第89話 誕生日の終わり

「...」

「...」


遥が風呂へ入った後、俺と美央の間に沈黙が流れる。


「よいしょ」


俺は何か美央と話す話題がないかと思い、美央の隣に腰掛ける。


「っ〜⁉︎」


すると、美央は先ほどまで赤かった顔を更に赤く染め、俺と距離を取る。


「み、みお?どうした?」


「い、いえ、なんでもありません...っ〜」


「...もしかして..声聞こえてた?」


俺は恐る恐る美央の顔色を伺いながら聞く。


「...はい...ちょっとだけ」


「そうか..その、ごめん」


「い、いえ、謝ることでは全然無いですが...その...」


美央は少し俺との距離を戻して、俺の目をその大きな瞳で見つめる。


「前にも言った通り...私はみやび君が好きなんです、なので...ちょっぴり嫉妬してしまいます...」


美央は言い終わる途中で、恥ずかしさから俯き、声も小さくなっていく。


「そうか」


「...はい」


俺は俯いている美央を見ていると、美央はチラッと俺の方を見て目が合う。


「はっ⁉︎す、すみません」


別にただ目が合っただけなのだが、何故か謝って来る。


「みお」


「はっ、はい!なんでしょう?」


「みおは...俺としたいと思うのか?」


「ふぇっ⁉︎」


彼女がいる身でこんな事を聞くのは最低以外の何者でもないが、少し美央の答えが気になった。

美央は俺と恋人になりたいと思っているのか、それともただ慕っているだけなのか。

おそらく前者だが、はっきりさせておきたい。

それに応えるかは別としてだが。


「ま、まぁ..私とみやび君が恋人になれば...いずれはすることになると思います..私もその...してみたいです...」


「そうか...」


「あ、あのっ...」


「上がったよ〜!」


その後は遥が風呂から上がってきた事もあり、美央が何か言おうとしたが、それで終了となった。



「みやび〜早く寝よぉ?」


「ああ、おいで」


俺は遥を自分の布団へ呼び、その小柄な体を覆い隠すように抱く。


「ふふ、みやびの匂いがする!」


「臭い?」


「ううん、すごく..安心する匂いがする」


「そうか」


「えへへ」


遥は俺に身を任せて目を瞑る。


「みやび、今日はありがとね、プレゼントとか..いろいろ」


「ああ、俺も楽しかったよ」


「えへへ、よかった」


遥は目を瞑ったまま続ける。


「みやびといるとホントに楽しい、時間が一瞬で経っちゃうよぉ、だから...いなくなっちゃやだよ..」


遥は眠りに落ちかける寸前までそんなことを言い、眠ってしまった。

俺は可愛い寝息を立てている遥の前髪を軽くかき上げて

(俺が遥のところを離れるわけないだろ...)

おでこにキスをした。

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