第8話 祐一と莉菜
「こんにちは。」
「あら、莉菜ちゃん。いらっしゃい」
母が、ニコニコと出迎える。
直ぐに祐一が玄関まで、迎え出た。
そう、花音の兄である、祐一と莉菜。
二人は恋人同士であり、また、許嫁でもある。一体どういう事なのか。
今回はこの二人のお話。。。
二人は幼なじみであり、幼稚園からの友達だった。家も近い事から、親同士も良い関係を築いていた。
祐一の家の裏の家業の事は勿論、莉菜一家は知らずで、ずっときた。
そうして、小学校に上り、高学年頃になると、莉菜は体調をよく崩すようになる。両親が心配し、あちこち病院に行くが、思わしくない。
学校も休みがちになり、ついには不登校でもないのに、学校に行けなくなってしまう。入院し、検査を受けるも異常も無く。。。ほとほと両親は困っていた。
そんな莉菜を祐一が何も分からないはずもなく、原因も大方わかっていたのだ。勿論、祐一の両親もである。
ただ、それを話すには問題があり。やはり、そのような事を信じるはずもなく。。。
祐一は、莉菜の両親に言わずとも莉菜の身体からおい出せないものかと、考えを巡らせていた。
莉菜は祐一のその裏の事など、知る由もなくだった。ただ、いつも自分に付添い、助けてくれる彼が好きだった。
莉菜「祐一さん。。」
ベッドに横たわる自分の側で目をつむる祐一を呼んでみた。
祐一「どうだ、莉菜。しんどいか?」
莉菜は微笑みながら、大丈夫だと。
祐一は感じていた。あまり時間が無さそうだと。このままでは、彼女を持って行かれそうだと。
父親に相談し、あちらの両親に話し、一刻も早くしなければ。。。
祐一「父さん。。話があるんだ。」
父「やはり来たか。。言わなくていい。わかっている。」
母「まずいわね。。。」
母は、まだ小さな花音を抱っこし、話にはいる。
「そろそろ、限界だね。。。」
出てきたのは、慎太郎だ。
「僕があちらの御先祖に話し、祐一達は莉菜の両親に話す。これしかないだろう。無断ではできないからな。勝手に他所様のお家に土足で上がるなど。」
慎太郎の助言により、覚悟を決める。
祐一は家族を連れ、莉菜の家にやって来た。
莉菜の母が驚き、どうしたのか。。
とにかく、中へと案内される。家に入るやいなや、祐一達は身構える。
リビングに通され、そこには莉菜の父親もいた。莉菜は一人っ子であり、兄妹もなくだった。
祐一の父親が口を開く。
父「大事な話があり来たんだ。」
莉菜の両親は神妙な祐一家族をみる。
莉菜父「どうしたんだ?」
父「莉菜ちゃんの事だ。」
莉菜父「莉菜か。。。原因がわからなくてな。ずっとなんだ。どうしたらいいのか。。。病院に行ってもわからないと。。。」
父「これから話す事は信じられず、我々を嫌うかもしれない。だが、一刻を争う。」
なんの事を言っているのか、わからず、しかし、深刻なのが、伝わる。
莉菜父「どういう事だ?なんの事を?」
父「莉菜ちゃんは、霊的に障害を受けている。」
莉菜の両親は暫くあっけにとられる。それは、そうだろう。なんの事を言っているのか?
莉菜父「詳しく聞こう。どういう事なんだ?」
父「莉菜ちゃんの身体は悪い霊達により、取り憑かれ、その為に具合がずっと悪くなっている。。。そして、その悪い霊とは、この家、この建物、土地に住む霊的な者達だ。」
両親「家?、、、この家に何かいるのか?、、しかし、なんで、わかるんだ?そんな事が。。。」
母「私達は、、、私達一家はその見えないもの達と関わるような役目をしている者なの。」
祐一「お願いです。お祓いし、祈祷させて下さい。莉菜を救けたいんです!」
半信半疑な様子な莉菜の両親ではあるが、とにかく、莉菜にも話そうと言う事になり、部屋へと向かった。
祐一は嫌な予感がした。自分達が来た事で。拍車がかかるのではないかと。。。
莉菜母「莉菜。入るわよ。祐一君が来てるわ」
ドアの外から声をかけるも、莉菜からの返事はなく。。。
祐一「ち、ちょっとすみません!」
祐一が、そのままドアを開ける。
「莉菜!どうしたの?、、、莉菜!聞こえる?」
莉菜の母親が慌てて、駆け寄るが、莉菜はぐったりとしていた。
救急車を両親が呼び、その間に応急に祐一達が邪悪なものを祓う。
救急車が来た頃には意識は戻っていたが、必ずやまたやって来るだろうと。そう、皆が考えていた。
病院へと運ばれ至急検査等がされたが、やはり異常はなく、次の日には退院となった。
祐一達は莉菜の両親に呼ばれ、再び自宅を訪れた。
莉菜父「先日の話だが、何か悪いものがいて、その為に梨奈の病気が治らないなら、それが無くなれば、莉菜は治るのか?」
父「少なくとも今よりは、改善するはずだ。」
莉菜の父親はわかったと、一言。
祐一達の祈祷が始まる。
祐一「莉菜。。悪い者を莉菜の身体から追い出すからね。ちょっと、しんどいかもしれないけど、頑張るんだ。必ず救けるから。」
莉菜はうなずき、目をつむる。。。
父を始め皆が数珠を、持ち、母が札を莉菜の身体の四方向に置き、いよいよ始まった。
莉菜は暫くすると苦しみ出す。その様子を莉菜の両親は見ながら、気がきではない。
そのうちに莉菜の口をかり、邪の霊が出てきた。
悪霊「お前達か!我々の邪魔をするのは!」
いつも話す莉菜の声とは違い、低めの声帯を使い、かすれたような声と話し方で出てきた。
それにおののき、不安な莉菜の両親をよそに、祐一の父がその者に話しかける。
「なぜ、この娘さんを痛めつけるのだ?」
悪霊「元々は我々がここの住人であるにも関わらず、この者達が土足で上り踏みつけてきた。我々は再三に渡り、出ていけ!と知らせてきた。が、しかし、一向に出て行かない。だから、この娘をもらう事にした。」
父「勝手に土足で上がったことは、この人達に代わり、謝る。すまない。しかし、人の命を奪う事は許される事ではない。」
悪霊「では、出ていけ!」
父「よく聞いてほしい。君たちがいる世界とこちらの世界は繫がっている。いくら君たちが自分達のものだと言い張り、こちらの世界の者に言おうとも、こちらの世界では、ここが、彼らの住処であるんだ。それにどうだろう、君たちが還る処はここではなく、別にある事を知っているかい?」
悪霊「なに?別にあるだと?」
父「そうだ、こちらの世界で生き、こちらの世界を去ると皆が行くべき世界があり、各々、行くべき道もあるんだ。それに、君たちを迎えに来てくれている方々もいる。」
悪霊達はなんの事を言っているのか全く分からず、(別の世界で行くべきところがあるだと?)
すると、光が見え、中から仏様が何体か出てこられた。
仏様「皆様。お迎えに上がりました。さぁ、私達と共に参りましょう。」
悪霊「どこに?どこに連れて行く気だ!騙されるものか!我々は此処が住処だ!」
中々納得しない彼らに、男性と女性が現れる。
その男性と女性を見た瞬間、見覚えがあるのか、
「父上、、、は、母上、、、」
どうやら、彼らの身内のようで、彼らは納得したのだった。
「さぁ、一緒に行きましょう。皆が待っています。。。」
微笑む女性を見て、悪霊は消えていった。。。。
暫くし、莉菜の呼吸も落ち着き、祐一と父は安堵する。
祐一はほっとため息をつき、莉菜の側に行き莉菜の頬に触れた。
「よかった。。。間に合った。。。」
父は莉菜の両親に向けて、話す。
「もう、大丈夫だ。きちんとあの悪い霊的な者は連れて上げられた。これで、きっと、莉菜ちゃんの身体も回復するだろう。ただ、直ぐには無理だからな、休ませてやり、徐々に良くなると思う。」
莉菜父「聞きたいことがある。あれは何だったんだ?莉菜じゃないみたいだった。説明してくれ。」
父「霊的な者は、人間に憑依し、その人間の機能を使い、つまり声帯や言葉などだが、それらを使いあのように出て来たりするんだ。」
莉菜母「あのまま、莉菜はどうなっていたの?」
母「まずいことになっていたかもしれないわ。」
莉菜が気がつき、目を覚ます。
莉菜「お父さん。。お母さん。。」
両親が駆け寄り、梨奈を見て安堵する。
莉菜は祐一達に礼を言い、また眠ってしまった。。。
それから、しばらくぶりに、莉菜は元気になり、学校へも行けるようになっていった。
祐一は梨奈の元気な姿を見て安堵するのだった。。。
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