番外編『外道探偵vs社畜探偵』前編


 目覚めると、見覚えのある洋室にいた。


 ほのかに香る薔薇のニオイに、冷えた空気。

 大勢で食事をしても平気な長机。


 忘れるはずもない。

 ここは忌まわしき、あの洋館の食堂じゃないか。


「おやおや。アンタもいるとは、ますます面白くなってきたねぇ」


 後ろから、神経を逆なでする調子の声がした。

 声の主に察しがつきながらも、振り返り、その男を確認する。


 そこにいたのは予想通り、ごわついた長髪と、眼鏡の奥で輝くドブ色の目が特徴的な男。

 外道探偵だった。


「黙りこくってどうしたのかな? 恐怖で声も出ないかい?

 返事くらいしてくれよ、社畜探偵」


 社畜探偵。

 そうだ……それが私の、探偵としての名前だ。


 まだ記憶がおぼろげなものの、外道探偵と争っていた覚えはある。

 何故、そんな因縁の相手と同じ部屋にいるのか、理解ができない。


「外道探偵、キミはどれくらい前から、この部屋にいる?」


「5分ほど前だね。出入り口をすべて確認してみたけど、どの扉も開かない。完全に閉じ込められてしまっている状態さ」


 扉を開こうとしてみても、外道探偵の言う通り、ビクともしない。

 カギなどかからない仕組みのはずだが、扉の後ろに何かが置かれているのだろうか?


 この扉はかなり頑強なので、無理やり破壊することも不可能。

 完全に閉じ込められてしまった。


「何かしらの犯罪組織か、凶悪犯に拉致されたんだろうか?」


「どうして俺を見るんだよ。

 俺だってアンタと同じ状態さ、信じておくれ」


「……ひとまず信じるよ。

 まだキミよりも、凶悪犯が相手の方が安心できるしね」


「ヒヒヒ、そんなに褒めないで欲しいなぁ」


 そんな会話をしていると、どこからともなく、少年らしきあどけない声が聞こえてきた。


〈はじめまして、外道探偵に社畜探偵……僕の名はアンヘル。

 あなたたちに興味があって、この場に呼んだ者です〉


 室内には誰も見当たらない。

 どこかにスピーカーがあるはずだが、声の出どころは不明だ。


 それに、声が妙に頭に響く。

 指向性のスピーカーなどの、特殊な装置でも使っているのだろうか。


「クヒヒ……可愛い声をしているねぇ、アンヘルくん。

 姿を見せてくれないかな? お兄さんと一緒に遊ぼうよ」


〈残念ながら、殺人鬼と遊ぶ趣味はありませんよ、外道探偵〉


「コイツは手厳しい」


 外道探偵の言葉を一蹴するアンヘルと名乗る少年。

 度胸は一人前らしい。


 このままでは埒が明かないので、私も会話にしよう。


「隣の男が無礼ですみません。

 アンヘルさん、私たちはこことは別の場所にいたはず。

 どうして、何の目的で、この場所に連れてこられたんですか?」


〈ふふ、勝手に連行されたことが不満なのですか?

 あなたには、不満を抱く資格などないはずですよ、社畜探偵〉


「……!?」


 ドキリとした。


 今のは、どういう意味なんだ。

 まさか、このアンヘルという少年は、私の過去を知っているのか?


 私の動揺など気に留めず、アンヘルは更に言葉を続けていく。


〈あなたたちに今許された行動は、ただ一つです。

 すぐそばのテーブルの上を見てください〉


 言われるままにテーブルの上を見ると、そこにはいつの間にか、トランプの束が置かれていた。

 見る限り、何の変哲もない、至って普通のトランプだ。


〈あなたたち二人には、今からそのトランプを使ってゲームをしてもらいます。

 ゲームの名前は『転職ポーカー』です〉


「転職ポーカー?」


 聞いたことがない。

 それは外道探偵も同じのようで、怪訝そうにトランプを見つめている。


〈社畜探偵、最大3枚まで、好きな枚数を山札から引いてください〉


 言われた通り、素直にトランプを引いていく。

 何が起きたかは未だに不明な上に、相手は居場所さえこちらに掴ませない。


 ここは下手に逆らわず、従うのがベストだろう。


 私が3枚引いたあと、同じように外道探偵も引き、また私が引き……というのを何度か繰り返し、私と外道探偵はそれぞれ6枚の手札を獲得した。


 ポーカーとは、5枚の手札で特定の役を揃えるゲームだが、何故か手札の数は6枚。


 更に奇妙なことに、獲得した手札は自分にしか見えないよう手で持つのではなく、相手に見えやすいようテーブルに表向きで置かれている。


【社畜探偵の手札】

 ♠2 ♠4 ♥4 ♦7 ♥10 ♥13


【外道探偵の手札】

 ♥1 ♦4 ♠5 ♣8 ♠11 ♦13


 普通のポーカーで考えるなら、外道探偵は役なし。

 ワンペアが揃っている私の勝ちになる状況だ。


〈このゲームでは、お二人には社長になってもらいます。

 今、あなたたちの目の前に置かれている手札……これらは、守るべき社員だと考えてください〉


「クヒヒ、社畜探偵から社長探偵に改名するかい?」


「静かにしててくれ。ルールを聞き逃す」


〈ですが、守るだけでは会社に成長などありません。

 優れた人材を獲得することも、社長の責務です。

 あなたたちには、相手の会社から人材を一人、ヘッドハンティングする権利があります〉


「なるほどねぇ、だから『転職ポーカー』か。

 我が社には役がひとつもないから助かるよ。

 例えば、社長探偵の社員、♥4をこちらへ転職させれば、ワンペアの完成だね」


「だが、なら私は外道探偵社から♦13を引き抜かせてもらうよ。

 これで、こちらは13のワンペアができる。

 同じ役なら数字が大きい方が勝つのは、同じだろうからね」


〈流石は探偵、飲み込みが早いですね。お二人が今言った通り、足りない人材を相手の会社から奪うことが『転職ポーカー』の肝です。

 ただ当然、相手の動きへの防衛手段もあります。お二人の手元に、防衛用の山札を用意しました〉


 言われてみて初めて、自分の手元に新たな山札が用意されていることに気付いた。


 いつの間に置いたのだろうか。

 アンヘルを名乗る少年への疑念が強まりつつも、ひとまず新たな山札を確認する。


 中身は、至って普通のトランプだ。


〈ヘッドハンティングの前に、その山札から1枚カードを選び、自分の手札の横に裏向きで置いてください。

 それは、あなたが特定の社員を重用したことの証明となります。

 社長に愛された社員は、ヘッドハンターの甘言を跳ね除け、会社に残留するでしょう〉


「クヒヒ、分かってきたよ。手札のうち1枚だけは防衛可能。

 つまり、相手がどの手札を欲しがるか推理し、防衛するってワケだね?」


「その逆も然りだろう。

 相手がこちらの推理を読んで防衛する……というのを読んで、逆に別の手札を獲得するという動きも効果的だ」


〈……せっかくゲームを楽しめるフレーバーを語っているのに、サクリと噛み砕いて、台無しにしないでください。風流じゃないですね〉


「拉致まがいのことをされて、ゲームなど楽しめるワケないでしょう」


「そうかい? 俺は結構ワクワクしてるけどなぁ」


 外道探偵の言葉はスルーした。

 本当に、以前からこの男とは噛み合わない。


 この狂った信念に身を投じる姿勢が、かつて『探偵撲滅計画』に陶酔していた頃の自分を、思い出すからだろうか。


〈では試しに一度、一通り試してみましょうか。

 外道探偵と社畜探偵、今から3分の間に、防衛するカードを山札から選択し、テーブルに伏せてください。

 両者がカードを伏せたら、ヘッドハンティングに移ります〉


【社畜探偵の手札】

 ♠2 ♠4 ♥4 ♦7 ♥10 ♥13


【外道探偵の手札】

 ♥1 ♦4 ♠5 ♣8 ♠11 ♦13


 さて、どうするかな。

 真剣に付き合う気はないが、何もせず負けてやるのも気に入らない。


 負けない程度にはちゃんと考えよう。


「防衛する手札だけじゃなくて、奪取するカードも考えないとな」


 前提として、外道探偵は先ほど宣言した通り、こちらの4のカードを狙う可能性が高い。


 こちらのワンペアを潰せる上に、もし自分の♦4を獲られた場合、スリーカードの役ができ上がって、負けが確定するためだ。


 その場合、私はカウンターとして外道探偵の♦4を狙えば、相手がワンペアを作ることを防ぐと同時に、自分のワンペアも死守可能で、勝利となる。


 ただ、それは外道探偵も重々承知の上なので、防衛対象に当然♦4を指定するだろう。

 ♦4の奪取ヘッドハンティングが通る確率は低い。


 その点を考慮すると、外道探偵の裏をかき、先ほどの宣言通り♦13の奪取を狙うのもありだろう。

 そうすれば、こちらは13のワンペアを作れる。

 外道探偵の奪取を防げず、4のワンペアが作られたとしても、数字の差で私の勝ちだ。


 つまり、今回のゲームでは防衛と奪取ヘッドハンティングに、それぞれ2つの選択肢が存在する。


【防衛】

 ①♠4 ②♥4

⇒どちらの場合でも役職に変化はなし。

 外道探偵がどちらを選ぶかは完全に未知数。


【奪取】

 ①♦4 ②♦13

⇒最初の宣言時の通り、最も数字が大きいのは13。

 ♦13の奪取が通った場合、

 こちらの4の札を奪取されてペアが作られても、勝利可能。


 【防衛】は運勝負にしかならない。

 まだ相手の思考を読む材料がある、【奪取】を重視すべきだ。


 では、外道探偵なら♦4と♦13、どちらを防衛するだろうか。


 常人なら、先ほど宣言した♦13を防衛したくなるはず。

 しかし知恵が回る者なら、宣言通りに奪取するとは考えず、♦4を選ぶだろう。


 ただ、相手は常識の通じない相手、外道探偵。

 特に今回のようなエキシビションなら、より私に屈辱を与える選択肢を獲るはず。


 だから外道探偵が防衛するのは――私が先ほど宣言した【♦13】だ。

 【♦4】を奪取しよう。


「選択が終わりました」


 防衛用の山札から【♠4】のカードを伏せ、宣言した。

 既に選択を終えていたらしい外道探偵は、とても愉快そうにニタニタとコチラを見ている。


 やはり、私を嘲笑うカードのチョイスをしたのだろう。

 ある意味で、分かりやすい男だ。


 いい機会だから、年の功というものを思い知らせてやろうじゃないか。


〈両者がカードを伏せたので、奪取ヘッドハンティングに移りましょう。

 まず、相手に伏せたまま防衛用のカードを渡してください。

 その後、配布時の手札で勝利していた側の先行で、奪取ヘッドハンティングを進めていきます〉


 外道探偵とカードの受け渡しを済ませ、テーブル上に置いたカードの上に手のひらを置く。


〈では社畜探偵。

 私が『オープン』と言ったら、奪取〈ヘッドハンティング〉するカードを宣言し、カードをめくってください〉


 これが【♦13】のカードだったら私の勝利だ。

 たかがゲームだけど、つい心の中で「【♦13】が来い」と願ってしまう。


 家族にこの話をしたら、「本当に子供っぽいんだから」と呆れられてしまうだろうな。


 そしてアンヘルが合図する――


〈オープン〉


「♦4」


 宣言と同時にカードをめくった。


 そこに書いてあったのは――【♦4】。

 先ほど私が宣言したものとは、別の数字であった。


「さっきと同じ数字を狙うなんて、意外と素直なんだねぇ」


 外道探偵が蔑むような笑い声を漏らした。

 所詮はお遊びだ、と心の中で自分に落ち着くよう言い聞かせる。


 2分の1の確率なのだから、外してしまっても仕方がない。


「おめでとう、外道探偵。キミは当てられるといいね」


 そう私が言葉を返すと、外道探偵は少し目を見開き、それから意味深な笑みを浮かべた。


〈では、外道探偵の手番です。

 私が『オープン』と言ったら、奪取〈ヘッドハンティング〉するカードを宣言し、カードをめくってください〉


 外道探偵の立場からすれば、♠4か♥4を狙う他ないはず。

 2分の1が当てられないことを祈った。


「2分の、1……?」


 そこで気付いた。

 本当に、4狙いしかないのか、と。


 確かに防衛の対象を考えている時は、私のスリーカードを防ぐためにも、外道探偵にとって4狙いが最善だったはず。


 しかし私の奪取が失敗した今、外道探偵が狙うカードは――


〈オープン〉


「♥13」


奪取ヘッドハンティング成功〉


 外道探偵が私の手札から♥13を奪い、自分の手札に加える。

 勝負の結果は考えるまでもない。


〈社畜探偵、4のワンペア。外道探偵、13のワンペア。

 よって勝者、外道探偵〉


◆エキシビション最終結果


【社畜探偵の手札】

 ♠2 ♠4 ♥4 ♦7 ♥10

 防衛:成功(♠4) 奪取:失敗(♦4)

⇒役:4のワンペア


【外道探偵の手札】

 ♥1 ♦4 ♠5 ♣8 ♠11 ♦13 ♥13

 防衛:成功(♦4) 奪取:成功(♥13)

⇒役:13のワンペア


 防衛対象として考えもしなかったカードを奪取され、私は敗北した。

 呆気にとられた私を指差して、外道探偵がやや不満げに語る。


「バカだねぇ、社畜探偵……。

 なぜ自分が負けたか、理解しているかい?」


「後攻となった時のことを考えていなかったせいだろ?

 先攻と後攻に関したルールが後出しされる可能性を、もっと考えるべきだったよ」


「……違う。敗因は、さっきの失言だ」


「失言?」


 思い当たる節がない。

 一体私のどの発言が、外道探偵にヒントを与えてしまったんだ。


「さっきアンタは『当てられるといいね』と言った……まるで、どこか他人事じゃないか。

 まるで、当てられるかどうかは運否天賦かのように」


「……!?」


 言われてみてハッと気付く。

 実際その発言をした時は、2分の1の運次第だと思っていた。

 その考えが無自覚のうちに、発言に滲み出てしまっていたんだ。


「ようやく理解したようだねぇ。アンタのさっきの発言は、奪取の成否に運が絡むと考えていなければ出てこない。俺がどちらかの4を狙うだろうと推理したことを、自ら教えてしまっていたんだよ」


「……よく分かったよ。だけど、ワンペアが既にできていた私は防衛か奪取、どちらかを成功させれば勝つ見込みが高かった。

 奪取は♦4を狙い、防衛を♥13にと、二つの可能性をカバーするとは思わなかったのかい?」


 外道探偵が呆れたように溜め息を吐いた。

 それから、心底つまらなそうな顔で、私を見つめる。


「当然考えたさ。でも、ツマラナイだろう?」


「ツマラナイ……?」


 外道探偵が私の手札から♠4と♥4の2枚を手に取り、解説を続ける。


「この2枚を狙う場合、どちらを選んでも役の強さに変化はない。つまり完全なランダム……運まかせだ。

 そんなの、神に祈るみたいでツマラナイじゃないか」


 そこまでは私も推理できていた。

 運勝負になると考え、早々に考えるのをやめたんだ。

 しかし外道探偵は、そこから更に、運勝負に頼らない選択を望んだのだろう。


 私と違って、自分の推理に絶対的な自信を持つがゆえに――


「自分の運命を神に委ねるくらいなら、俺は俺の推理と心中する。

 それが探偵ってものだろう? アンタも探偵なら、もっと本気で、信念を持ってかかってきなよ。家族が大事な、大事な、社畜探偵」


 悪意に満ちた表情で私を挑発する外道探偵。

 その目は、いつも通りドス黒く濁っていながらも、ある種の信念すら感じさせるほど真っ直ぐな視線を、コチラに向けていた。


 以前の私なら、すぐに黙らせようとしたはず。

 しかし、今は自分でも不思議なほど、冷静に受け流せた。


「悪いけど、このようなお遊びに本気で付き合うつもりはないよ。

 仕事以外でまでキミと戯れるのは勘弁だね」


 ここまで落ち着いていられるのは、あの無能探偵と呼ばれる心優しい少年と出会えて、暗殺業から足を洗い、探偵業を始めた頃の心境を思い出せたからだろうか。


 今度また無能くんに会えたら、お礼を言わないとね。


「無能、くん……」


 頭の奥でビリっと音がした。

 何か、とても大事なことを、私は忘れている気がする。


 でも思い出せない。

 この違和感が、あまりにもどかしかった。


「アンヘルさん、もう満足ですか?

 そろそろ家に帰してもらいたいのですが」


 どこにいるかも分からない少年に呼びかけた。


 返ってきたのは、覚悟していた通りの答え――


〈まだ帰しませんよ。この部屋から出る権利が与えられるのは、次から始まる『転職ポーカー』の本番で勝利した、どちらか一方だけ。救われたいなら、本気で争ってください〉


 やはり、そういう趣旨か。

 途中から何となく察してはいた。


 要するに、この声の主は、私と外道探偵を対決させたいんだろう。

 単なる遊びではなく、互いの命運を懸けたデスゲームで。


〈あなたたちの手元に、自分の運命を象徴するコインをそれぞれ用意しました。

 相手のコインを奪い尽くした方が勝者です〉


 見ると、説明された通り、私と外道探偵の手元に金色のコインの山が用意されていた。

 ただ妙なことに、外道探偵の山の方が僅かに大きく見える。


「おやおや? 俺より社畜探偵の方が少ないけど、数量は足りているのかい?」


〈あなたたちには、探偵序列というものがあるのでしょう? その結果を反映したものだと思ってください〉


「クヒヒ、なるほど。格下が格上に挑むには、リスクがあって当然か♪」


 いちいち腹立たしい言い回しをする外道探偵。

 よほど機嫌がいいのか、いつになく挑発的で、口数が多い。


 まさか、この男は既に、このゲームの真実に気付いているのか?


「素直にゲームマスターの声に従うとは珍しいね、外道探偵。

 無理やり戦わされるなんて、キミが最も嫌うことだろう?」


「クヒヒ……確かに、他人を殺し合わせて、自分は高みの見物を決め込むようなヤツは大嫌いさ。でも、今回ばかりは大人しく従うよ」


 外道探偵が私を指差して、目を細め、口角を釣り上げて語る。


「アンタとは一度、本気でヤり合いたかったからねぇ。

 思い込みの激しいアンタに、俺という存在をたっぷり教えてあげるよ、社畜探偵」


「こちらこそ願ってもない好機だ。

 お前との因縁に決着をつけさせてもらうぞ、外道探偵」


 外道探偵を睨み返し、できる限り強い声で言い返した。


 しかし油断すると、不安が顔を出しそうになる。

 この『転職ポーカー』は、相手の思惑を推理しながら防衛と奪取を行う、心理戦が重要なゲーム。


 そして、今私の目の前にいる外道探偵は、私が知るすべての探偵の中でも、最も心理戦に強い男だ。


 それでも私は負けられない。

 絶対に負けられない、理由がある。


「……私にチカラを貸してくれ、二人とも」


 愛する家族を想いながら、誰にも聞こえないように言った。


 ――後編に続く。


【『転職ポーカー』の流れ】


 ①互いに手札を6枚揃え、公開

 ②ベットするコインの数を宣言

 ③防衛する手札を1枚選択

 ④配布された手札の強い側から、奪取したい相手の手札を1枚宣言

 ⑤相手が防衛する手札を確認し、防衛されていなければ獲得

 ⑥最終的な手札の勝者が、賭けたコインを総取り

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る