第60話 遥との料理
「みやび、塩取って!」
俺たちは料理を作るため、今キッチンにいる。
「ん?これ?」
俺は近くにあった、白い粉末が入った瓶を取る。
「違う!それは砂糖!その右のやつ!」
こんな典型的なミスをしてしまうとは..
「これか」
俺はもう一つの瓶を遥に渡す。
「ありがと...な、なんかこうしてると、私たち夫婦みたい...だね..?」
遥は自分で言ったことが恥ずかしくなってきたのか、最後の方はほとんど聞こえないくらいだ。
「...そうだな」
「っ⁉︎だ、だよね!みやびもそう思うよね!あはは」
遥は恥ずかしさで少しテンションがおかしくなっているのかもしれない。
しかし、エプロンを着て野菜を刻んでいる姿は本当に結婚したみたいだ。
(可愛いな...)
「みやび?手伝ってよ!」
「ああ、悪い」
すっかり見惚れてしまっていたようだ。
俺は遥に言われた野菜を切る。
「みやび!!それ危ないよ!」
俺が近くにあった玉ねぎを切ろうとすると、遥が俺を制止する。
「玉ねぎは滑りやすいから、こうやって切って」
遥は俺の後ろ回り、俺の腕を動かしながら教えてくれる。
「そうなのか、分かった」
「ん、怪我しないようにね」
遥は俺の腕を持ったまま玉ねぎを更に切っていく。
「..あの、はるか?もう大丈夫だけど?」
「え⁉︎あ、えぇっと..なんかこういうのいいなって思ってさ..だから..もうちょっとだけ..いいかな?」
「ああ、いいけど」
「...」
遥はそのまま切っていたが、その手が急に止まる。
「どうした?」
「すんすん..はぁ〜...」
遥は俺の服に顔を当て、まるで俺の言葉を聞いていないようだ。
「はるか?」
俺は一度包丁を置き、遥の方へ体を向ける。
「すんすん...うぇっ⁉︎みやび⁉︎あはは..えっと..続きしよっか?」
遥は分かりやすく動揺している。
「もしかして..気づいた...?」
遥は不安そうにこちらを見ながら聞く。
「匂いを嗅いでたことか?」
それ自体は構わない。
臭くないといいのだが。
「うわぁぁん、恥ずかしい!絶対嫌われたじゃん!」
遥はその場で蹲ってしまう。
「は、はるか、大丈夫だよそんな事で嫌ったりしないから」
「で、でも、匂い嗅ぐような女だよ?」
「いや..別にそれくらい何も思わないよ」
知らない人なら流石に怖いが、他でもない遥なら別に嫌ったりはしない。
「うぅ..でも恥ずかしい..」
大丈夫だと言ったのに、遥はまだ恥ずかしがっていた。
まあそんな所も可愛いのだが。
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