第66話 2人きりで過ごす人

「あ〜寒い...」


スキー合宿の後、俺たちは家に帰った。

そして今はクリスマスイブだ。


「早くケーキ買って帰ろ〜」


俺たちは明日のクリスマス用のケーキを買いに、近所のケーキ屋さんにきている。


「これとこの奥ので」


俺たちはケーキを何個か買い、家に帰ってきた。




「さぁみお、勝負しましょうか!」


家に着いた途端、遥は突然そんなことを言い出す。


「勝負?」


一体何の勝負をするのだろうか。


「いいですよ、早く始めましょうか!」


美央は何かわかっているようで、さっさと始めようとしている。


「何の勝負なんだ?」


俺は美央に問いかけてみる。


「今からみやび君とのクリスマスをかけて卓球で勝負をするんです!」


美央はやる気に満ちた表情で言う。


「そんなの3人で過ごせばいいんじゃないか?」


別にクリスマスくらい2人きりにならなくたって、3人で過ごせる。


「だめだよ!2人きりで過ごすことに意味があるんだから!」


遥はそう言って卓球台を取り出してくる。


「そんなのどこにあったんだよ」


「私の実家から貰ったものです」


美央はラケットを2つ持ってきてそう言うと、遥に1つ渡す。


「私からでいいですよね?」


「ん、了解」


すると美央は軽くサーブを打つ。


カンッ


という音が鳴り、遥のコートに入る。


カンッ


遥は美央のコートの端を上手く狙うが、美央に打ち返されてしまう。


カンッ

カンッ


2人ともかなり上手く、かなり長くラリーが続いている。


「あっ!」


1試合目を制したのは美央だった。


「ふふ、油断しましたね」


「くっ..」




「はぁ..」


休憩も含めて1時間程時間が経過した。

もう美央も遥も疲れきっていた。


「ふっ!」


「はぁっ!」


互いに球を打って得点を取っていくが、なかなか勝負が決まらない。


「はぁはぁ..」


「ふぅ..」


しかし、遥たちは決着がつくまで止めようとしない。


「ここ!」


「はっ!」


(いつまで続くんだよ...)

そして、少し俺がその勝負に飽きてきたところで


「はぁ!」


「しまっ..」


遂に1時間程にも渡る戦いに決着が付いたのであった。


「ふぅ..や、やりました!」


長い戦いを制したのは美央だった。


「そ、そんな..」


遥はその場で悔しそうに美央を睨んでいる。


「マジかよ」


正直予想外だった。

遥の運動神経はかなりいいはずだ、にも関わらず美央が勝ってしまった。


「みやび君、明日一緒に過ごしてくれませんか?」


美央は少し不安そうにしながら、俺にお願いしてくる。


「えーっと..」


俺は遥の方を見る。


「まあしょうがないか..ここで引かなかったら勝負でもなんでもないし..」


遥は悲しそうにしながらも、負けを認める。


(..まじで?)


どうやら明日は美央と二人きりらしい。

遥も認めているし、俺にはもうどうすることもできないだろう。

本音を言うと遥と過ごしたい気持ちがあったが、高校卒業までに2人のどちらかを選ぶ。ということで美央のこともしっかり見たいと思っていたので、いい機会なのかもしれない。

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