第103話 ゲーム

「みやび君!今日は休みなので沢山イチャイチャしましょうね?」


「そうだな」


「ふふ、みやび君は素直ですね!」


美央は俺を可愛がるように頭を撫でながら言う。


「...しょーがないだろ..」


「よしよし、可愛いですね〜」


美央は自分の胸に俺の顔を埋めて、ギュッと抱きしめてくる。

こうされると、美央の鼓動が俺に伝わりとても安心できる。


「みおは俺をペットかなんかだと思ってないか?」


「そんなことないですよ?でも甘えん坊のみやび君は可愛いです」


「...なんか付き合ってから立場が逆転してるな」


前までは俺が美央を甘やかすようなことをしていたが、今は完全に逆である。


「ふふ、そうですね、みやび君は私にこうやってされるのは嫌ですか?」


「嫌...じゃない」


美央のような美人の胸の中で甘やかされるのなら、嫌という人はいないだろう。


「ですよね、私もみやび君が甘えてきてくれて幸せです」


美央はそんなことを言いながら、俺を見つめてキスをしてくる。


「っ〜⁉︎」


本当に朝から甘い時間だ。




美央との朝を堪能した後、俺が朝食の食器を洗っていると


「みやび君、昼から私と何かして遊びません?」


「いいよ、でも何するんだ?」


「じゃ〜ん!このゲームです!」


それは新しく発売された、横スクロールでジャンプをして敵を踏み倒したり障害物を避けて、ゴールを目指すというゲームだった。


「...でもこれ1人用って書いてるけど?」


「えっ⁉︎ほ、ホントです...完全に見てませんでした...これじゃできません」


美央は肩を落として、トボトボとリビングに戻ろうとする。


「別に俺はいいよ、見てるだけでも楽しいし」


「で、でも...」


「いいから、みおがやってくれ」


「...わかりました!」


美央は笑顔に戻り、早速ゲームをテレビに映す。

ゲームのコントローラーを手に取り、美央がソファーに座ったので、俺も美央の隣に腰掛ける。


「あ、みやび君の膝の上に座っていいですか?」


「ん?いいよ」


美央は自分が重くないか心配しているのか、少しずつ体重を乗せてくるが、美央の体重は軽く、全く負担にならなかった。


「重くないですか?」


「ああ、大丈夫だよ」


どうしたらこんなに軽くなるのか、胸の重量込みでも軽い、実に不思議だ。


「では早速始めますね!」


美央はスタートボタンを押して、ゲームを始める。


「むぅ、ここ難しいです」


「...」


俺はさっきから同じ光景を何度も見ている。

なぜなら美央が毎回そこでやられるからだ。

美央は勉強やスポーツはできるが、ゲームはかなり下手だ。間違いない、だってここはまだ1番初めのステージなのだから。


「みやび君、何かここを超えるためのいい案はありませんか?」


「いや...案というより普通にジャンプするだけだけど..」


美央は俺に助けを求めるように聞いてくるが、その場所はただジャンプをすれば簡単に超えられる距離だ。

なのでジャンプする以外答えようがない。


「あ!超えられました!流石みやび君です!」


俺は何も言ってないが、なんとかそこを突破できたらしい。

これでやっと初めのステージをクリアできる。

ここまで約15分だ。

初めのステージに費やす時間じゃない。


「ふふ、なんだかこうしていると自然と体がポカポカしてきて、とっても幸せです」


美央は俺より少し背が低いため、見上げるように俺の顔を見ながら微笑む。


「...そうだな」


確かに幸せだ。しかし俺は最近思うが遥と別れたばかりなのに自分だけ新しく彼女を作り、イチャイチャしているなんて流石に最低すぎやしないか...

そんなことを思っていると、美央は少し俺の考えに感づいたのか


「んむっ!」


少し体を上げて、俺の唇にキスをしてくる。


「みやび君、好きって言って下さい」


「...好きだよ」


「ちゃんと目を見て!!」


「好きだよ...っ〜」


正直、前より美央への思いが大きくなっているのは確実だった。

今だってこんなにもドキドキしているのだから。


「ふふ、みやび君はもう私だけを見ていればいいんです、他の女性のことを考える必要はありません」


「...そうだな」


俺は美央の首から腕を回して、美央の体を抱きしめる。


「みやび君、好きですよ、本当にどうしようもないくらいに愛してます」


「っ⁉︎」


美央は俺の耳元でそんなことを囁いてくるので、俺は自分でもわかるくらいに顔が真っ赤になる。


「ふふ、照れてるみやび君..可愛いです」


「...最近俺のこと可愛いっていいすぎじゃないか?」


「だって可愛いんですもん!」


「あのなぁ...」


「さ!続きをやりますよ!」


美央は俺の話が長くなることを察したのか、ゲームの方へ意識を戻す。


「あ〜、次はここで詰まりました...」


また何度も同じところで奮闘している美央のことが愛おしくなり、俺は腰に手を回して抱きしめた。

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