第4話 後宮に放り込まれました
「開門ー!」
高らかに響く武官の声。
ギイギイと音を立てて開く、大きな門。
この先にあるものは、ほかでもない後宮だ。
そう。今現在、私は馬車に乗せられて、嫁入りの真っ最中である。
私はこれから、入内前に建てられた、私の宮殿に住むことになっている。
最低、二年間は。
ただ――後宮という場所は、多くの妃、女官を皇帝のものとして侍らせる、皇帝のためだけの女の園を作ることで、皇帝の財力、権力を皆に知らしめるための政の一環であり、一つの町になっているような場所である。したがって、土地もいるわ莫大な国家予算がその園によって消費されるわと、そのそうほいほい作れるようなものではないし、皇帝にならなければ後宮を作ることは不可能だ。それはたとえ、次期皇帝たる東宮、ましてや妃が一人しか決まっていないような皇子ならなおさらだ。
ま、要約すると、ここは本来、現皇帝陛下の後宮であり、私にとっての
皇帝陛下はまだまだお元気で、ついでに言うとかなりの
東宮とは、真逆の性癖のようだ。いや、そもそも東宮に性癖と名の付くものがあるのかさえ、わからないけれど。
――私の夫となる東宮と、たして二で割れば丁度良いと思うんだけどね。
落ち着け。これを口に出しでもすれば、反逆罪で刑部の官吏に補導されること、間違いない。それに、陛下は結構人気なんだから。
そう。現皇帝陛下は、割と評判がいい。
その
そのお陰で、周辺国で現在進行中の戦国の世とは似ても似つかぬ平和を謳歌できているとかなんとか。
実際にお会いしたことはないし、これらの情報も、文献から得た知識だから、完璧とは言えないが。
この国の書物は当たり前だが、皇族寄りの表現を用いて書かれている。
それはそうだろう。誰も、皇族を敵に回したくないからだ。
――個人的には、もっと異国の書物を読んで、客観的な視点から評価したいところだけど。それもあり、留学をしたかったのだけど。
まあ、贅沢は言っていられない。
――願わくば、後宮の書庫の規模が大きくありますように。
私が後宮の門をくぐった時に考えていたことは、それだけだった。
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