第69話 クリスマス③

「んん..」


夕方ごろ、俺は目を覚まして起き上がる。


「あ、ぐっすり寝てましたね」


美央は嬉しそうな声で俺に言う。


「ああ」


美央の膝枕は心地良すぎる。

お陰でこんなにも寝てしまった。


「ふふ、寝ている時のみやび君、すごく可愛かったです!」


美央はそう言って、ケータイに映った俺は写真を見せてくる。


「えっ⁉︎恥ずかしいだろ、消してくれよ..」


「えー、一枚だけですから!お願いしますよぉ」


俺の写真に需要があるかは知らないが、写真くらいならまあいいだろう。


「わかったよ、残しておいていいよ」


「ホントですか!ありがとうございます‼︎えへへ..これでいつでもみやび君の顔が...」


美央は嬉しそうにそれを眺める。


「あ!これ待ち受けにしていいですか?」


「え⁉︎」


美央はそのまま待ち受け画像を、俺の写真にしようとする。


「ま、待ってくれ!それは流石にやめてくれ!」


「ええー、まあいいです、わかりました」


危なかった。危うく学校中に俺の寝顔が広まるところだ。

美央は周りへの警戒心があまり無いのか、本人は気づいていないようだが、スマホをいじっている時に男子によくスマホを覗かれている。

おそらく美央のことを好きな奴が、美央がどんなものを好むのか、調べようとしているのだろう。

それなのに待ち受けが俺となると、美央のことを好きな男子全員に、どんな目に遭わされるかわかったもんじゃない。




その後は特にすることも無く、美央と喋るなどして時間を過ごし、もう寝ることにした。


「ふぁぁ..おやすみなさぁい..」


美央は眠そうに欠伸をしながら、俺におやすみを言う。


「ああ、おやすみ」


「...」


「みやび君..」


少し布団の中で目を瞑っていると、隣の布団に入っている美央が話しかけてくる。


「どうかしたか?」


「私..みやび君のことが好きです..本当に好きで好きで堪らなくて、みやび君のことを考えると..その..自然と体が火照ってしまって..その...変な気分になってしまう時もあります..」


「..そうか」


最後の方は少し変なことが聞こえたが、美央が俺のことを本当に好いてくれている。

ということは伝わった。

だが、今の俺にはそれに応えてやることはできない。


「..みお」


「あ..いえ...答えが欲しかった訳じゃ無いので...あまり深く考えないでください?ただ私の気持ちを知ってほしかっただけなので...ごめんなさい、困りますよね..急にこんなこと言われて」


暗闇で見えないが、きっと美央は申し訳なさそうにしているだろう。


「いや、大丈夫だよ、ありがとうなみお」


「...はい..おやすみなさい」


「ああ、おやすみ...」


美央が入っている布団で物音がした。

きっと美央が気まずくなり、反対側を向いたのだろう。


(はぁ..)


俺は口ではああ言ったが、内心ドキドキが止まらなかった。

なにしろ最近、美央との距離が近すぎる。

美央の胸に顔が埋まったり、膝枕をしてもらったり、これでもかと言うくらいにボディタッチが多い。

そのせいで少し意識してしまっている気がするのだ...

まあ俺には遥がいるので、美央のことが好きになる。ということは無いはずだが...

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