第88話 遥の誕生日②

昼まで俺と遥はイチャイチャし、今は3人でで遥の誕生日プレゼントを買いに来ている。


「はるか、何か欲しいものはあるか?」


「別にそんなのいいのにー」


遥はさっきからそんなのいらないと言うが、せっかく生まれてきた日なので祝ってやりたい。


「みお、女の子が贈られて喜ぶものって何がある?」


遥は遠慮して安いものしか言わないため、俺は美央に聞くことにした。


「えーっと、そうですね...鞄とかでしょうか?」


「鞄か、ちょっと見に行ってみようか」


「はいっ!」


美央は午前中のストレスを解消するかのように、俺の腕に抱きついてくる。


「ちょっ!ちょっと待ってよ!」


遥はそんな俺達の後を追って走ってくる。



「はるか、何をいいのあるか?」


「えー、どれも高いよ?」


店の中まで来たのに、遥はまだそんな事を言っている。


「値段は大丈夫だ、はるかが気に入ったものを買えばいい」


「で、でも...」


「はるか」


俺は遥の目を見つめる。


「俺ははるかのためならお金なんて気にしないから受け取ってくれ」


「う、うん...わかった、ありがと..」


遥は微かに頬を赤くしながら、頷く。


「じゃあ、これいいかな?」


その後、遥は俺の手を握って店内を回り、1つの鞄を手に取った。

それは水色がメインの肩に掛けられる鞄だった。


「わかった、じゃあレジに行こうか」


「うん、ありがとう」




こうして俺は鞄を購入した。

その間に美央は別のものを買いに行っていたようだ。


「ほら、はるか」


「ありがとう!みやび!大事にするね!」


「ああ」


遥は満面の笑みでその鞄を早速肩に掛ける。


「では、私からはこれを」


「ん?なにこれ?」


「お財布です、喜んで頂けるかなと」


「こ、これって...」


それはピンク色のいい値段がしそうな財布だった。


「わ、私が欲しかったやつじゃん、なんで?」


「前にはるかさんがご友人と話していたのを聞いてました」


なるほど、どうやら美央は遥の事をちゃんと見ていて、遥の好みのものをプレゼントしたようだ。

もしかしたら美央は意外にも遥のことを気に入っているのかもしれない。


「あ、ありがとね...」


遥は照れくさそうに目を逸らしながらもお礼を伝えた。




その後、ケーキを買って俺たちは帰宅した。


「誕生日おめでとうはるか」

「おめでとうございます!」


「ありがとう!」


遥は俺の膝の上に座りながら、とても嬉しそうにしている。


「では、早速ケーキを食べましょうか」


「ああ、そうだな」


美央は俺たちにケーキを切って配ってくれる。


「ほら、はるか」


俺はそのケーキを遥の口元へ運ぶ。


「えっ⁉︎あの..えっと、ぱくっ」


遥はいきなりのことで驚いていたが、すぐにそのケーキを食べる。


「ん~おいしー!」


「よかったな」


「んー、ほらみやびもあ〜ん!」


「ああ、あ〜ん」


俺も遥からケーキを受け取る。

ケーキは甘すぎず、程よい甘さでとても美味しい。


「ありがとう、はるか」


俺は膝の上に座っている遥の頭を撫でる。


「ふふ、みやび〜...」


遥は俺の目を見つめているが、その目はとろんとしている。


「みやび〜...いただきまーす..」


「っ⁉︎」


今度は俺の唇を味わうように、キスをしてくる。


「ふぁ〜おいひ〜、もっとぉ」


遥が唇を離すと、俺の口と遥の口につながるキラキラとした糸のようなものが引いている。

そして、遥はまた俺の唇を求めてくる。


「おい⁉︎はるか⁉︎」


遥はそのまま舌を入れてくる。

(まずい...みおが居るのにこんなこと..)

流石に美央の前であんなことは少し気が引ける。

俺はそんな事を思いながら美央の方を見ると


「っ...」


美央は悔しそうに、だがどこか気まずそうにして自分の部屋に戻っていくところだった。


「みやび...」


「は、はるか?..まだ夕方だぞ?」


美央がいないとはいえ、ここはリビングである。

こんなところでしてしまっては、事あるごとに思い出してしまいそうだ。


「知ってるよ..みやびは私とするの..嫌...?」


「うっ...」


遥はどういう仕草をすれば、俺がその気になるのかをよく理解している。

俺は上目で可愛く見てくる遥に、少しずつ断ることが出来なくなってくる。


「ねぇ...しよ?」


「せ、せめて部屋に戻ろう...」




約1時間後、俺たちがリビングに戻ると美央は部屋から出てソファーでテレビを見ていた。


「っ〜⁉︎み、みやび君っ!」


美央は俺を見ると、顔を赤らめているが、少し涙が出て声が裏返っている。


「その...お疲れ様です...」


「あ、あぁ...」


俺は美央の言った言葉の意味を理解し、少し恥ずかしくなってくる。


「お、お風呂沸いているので...入ってきますか?」


美央は遠慮するようにしながら言う。


「ああ!は、はるかから入ればいいさ」


「えー、一緒に入ろうよ!」


遥は俺の手を引いて風呂場に行こうとする。


「い、いや、今は..いいよ」


流石にお風呂で遥の姿を見ると、さっきのことがフラッシュバックしそうだ。


「えー、じゃあ入ってくるね?」


「ああ、いってらっしゃい」


そう言って遥は1人お風呂へ向かっていく。

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