第80話 男の正体

「わかりました...」


美央は少しずつ、ゆっくりと話を始めた。


内容を要約するとこうだ。


「あの人は以前私とお付き合いしていた男の人で、訳あって別れを切り出すとそれに逆上し、襲おうとしてきた早見孝介(はやみこうすけ)という男性です...もしかしたら刑務所から釈放されたのかもしれません、そして私を狙って...」


そういえば前に美央がそんなことを言っていた気がする。

それが俺と美央の初めての出会いだったようで、俺は記憶にあまり無いが、俺が美央を助けていたらしいのだ。

〈第7話より〉


「そうか、なんとなくわかったよ」


つまりその男が未だに美央に執着しているのだろう。


「すみません、私の不注意で...みやび君を危険な目に合わせてしまうかもしれません...」


「危険な目?」


「はい...今日私たちの前に現れた彼はまた会うと言ってました...なので近々仕掛けてくる可能性があるかと...」


なるほど、その可能性は十分にあると言えるだろう。

なにしろ奴は美央を狙って俺たちの前に姿を現したはずだ。

つまり、美央を狙ってもう一度こちらに接近してきてもおかしくは無い。


「みやび?...危険なことだけはだめだよ?」


遥は俺の手をしっかり握りながら、俺の目を見て言う。


「ああ、今のところは何もできないしな」


俺は遥を安心させるように頭を撫でる。


「ホントにだめだからね!わかった?」


「わかってるよ、ありがとな心配してくれて」


「わかってるならいいけど...」


遥はまだ心配そうな表情をしていた。

よほど俺のことを心配してくれているのだろう。


「大丈夫だって、そろそろ寝よう」


「うん...」


遥が少し心配そうにしていたが、見た感じ早見という男は体格が良いわけでもなく、そこまで力も無さそうなので暴力沙汰になる心配はないだろう。


と考えていたが、このときの俺は奴を侮っていたのかもしれない...

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