第82話 早見との決着

俺は倉庫の扉を開き、中に入る。

中は電気がついており、倉庫の真ん中に早見が立っていた。


「ふん、逃げなかったようだな」


早見は俺の姿を確認すると、ゆっくりと俺に近づいてくる。


「さあ、どうやって決めるんだ?」


俺はあまり長話もしたくないので、早速本題に入る。


「へっ、そんなの武力行使に決まってんだろぉ?」


そう言うと、早見は俺の方へ走り出す。

いきなり殴りあいを始めるようだ。


「ぐっ...」


先に攻撃を受けたのは早見だった。

俺は向かってくる早見のパンチを避け、溝落ちに拳を入れる。

早見の動きは直線的で実に読みやすく、攻撃を避けるのは容易だった。


その後も俺は攻撃を避けてはカウンターをし、早見を殴る。


「くそっ...」


早見はもうほとんど体力が残っておらず、後数発で気絶しそうだ。

動きが鈍いパンチを俺に向かって打とうとする。


「ふん...」


俺はこの程度なら避けなくても余裕だと思い、受け止めるため、自分の手のひらを相手に向ける。

だが、その余裕が間違っていたのだ。


パチッと早見のパンチが俺の手のひらに当たった瞬間


「うぐっ...」


俺の手のひらに強烈な痛みが走る。

手から床に滴り落ちる血。

俺は思わずその場に崩れ落ちてしまう。


「くくくっ...はっはっはっはっ!」


早見は愉快そうに笑い、俺を見下ろす。


「これを見ろよ」


早見はそう言うと、先ほど俺の手のひらに当たった方の手を見せる。


「なっ⁉︎」


そこにはなんとナイフが仕込まれてあった。


「へっ、気づかないお前が悪いん...だぜ!」


「がはっ..」


そのまま早見は俺の腹を思い切り蹴り飛ばす。

俺が仰向けの状態になると、早見は手にナイフを持ち、俺へ突き立てる。


「これで決着がついたな、じゃあなぁ!..」


早見はそのまま俺の心臓あたりへ突き刺す。

俺はその瞬間死を覚悟した。


「ぐっ..?」


しかし、ナイフは俺の体に刺さることはなかった。


「な、なんだ⁉︎」


早見は俺の体に刺さらず、困惑しているようだ。

早見は俺の服を漁ると、そこには俺の財布があった。

おそらく俺の内ポケットにしまっていた財布に刺さり、俺の体には届かなかったようだ。

早見はその財布を近くに捨てると、再度ナイフを構える。


「ならもう一回だっ!」


「待て!」


早見が再び俺にナイフを刺そうとしたその瞬間、倉庫の扉から声が聞こえる。


「くそっ...」


その声の主は警察官だった。

その横には美央と遥がいる。

早見はそのまま、警察に取り押さえられる。


「み、みお...お前なら俺のことをわかってくれるだろ!俺たちは愛し合ってたもんな?」


早見は最後の望みといったように、美央に縋る。


「ごめんなさい...私..もうあなたのことは好きじゃないです...むしろ私の愛する人にこんなことする人...大嫌いです!!!」


「なっ...」


その瞬間、早見は急に大人しくなり、警察に連行されていった。

最後に見た瞳は絶望の色でいっぱいだった。



「ぐっ...」


俺の手からはかなり血が出て、少しめまいがしてくる。


「はぁはぁ...」


「みやび!大丈夫⁉︎」


「みやび君!!」


遥と美央は俺に駆け寄って心配してくれるが、俺の視界には一つのものが入ってくる。

それはさっき早見が投げた財布である。

だが、少し違和感を感じた。

その違和感とは、前に遥と買ったお守りが壊れていたのだった。


(流石に壊れてたか...)


俺はそのまま病院へ運ばれて行った。

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