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「えっ!? 嘘だ!? 私、死んでないの?? でも、昨日ここでバイクとぶつかって、気がついたらこんな、体が透けてて……。全然寒さも感じないし、誰にも見えてないみたいだったから、てっきり死んだと思ってたのに……」



少女の見解は冷静かつ論理的だが、結論が間違っている。



「確かに君は……、今の所なんていうか、肉体はここにはないけど、死んだわけじゃないよ。あんまりいい言葉じゃないけど、君の今の状況を表すにぴったりの言葉は、生き霊、だね」


「い、生き霊……?」



そう……、俺の目に見える、普通の人には見えないものとは、生き霊の事だったのだ。


ずっと、小さい頃からそうだった。

他人には見えてないものが自分には見えている。

それがはっきりと生き霊だと気付いたのは、小学二年の頃だった。


夜、眠る前にトイレに行くと、玄関に、田舎にいるはずのじいちゃんが立っていた。



「じいちゃん? 何でそんなとこに??」



訳がわからず、俺は尋ねた。



「最期に一目会いに来たんじゃ。達者でな~」



そう言うと、じいちゃんは消えた。

翌朝、ばあちゃんから電話があって、じいちゃんが亡くなったという事だった。


俺の認識では、生き霊とは、生きている人間の魂が抜けてしまったものを指す。

そして、そうなる原因は二種類あると考えられる。


一つは、強い想いから、魂が肉体から出てしまうというもの。

愛情、憎悪、悲哀、なんだっていいが、何かを強く思い過ぎたせいで魂が肉体を離れてしまうというものだ。

じいちゃんのように、自分の死期を悟って、自ら肉体を抜け出し、魂となって会いたい人のもとへ行くのも、その一つだ。


二つ目は、ふいに出てしまったもの。

今ここにいる少女のように、肉体に何らかの衝撃が加わる事で、魂が肉体からポーンと弾き出てしまったというものだ。

ただしこの場合、厳密に言うと、自分の意思とは全く関係なく生き霊となってしまう。

だから……、急がなければならない。



「じゃ、じゃあ私は……、まだ生きてるの?」



動揺する少女に向かって、笑顔で頷く俺。



「けど、急がないとね。あまりにも長い時間、魂が肉体から離れるのは危険だから。昨日、事故に遭ったのは何時頃?」


「えっと、確か……、お昼の2時頃、だったかな?」



おっと……、意外に早いな。


俺はポケットから携帯を取り出して時間を確かめる。

現在、昼の12時半。



「っと、急ごうか。24時間過ぎると危ないから」



俺の言葉に、少女は再度驚きつつも、力強く頷いた。

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