第3話 決意
三日分の本を選んでいる最中、私はやっと、ことの重大さに気が付いた。
まず、私の父は、兵部尚書。すなわち、六部の一人で、帝の側近でもある。
まあ、地道な努力と派手な功績があれば、下級官吏でもこの地位まで這い上がれないこともないが、基本的に、ここまでの地位を持つ者は、歴史のある、又は物凄い功績を立てた上、帝の覚えもめでたいような上級貴族だ。
私の家、
確か、曾祖父の姪は皇后だったはずだ。
まあ、そういった具体性はどうでもいい。問題は、
つまるところ、これまでの女と同じ様に、三日でさようならという訳にはいかないのだ。
私自身はできることなら結婚したくないため、三日でさようならをとてもとても歓迎するのだが、世間体という厄介な代物が重視される貴族社会の本分を優先する以上、私と東宮の利害が一致したとしても、そうはいかないだろう。
――本、三日分じゃ足りないじゃない。
いやいやいや、そうじゃない。そうじゃなくて。
「二年間も後宮暮らしか…」
はあ、と、かなり大きな溜息が出る。
帝の(私の場合東宮の)お手つきが二年間なかった妃は、手柄を立てた臣下に下賜されたり、実家に帰されたりする。
お手つきになる心配はほぼないとみているが、二年間も籠の鳥生活は少々キツい。
ついでに、下賜されるのも正直勘弁してほしい。独身志望なんで。
「後宮で学べることなんて、如何に女同士の闇がぶつかると恐ろしいことになるかってことくらいでしょう…?」
誰もいないのをいいことに、誰かに聞かれたら貴族社会上、かなりヤバいことになりそうな独り言を漏らす。
――しかし、それは、私が後宮について文献で情報収集をした結果であり、それらを私なりにまとめた結果でもある。
できるだけ学ばない方が幸せなヤツだ。
まあ、とにかくそれらは置いておいて。やるべきことは分かった。
――東宮に、協力を請わないとね。
決戦の時は一週間後なり。
本の虫生活で鍛えた我が語彙力と、弁舌を生かした作戦。
東宮との交渉という、この国の女性として、前代未聞のことをやってのける。
そして、出戻った後は留学をやってのけるのだ、と。
そう、決意した。
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