第10話 子供たちが危ない!(その1)

母「花音!起きなさい!


全くもう! 遅刻するわよ!」


葵「花音ママ、また、花音は具合が悪いのか?」

心配そうに見る葵に、母はニッコリ笑い、


母「違うわよ。昨夜夜ふかししてたでしょ。あなた達。」


(そういえば、そうだった。。。慎太郎と花音と話に夢中になってたんだ。)


母「だからね、起きれないのよ。ただのお寝坊さん!」


花音が、もぞもぞと起きる。。


葵は花音の身体に添って自分の身体をくねらせ、花音の顔の横に自分の顔を持ってきた。


葵「花音、おはよう!」


葵はそう言うと、ペロッと花音の頬をなめる。


花音はびっくりし、小さく悲鳴をあげる。


母「あら?龍達の挨拶なの?」


葵「そうだよ。父さんにも、僕、よくそうしてもらうんだ。そうしたら、安心するから、花音も気持ちよく起きれるかなって。」


花音は無言で葵を見ている。


葵「あれ?気持ち良くない?」


何も言わないが答えのようである。


葵は花音に甘えるように花音に巻き付き、身体から離れないでいた。


リビングには支度を済ませ、今出かけようとする、祐一と父の姿があった。


父「なんだ。花音、お寝坊かい?」


父はニコニコしながら話しかける。普通ならば、誰かが叱っても良さそうだが、この一家にとっては、遅刻も、学校の成績すら、気に留めない。


それより、今日も無事に過ごせる事こそ、平穏と言うものなのだ。


やがて、祐一を迎えにくる。そう、梨奈である。朝はなぜか、梨奈が迎えに来、帰りは祐一が梨奈を家まで送る。と言っても家同士、歩けばほんの、2、3分程の距離なのだ。


二人のこの送り迎えは、ずっと前からの習慣だった。


梨奈「花音ちゃん、おはよう。」


花音「おはようございます。」


葵「梨奈ちゃん、おはよう。と言っても僕は見えないか。」


花音が梨奈に葵の事を伝えると梨奈は「葵ちゃん、おはよう」と答えた。


葵はそれが、また嬉しかったのだ。ニコニコとご機嫌。


祐一「じゃ、行ってくるよ、父さん、母さん。花音、無理するなよ。」


兄からの言葉に花音は微笑む。いつも朝、兄祐一は花音に「無理するなよ」と声をかけてくれる。それが、何を意味するのかを葵は知らずでいた。


学校に祐一達が着く頃、花音はやっと家を出る。


祐一と梨奈が歩けば皆が見る。

なぜかと言うと、皆が羨むようなカップルだからだ。


男子からは祐一が羨ましい。


「あんなかわいい、彼女になんで、あいつなんだ?」とまぁ、影で言われ、


女子からは、「キャー!祐一様よ!彼女を守るナイトみたいよねぇ。。。持田さんが羨ましいわ。」


とまぁ、こんな感じなのだ。



さて、一方葵と花音、そして、慎太郎達は学校の方から何やら嫌なものを察知していた。


葵にも感じる。何か嫌なもの。。


龍神が顔を出す。


龍神「何やら、良からぬ者が動いている。きをつけろ。」


葵「父さん!来てくれたのか。」

葵は心強く感じる。父が側にいるだけで。


慎太郎「何だか、嫌な感じだな。低級な感じが集まっている。。。」


花音も同じく感じるのであった。


花音「なんだろう。今までにない感じ。」


慎太郎は花音が身体を乗っ取られないようにと結界を張る。そして、葵にもだ。


門まで着くとなお、霊気が強くなる。


どこから出ているのか?


慎太郎と、龍神が探す、何処から来たものなのかを。


花音達は教室に向かう。それに伴い段々と強くなる霊気。。。


慎太郎「ここだな。」


慎太郎達が立ち止まったのは花音のクラスではなく、同じ学年のクラスだった。花音達は、ひとまずそこを立ち去り教室へと入る。


宮木がすでに教室には来ており、これから出席が取られようとするところだった。


宮木「今井、おはよう。席につきなさい。」


花音が席につくやいなや、周りのクラスメイトが花音に話しかける。


宮木は気にもせず、名前を呼んでいく。


「ねぇ、B組でね、なんか面白い遊びが流行ってんだって。」


「あのクラスに、転校生が来てね、その子が知ってる遊びがね流行ってるらしいんだよ。」


花音はそのクラスを聞いた瞬間、何か嫌な感じがした。


花音「B組?」


慎太郎も葵も顔を見合わせる。


(B組。。。子供達が何かする遊びとは。。。もしかして、、、)


慎太郎は顔を歪め、懸念な顔をする。


葵は「慎太郎、何かわかるのか?」


慎太郎は話し始める。


「人間は怖いもの見たさに、肝試しだの、行かない方がいいような場所へい行きたがる。それで、変な、良からぬ者達を呼び出したりな。。。」


葵はその怖いものがよくわからない。この前の花音の身体に、黒い浮遊するものは見たが、それが花音をあのように苦しめる。と言うことはよくわかったばかりなのだ。


休み時間になるとクラスメイトはそのB組を覗きに行く。


その様子を花音達は遠目に見ていた。そして、宮木もだ。


宮木は花音が離れた場所からその様子を見ている姿を見て、何かを感じていた。


職員室へ宮木は戻るとB組の担任である結城へ話しかけた。


宮木「結城先生のクラスでは何か流行りの遊びでもあるのですか?いえね、最近、うちのクラスでもっぱら噂でしてね。」


宮木からの話しかけに結城は答える。


「そうなんですよ。最近来た転校生がいましたでしょ、」


宮木「えぇ、確か「中村みつき」でしたか、女の子でしたよね。」


結城「そうです。その中村さんが、持ち込んだ遊びでしてね。ほら、転校生でしょ、クラスに馴染むか心配してましたが、すっかり溶け込みましてね。皆仲良くしてますから、見ていてよかったなと。」


結城の話す様子を見ながら、宮木は何か気味悪さを感じた。

(なんだ?この違和感は。。結城先生、普段なら、もっとこう、、、女性で教師なんだが、、母親のような感じで子供達の事を話すんだよな。。)


宮木「それで、一体なんの遊びなんですか?」


結城「あら、、、」



宮木はその名を聞いた瞬間背筋に寒気が走る。


急ぎ自分のクラスはおろか、B組の前に来てみると、そこには、「キャーキャー」と騒ぐ子供達の声がしていた。


宮木はその様子を見ていた、花音に話しかけた。


「今井、ここは危険だ、教室にもどりなさい。」


そして、自分のクラスの子供達を一旦教室へと誘導し、教壇に立ち、子供達に注意を呼びかける。


宮木「いいか、皆、先生が話す事をよく聞きなさい。。。今B組で流行っている遊びだが、絶対に真似をしてはいけない。絶対にだ!」


「先生、なんで?面白そうだよ。」


「そうだよ、なんでだめなの?」


宮木は言葉に詰まる。。。(こんな事、現代の子供達に通じるのか?子供だけじゃない、保護者にも伝わる。。。

自分は古臭い人間だが、それらの存在を信じる者だ。。。子供達に話していいのか。。。)


花音「みんな!」


いきなり、花音が立ち皆に呼びがける。いきなり自分に視線が集まり、少々まごまごしがちだが、それでも、花音は皆に呼びかけた。


花音「みんな。。先生が駄目だって言ってるんだから、駄目なんだよ。」


男子「今井、なんで駄目なのか知りたくないのか?みんな興味あって、やりたいって言ってんのに。」


花音「やっちゃ、駄目なんだよ。」


かなり必死な花音を宮木は見て、(やはりこの娘はわかるのかもしれない。)そう、考えた。


クラス中が、花音に「なんで、なんで?駄目なんだ」と言い始める。


花音は困った。。。


宮木「わかった。なんでかを先生が話すから、静かにな。。今井も座りなさい。」


クラスが静かになり、宮木に注目する。


宮木「これは、信じるも信じないも皆、それぞれだ。たが、あの遊びは、皆が怖いと思うような、お化けをよぶ。」


クラス中がガヤガヤとなりだす。


「よく聞くんだ。目には決して見えないからな、信じられんかもしれないが、確実にお化けを呼び、それはずっと呼び出した人間の側からはなれない。だから、してはいけない。」


シーンと静まり返る。


「テレビで見るみたいな幽霊がくるのか?先生。おもしれー」


逆に面白がるクラスメイトが出てくるとまたもや、騒ぎはじめた。


そして、廊下から何やら騒ぎ出す声が聞こえてきた。


宮木が教室から出ると、一人の男子が暴れている。慌てて、他の教師がその男子を止めようとしている。


宮木が見たのは、その教室から出てきた結城だった。


結城はただ見ているだけではないか。宮木は異様な感じを受けながらも、止めに入ろうとするのを、誰かの手が止めた。。。花音である。


花音「今は行っちゃ駄目。」


宮木は花音の視線に注目した。(この子には何か視えるのか?)


宮木「今井。。。」


花音は宮木に話そうと考えていたのだ。


やがて、暴れていた男子は落ち着く。花音はじっと見ていた。その転校生を。


そう、中村みつき。


彼女はただじっと立ち、騒ぐ様子をみていた。。



放課後、花音は宮木の所へ行き、宮木にお願いした。一緒に家に来てほしいと。


勿論、宮木は承諾した。


そして、花音が、担任と一緒に帰宅した。予め、慎太郎が母に知らせていた為、母は全く驚きもしなかった。


そして、まもなく、祐一と父も帰宅する。


驚いたのは宮木の方だった。誰も自分が来た事に動じす、まるで、知っていたかのようだったからだ。。。


父母「先生、すみません。花音が先生に来てほしいと無理を言いまして。また、来てくださった事、ありがとうございます。」


両親は丁寧に挨拶し、本題にはいる。


父「大体な事は花音にききました。」


宮木は花音を見る。(話したのか。そうだよな。)


父「それで、子供達がしているその、「こっくりさん」ですが、、、」


宮木「な、なぜ?知ってるのですか?私は子供達に言っていません。その名を。」


父「言わずともわかります。その出処も掴んでいます。転校生ですね。その子供に何か良からぬ者がついており、それが、騒ぎを起こさせています。そして、その担任の先生すらも、影響されています。」


宮木は驚きを隠せない。


宮木「なぜ、そんなことまでわかるのですか?今井さんは、一体。。」


父「いえ、我々はその目には見えない者達がちょっと見えますから。明日にでも、学校へ伺いましょう。」


全くもって、理解できない状態な宮木だった。。。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る