」

「礼はいらない生徒が困っていたら助けるのが俺たち生徒会の役目だからな」


 フッと軽く笑って彼はそう言った。

 私は少しだけキュンとしてしまった。


「入れお前の新しい仲間が待っているぞ」

「は、はい!ありがとうございました」


 私は先輩に一礼してから教室に入った。

 まだ先生が来てないのでセーフだ。

 自分の席を黒板に貼ってあるプリントを見て確認する。


(窓際隅っこじゃん。ラッキー)


 何て考えてると2人の男女がやってくる。

 女の子の方は確か…主人公ヒロインの攻略をサポートする子だ。

 紺色の肩をくすぐる程度の長さの髪そして可愛い…もうこの子ヒロインにしない?


「初めまして私ホンダカナでこっちが」

「カゲミウキハ特技は気配を消すこと」


 忍者みたいな男子は攻略対象だ。

 紫色の長い髪を結いあげている。少し変わった子。

 忍者の話になると饒舌になる。


「よろしくね私はセラユキナ」


 今の名前はセラユキナ。

 好きなことはお菓子作り。苦手なことは戦うこと。

 この魔法学園に入ったことが間違いのような少女が私の今回の体である。


「何か困ったことがあったら言ってね」

「うん。ありがとう」


 まだ入学式が終わらない限りは残りの攻略対象4人に会うことはない。

 まずはこのゲームについて少しだけ思い出しておいた方が良いだろう。


 この…「ドキドキ魔法学園について」




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