2年生編

第87話 遥の誕生日①

「おはよう!みやび!」


「..んん?」


遥に起こされた俺がふと外を見ると、まだ外は薄暗い。


「起きてよ!みやび!」


「なんだよ...まだ朝早いだろ?」


「もお〜起きて!私の誕生日祝ってくれるんでしょ?」


「ああ...そうか、わかった、起きるよ」


俺はまだ眠い体を起こす。

今日は4月2日、遥の誕生日だ。




「こんな早く起こして何するんだ?」


「んー?別に〜?」


どうやら早くに起こしたのは意味は無かったらしい。


「あ!でも今日は朝からみやびに甘えたかったからいまから甘えていい?」


「ああ、いいけど」


そう言うと、遥はソファーに座っている俺の膝の上に乗り、俺と対面する形になる。

今日は遥の誕生日だ。

なので、遥のしたいと思っていることを思い切りさせてやりたい。


「みやび...」


「はるか...好きだよ」


「わ、私も!..好き...うぅ..」


遥は恥ずかしさで顔を赤らめている。

それを隠すかのように俺の胸に顔を埋め、ぐりぐりとおでこを押し付けてくる。


「可愛いよ」


そう言って、俺は遥を甘やかせてあげようと、頭を撫でる。


「あぅ...もっと撫でて?」


遥は耳まで赤くしながらも、嬉しそうに求めてくる。


「わかった」


俺は遥を撫でながら抱きしめる。

美央に向けようとしていた思い、それを消すために...遥への愛情を再確認するように俺は遥を抱きしめた。




しばらくすると美央が起きてくる。


「おはようございます!みやび君!」


「ああ、おはよう、みお」


「あ!今日ははるかさんの誕生日ですね!何かしましょうか?」


美央は遥の誕生日だと気づいた途端、そんなことを提案する。


「あ、あんたが私のために...?怪しいわね」


「はい?そんなこと無いと思いますが...」


確かに、美央にとって遥は邪魔な存在のはずだ。

なのにその遥のために何かをするというのは、少し怪しい部分があるように思えた。


「だってあんたが素直に私の言うことを聞くとは思えないし...」


「いえいえ、お誕生日くらい私も素直に祝いますよ?安心して下さい!」


「そ、そう...?なら、わかった...」


遥は少し引っかかる部分もあったようだが、納得したようだ。



「じゃあまずは...」


遥は美央にするお願いを考えながらも、俺に抱きついたり俺に甘えている。


「んーと...」


遥は俺の腹を触ったところで、腹筋が気になったのか、軽く撫でる。


「みやびの腹筋硬いね」


「まあ、今でも軽く鍛えてるしな」


「へー」


遥は俺の腹筋を押したりして、しばらくいじっている。


「み、みやび君の筋肉っ...私も触ってみたい..」


そんな遥を見て、美央はなぜか少し悔しそうにしている。


「は、はるかさん!早く私にしてほしいこと言ってくださいよ!」


美央は遥を急かすように言う。


「んー、じゃあ、私はこうやってみやびとイチャイチャしてるから、みおはゆっくりしてていいよ?」


「えっ...そ、そんな...私は触れないなんて...拷問じゃないですか!」


美央は何を言っているんだ。

一体どこに拷問の要素があったのかわからない。


「ふふ、それが私のしてほしいことだからね?」


「っ⁉︎わ、わかりました...」


美央は渋々といった様子で遥に言われた通りのことをする。

言われた事とは言っても、ただテレビでも見てただけなのだが、美央は時々こちらをチラッと見ては、苦悶の表情を浮かべていた。

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