第110話 体育祭

体育祭本番、俺は100メートル走を終わらせて、次は美央との二人三脚だ。


「みやび君と私なら優勝間違いなしですね!」


「はは、そうだな」


俺たちは足を結んでスタートラインに立つ。


「あ、みやび君!私たちの息が合うように何か言いながら走りませんか?」


「いいけど、何にする?」


「それはですね、私が好きと言ったらみやび君は可愛いと言ってください」


...なんだよそのバカップルでもしないような掛け声は...


「...無しで」


「えー、いいと思ったんですが...」


流石にみんなの前でそんなことを連呼する勇気は俺にはない。

その後は、俺たちは1、2という合図で落ち着いたのであった。




「やりましたねみやび君!」


「そうだな」


俺たちは無事1位という結果でゴールした。

そして、次はいよいよ遥と美央が戦うことになる。


「みおなんかには絶対負けないから!」


「ふふ、それはどうでしょう?」


2人が戦う種目は借り物競走である。

紙に書かれたお題のものを誰かに借りて、それを持っていくというものだ。

ちなみにこの借り物競走は全員、計四つのお題のものを持って行くと、クリアできるというものだ。




「よーい、ドン!」


たった今、戦いの火蓋は切られ一斉に選手たちが走り始めた。

お題の書かれた紙は最初に遥が取り、その次が美央の順番だった。


遥は初めはハンカチだったのか、友達に借りてそれを持って行った。

美央も初めは簡単なお題だったため、難なくクリアしていった。


その後もなんとか知り合いに借りて、なんとか最後のお題を取りに行く2人。

最後はお題のものを持ちながらゴールテープを切らないと行けないらしく、取った後テープが貼られる。


「とった!」

「とりました!」


ほぼ同時に自分のお題の紙を取ると、それを確認する。


「っ⁉︎」

「これは..」


2人とも驚いた様子をした後、何故だか急いで俺の方へ走ってくる。


「みやび!」

「みやび君!」


2人は勢いよく俺の手を取り、さっさと走る。


「みお!あんたは離れなさい!」


「はるかさんこそ離れてください!私のみやび君なんですから!」


「はぁ〜?何が私のみやびよ!この泥棒猫!」


「でも今のみやび君は私を愛してますよ?」


「う、うるさい!とにかく邪魔だから!」


2人は言い争いながらゴールを目指している。

だが、俺の中には何故か安心感が感じられていた。


「ほらみやび!早く行くよ!」

「みやび君!行きますよ!」


そうか...俺はなんだかんだ3人で暮らすことが楽しかったのかもしれない。


「ああ、行こう」


俺たちは3人一緒にゴールテープを切った。


結果は遥と美央の同率1位で終わり体育祭は無事終了した。


「そういえばお題って何だったんだ?」


俺は帰る前に2人に聞く。


「お題?私は...」

「私のお題はですね...」


「愛情だよ!!」

「愛情ですよ!!」


「...そ、そうだったのか」


2人とも被ることなんてあるのか?

もしかしたら最後は生徒受けを狙って、全員愛情だったのかもしれない。


「じゃ、じゃあまたね、みやび!」


「ああ、またな」

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