第81話 早見からの果たし状

「みお、学校行けるか?」


昨夜の美央はかなり怯えていたように見える。

おそらく早見のことを思い出してしまったのだろう。


「はい...大丈夫です」




「みお、ホントに大丈夫か?」


学校が終わり、もう下校時間になったが、美央はまだ顔色が悪い。

むしろ悪化しているように見える。


「み、みやび君...これを見てください..」


美央はそう言いながら、自分のスマホを見せてくる。

そこにはとあるメールが送られてきていた。


「ん?」


「どこからか私の連絡先を手に入れたようです」


そのメールの主は早見からだった。

そこに書かれていたのはこんな内容だった。


『神楽雅に送る。午後5時までに指定の倉庫に1人でこい、そこでどちらがみおに相応しいか決める。尚逃げた場合はみおを誘拐することにする』


などという、俺の意志など無視だというような内容のメールがきていた。

まあ居場所が分かったなら少しは安心だ。

このまま警察に突き出すのもありだが、おそらく奴は反省せずまた美央に接触しにくるだろう。


「み、みやび君...」


美央は不安に満ちた目で俺を見つめる。


「行ってくるよ」


俺はそんな美央を無視して、さっさと行こうとする。


「ま、待ってよ!」


すると、話を聞いていた遥に腕を掴まれてしまう。


「だめだよ!みやびが危険な目に合うかもしれないし!」


「大丈夫だって、さ、離してくれ」


「やだ!行かないで!」


遥は意地でも離さないようだ。

だが、奴をこのまま野放しにすると、いずれ遥にも危害を加えかねない。


「はるか...」


「っ⁉︎」


俺は無理やり遥にキスを迫る。


「んっ...はぁ...」


周りが見ようと関係ない。

俺はただ、遥の唇だけを意識し、遥の暖かさ、柔らかさを感じていた。


俺は遥から力が抜けた瞬間に手を離す。


「あっ!みやび!」


再度手を伸ばそうとする遥に、あるものを見せる。


「はるか、大丈夫だよ、これさえあれば」


俺は服の内ポケットから財布を取り出し、そこに付けた遥とお揃いのお守りを見せる。


「ずっと一緒にいられるだろ?それに俺なら大丈夫だ」


すると、遥は少し考える素振りをした後、決心したような顔つきで


「...うん、信じてるから、気をつけてね」


「ああ」


俺はもう一度遥の唇を味わい、お守りを大事に内ポケットに戻して、指定された倉庫へと足を運んでいった。

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