第54話 声の主

「あんたは..」


俺は後ろを向き、少し驚く。

そこには、生徒会長の悠先輩と副会長の咲先輩が立っていた。


「ちっ」


すると、俺を攻撃しようとした奴ら全員はすぐさま逃げていった。


「大丈夫か」


そう言って、生徒会長は俺たちに近づいてくる。


「まあ、俺は大丈夫です」


俺はそう言いながら遥の方へ向かう。


「はるか、大丈夫か?」


「みやび!!」


遥は思い切り俺に抱きついてくる。

俺はそんな遥を抱きしめ返す。


「はるか、ごめんな、怖かったな」


「別にみやびが謝ることじゃないけど、怖かったよぉ」


遥は少し震えていて涙声になっていた。

俺はそんな遥を更に強く抱きしめる。


「ごめん、宮里が遥に好意を持ってたことは薄々気付いていたのに..」


「..そんなことはいいよ..気にしてないし、でも今はキスしてほしいな」


遥は目を瞑り、キスを求めてくる。


「ああ..」


俺は遥の唇に自身の唇を近づけようとする。


「ちょっとぉ!何しようとしてんの!」


咲先輩は驚きながら、俺たちを制止する。


「みやび君、この子は?」


悠先輩はそんな俺たちを気にした様子を見せず、近くで倒れている宮里を見ながら俺に聞く。


「ああ、そいつはさっきの奴らの1人ですよ」


「そうか、ではお前たちは帰っていいぞ、僕らで話を聞くことにする」


と言われたので、俺たちはそのまま後夜祭には参加せず家に帰ることにした。

後から聞いた話だが、生徒会長達は美央が呼んでくれたらしい。

見張りが居ると言っていたが、それはただの出任せだったようだ。

しかし


(まさか宮里があそこまでやってくる奴だったとは..)


あそこで悠先輩が来てくれていなかったら、もしかしたら更に仲間を呼ばれていたかもしれない、そうなると流石に詰みだ。

俺は横にいる遥の顔を見る。

泣いていたため、目はまだ赤いが改めて見ると、本当に可愛い、宮里たちが狙うのも納得だ。


「どうかした?」


俺が遥を見つめていると、それに気づいた遥がキョトンとした顔で俺に聞く。


「...いや、なんでもないよ」


俺は遥が好きだ。

心から愛していることを再認識できたような気がする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る