第93話 立ち直る
「みやび君...学校は..」
「行きたくない..」
「そうですか..私から先生に伝えておきましょうか?」
「ああ、ありがとう」
「では」
「...」
俺は昨日は一睡もすることが出来ず、1人リビングのソファーでぼーっとしていた。
ずっと一緒にいようと思っていた人が急にいなくなるとダメージはかなり大きかった。
「はぁ」
ドカッ!
俺は水を飲もうと立ち上がると、ソファーの端にぶつかってしまう。
そのとき、ポケットに入れていた財布が落ちてしまう。
「あ...」
俺はその財布を見て、あることを思い出す。
それは財布の中に入れておいた遥とお揃いの縁結びのお守りだった。
早見とのことでそれはバラバラになっていたが、一応すべて拾い上げた。
(まさか遥との縁まで壊れるなんてな...)
俺はそのお守りに嫌気がさし、それをゴミ箱に投げ入れた。
「はぁ...しんどいな...」
「ただいまです...みやび君」
美央は学校に行ってから位置が変わっていない俺の様子を見て、心配そうに覗き込んでくる。
「大丈夫ですか?」
「流石にちょっとしんどいよ、まあみおが心配することじゃない、今回は俺が悪かった」
「そ、そんな!みやび君は悪くありません!私が...元々は私が悪いんですから..そんなに気に病まないでください...」
「はは、ありがとな」
俺は美央の頭を軽く撫でてやる。
「いえ...」
美央は俺の顔を見て少し悲しそうにしながら、俺の隣に座ると、
「みやび君」
美央は俺の手に自分の手を重ねる。
「どうした?」
「みやび君は悪くありません」
「それはもう聞いたよ」
「私が悪いです」
「それも聞いた」
同じことを言われても困るだけだ。
「みやび君...本当にみやび君は悪くないですよ...」
「わかったって」
「私...みやび君が悲しそうな顔をしているのを見ると..」
美央は突然その場で泣き崩れてしまった。
「みやび君...昨日から意識がないみたいです...しっかりしてくださいよ」
「でも...流石に今日は...」
「もうどうにも出来ませんよ!いつまで引きずっているのですか!もう忘れるしかないです!しっかりしてください!!!」
突然強い口調になって俺を詰める美央をみて、俺は驚いてしまう。
「...っ⁉︎み、みおに何が分かるんだよ」
しかし、勝手にどうにも出来ないとか決めつけないでほしい。
「わかりますよ...ホントに好きなら..はるかさんは自分のことを忘れてほしいと思ってますよ」
美央はそのまま続ける。
「自分の好きな人が自分のせいで束縛されているくらいなら...忘れてもらうことを望むはずですよ!!」
「...」
確かに...遥ならいいそうかもしれない...
遥が俺のことを本当に愛してくれているのは俺も理解していた。
そして、これは俺の力ではどうにも出来ないことも、頭の隅では理解していた。
「そう...かもな」
明日は学校に行こう。
俺は、どこかにチラつく遥のことを忘れようとしながら、今日は眠りについた。
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