第117話 学校祭①

「み、みやび君...どうですか?」


「おー、可愛いな」


俺の目の前にはメイド服を身に纏った美央の姿があった。

今日は学校祭当日だ。

俺たちのクラスはメイド喫茶をやっており、俺は執事服に着替えた後、それの客引きをすることとなったので、さっそく外に出る。




(...暇だ)


俺は客引きと言っても、チラシを配るわけでもなく、ただ看板を持って立っているだけである。

他の子を見ると、声をかけたりして宣伝しているが、俺にそんな勇気はない。

なので、とりあえず看板を持ってぼーっと立っていたそんな時


「あ!みやび先輩!」


人混みの中から俺を呼ぶ声が聞こえた。


「宣伝ですか?」


そこには俺の後輩の夏希がいた。


「まあそんなところだ」


「私も一緒にいてもいいですか?」


「まあいいけど、暇なだけだぞ?」


「はい!私が居たいんです!」


そして、客引きをし始めてから30分くらいが経過したところで


「こんなものでいいかな」


「終わりました?では今から一緒に回りませんか?」


「んー、俺はみおと回ろうと思ってるからなぁ」


「えー、じゃあ教室までついて行っていいですか?」


「まあ、それならいいよ」


そうして俺たちは教室まで一緒に行くこととなった。




「みお?居るか?」


俺は教室に入り、美央を探していると


「あ!みやび!」


そこには、メイド服を着た遥の姿があった。


「おう、はるか」


「みやび...あの...この後一緒に...」


「はるかちゃん!注文行ってきてー!」


遥は顔を赤らめ、何か言おうとしたが店内はかなり忙しいのか、遥は大急ぎで行ってしまった。


「...?」




結局、美央たちはかなり忙しいらしく一緒に回ることができないようだ。


「みお先輩は無理でしたね、では私と回りましょ!」


「...そうだな」


「やった!じゃあ行きましょう!!」


夏希は待ってましたと言わんばかりに、俺の手を引く。


「初めはどこに行こうか?」


「私行きたいところあったんですよ!」


「そうか、じゃあそこに行こう」


そうして夏希に連れてこられた場所は


「ここです!」


「え..ここ?」


そこは占いだった。


「私たちを占ってもらいたいんです!並びましょう!」


そういって、夏希は列へ並ぶ。

しかし、その列は長くかなり人気があるようだ。


「楽しみですね!」


「なつきは占いとか信じるのか?」


「そりゃ信じますよ!いい結果だけですけど」


なるほど、確かに良い結果だけ信じた方が

良い気分になれる。


「ところでどんなことを占ってもらうんだ?」


占ってもらいに来たものの、その内容は気になる。


「それはですね...私とみやび先輩との相性...とかですかね?」


「あ、相性?」


「あっ...えと、冗談ですよ?!」


なんだ、冗談か。

夏希の声からは冗談に聞こえなかったので、少し戸惑ってしまった。


しばらくすると、列が進み俺たちまで順番が回ってくる。


「いらっしゃいませ」


中に入ると、フードを目元まで被ったいかにも怪しい占い師が座っていた。

俺たちはその占い師のテーブルを挟んだ向かい側に案内されたので、そこに座った。


「じゃあ始めますね」


俺たちが座ると、そんな事を言ってテーブルの上にある水晶に手をかざす。

まだ何も言ってないのにいいのだろうか?


しばらくそんなことをすると、少し深呼吸をして


「終わりました」


と言う。


「な、何を占ったんですか?」


俺は恐る恐るその占い師に聞いてみる。


「あれ?看板をご覧になられなかったのですか?」


すると、戸惑った様にその占い師は言う。


「え?看板?」


「ほら、ここは恋愛関連を占うお店ですよ?」


そう言って、占い師は看板を出してくる。


「あれ?言ってませんでしたっけ?」


「聞いてない」


なるほど、通りで列がカップルや女子高生が多いと思ったわけだ。

だが、何故夏希は俺とこんなところにきたのだろうか。


「まあとりあえず、占いの結果を言いますね?」


「はい!お願いします!」


夏希はノリノリで結果を聞く姿勢になる。


「お二人の相性は...かなりいいです!」


「おお!」


「だけどまだ何か足りない、と言った感じですね」


「なるほど!ありがとうございます!」


夏希は嬉しそうにお礼を言い、俺を引いて外に出る。


「みやび先輩!私たち相性いいらしいですよ!」


「あ、ああ...そうらしいな」


「じゃあいっそ付き合っちゃいます?」


「っ⁉︎な、何言い出すんだよ」


急にとんでもないことを言い出す夏希に、俺は戸惑ってしまった。


「あはは!冗談ですよぉ」


「な、なんだよ...」


声のトーンが冗談に聞こえず、勘違いをしてしまった。


「とりあえず次行きませんか?」


「ああ、そうだな」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る