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少年の言葉に、僕は首を傾げる。
いったい、何を言っているんだ?
未来から来た?
何の話だ?
「で、僕は何をしている者かというと、不正に未来のものを過去に持ちこんだり、逆に過去のものを未来に持ちこんだりするのを防ぐ役目を担う者なんだ。まぁ、カッコよく言えば、時の番人、みたいなやつかな。タイムキーパーって呼ぶ人もいるけど、そこはどうでもいいや……」
少年の話は、理解不能の域を超えて、もはやぶっ飛んでいる。
「いや……。そんな話、いきなりされても意味がわからないよ……」
僕は、小さな小さな声で、呟くようにそう言った。
「え、何? 何か言った?」
少年は、怪訝そうな顔をしてそう訊ねた。
「いやだから、そんな話信じられないって!」
今度は少年に聞こえるように、僕は必要以上に大きな声でそう言った。
「そんな、信じられないって言われても……。そんなこと言ったら、お兄さんの話だって常人じゃ信じられないと思うけど?」
少年は、深い溜め息つきながら、馬鹿にしたような表情でそう言った。
少年の態度、その言葉はたいそう腹の立つものだ。
けれど、確かにそうだ。
先ほどの僕の体験談は、きっと誰に言ったって馬鹿馬鹿しい絵空事。
ひどい妄想癖の持ち主だと思われても仕方がないような話なのだ。
それを、目の前の少年はまるで……
「僕の話を信じてくれているのかい?」
僕は、そう訊ねた。
「信じるも何も、その帽子のために、遥々未来からやって来たんだよ、僕は」
少年は、同じことを何度も言わせるな、と言いたげな雰囲気でそう言った。
僕は、右手に握りしめている、赤い頭巾を見降ろす。
僕の人生をめちゃくちゃにしたこの頭巾。
そして、目の前の少年に視線を移す。
頭巾を抹消するために、未来から来た少年。
「じゃあ、一つだけ教えてくれないかい? この、これは……。魔法のききみみずきんは、誰が何の目的で作ったんだい?」
馬鹿げた質問だと、自分でも思う。
この、恐ろしいききみみずきんが、何の為に、誰の手によって作られたかなんて、聞いていったいどうする?
こんなもの、未来から来たという目の前の少年が抹殺しようとしているのだから、さっさとくれてやればいいじゃないか。
そうも思うが……
僕は、知りたかった。
ただ単に、知りたかったのだ。
こんなにも恐ろしい力を持つものを、どうして生みだしたのか……
「オッケー。じゃあ、教えるから、教えたらおとなしく渡してくれる?」
少年の言葉に、僕は深く頷く。
「うん。まずそれは、魔法のききみみずきんなんかじゃない。それは、戦場で敵国兵士の行動を読み取るために造られた、科学兵器だよ」
少年の言葉に、僕は思わずごくりと生唾を飲み込む。
「名前は精神音感知感覚促進機、通称SSP。またの名を、読心訓練帽。ある未来の、ある科学大国で、戦争のために発明されたものだ。誰が発明したかってのは、まぁ……、よく分かっていない。分かっていることは、それを使ったことによって悲劇が起きたって事だ。人間は誰しも、自分の意志とは無関係に絶えず声を発している。その声は、
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