第53話 宮里の裏切り

「....っはるか!」


俺は急いでトイレの前まで走る。


「いいからこっちに行くぞ!」


「や、やめて!」


すると、そこには宮里だけでなく、何人かの男子生徒が遥を囲んでいた。


「ちっ」


完全に油断していた。

遥に少なからず好意を抱いていることは、薄々感じていたが、まさかここまでするとは思っていなかった。


「おい!」


俺はその中に入り、遥を連れ出そうとするが男子生徒の1人に俺の肩が掴まれる。


「なんだよお前」


そいつは俺を睨むが、あまり怖さを感じない、おそらく喧嘩慣れしていないのだろう。


「お前らこそ誰だよ」


俺が手を振り払うと、宮里は少し警戒したのか、遥の腕を掴んで俺との距離を少し離す。


「..誰か来るかもしれないぞ?」


今は後夜祭をやっているが俺たちのように校内に残っている生徒などもいるだろう。


「へっ、ちゃんと見張りがいるんだよ」


どうやらこの事は計画されたものらしい。


「悪いな神楽」


宮里はそう言って、他の奴からバットをもらい、俺の前まで来る。

俺を痛めつける気だろうか。


「宮里..お前..」


「どうした?悔しいか?こんな可愛い子お前なんかには勿体ないからな、俺たちが貰ってやるんだよ」


宮里は平然と言って退ける。


「言っとくが教師は今いないからな、後夜祭の方に行ってるし」


宮里は勝ち誇ったような笑みを浮かべながら、俺の方を見ている。


「くくく、お前がそんな顔してるとこ初めて見たぜ、よっぽど大事なんだな」


「...ああ」


「だがもう終わりだぜ‼︎」


宮里はそのまま持っているバットを振りかざす。


「くっ..」


俺はそのバットを手で受け止めるが、陸上部で鍛えているのか、宮里の力はかなり強く、手に痛みが走る。


「おいおい、頭にでも当たったら大怪我だぞ?」


「知るかよっ!」


俺は宮里にやめるよう促すが、聞く耳を持っていないようだ。


「...そうか」


どうやら話をしても意味が無いようだ。


「ぐぅっ⁉︎」


宮里が再度バットを振った瞬間、俺は宮里の溝落ちに拳を打ち込むと、宮里はその場で倒れる。


「はるか」


「おい、待てよ」


俺がそいつらに近付こうとすると、何人かがまた、俺の前まで来る。


「..邪魔だよ」


「おっと、待てって言ったろ?」


俺はそいつらを無視し、遥の腕を掴もうとするが、遥の周りにいた残りの5人が俺の方へ寄ってきて、一斉に掛かってくる。

その手にはハンマーなどの凶器が握られており、全て受け止められる自信はない。


「..くっ」


「そこまでだ!!」


俺が攻撃を受ける体制に入ると、突然、後ろから聞き覚えのある声が聞こえる。

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