第52話 学校祭 午後

学校祭の午後は他の出し物を見て回り、無事終了した。

午前と変わった事と言えば、俺たち3人の中に宮里が加わった所だ。


「なあ、あそこよるか?」


しかし、俺が3人に何か聞いても


「お!いいじゃん!な?2人とも!」


と、宮里は乗り気だが


「う、うん..いいと思う..」


「はい..」


遥と美央は宮里を警戒しているのか、さっきまでのテンションとはかなり違う。

(そこまで危険な奴だとは思えないんだが..)

なんだか宮里が可哀想に思えてくる。

二人は何かを感じ取っているのだろうか。


こんな感じで午後は過ごし、今から生徒だけの後夜祭、というものがあるらしい。


「もう始まってるみたいだな」


校庭を見ると、もう既にフォークダンスが始まっている。

俺がそんな様子を眺めていると


「みやび、ちょっとトイレに行ってくるから待っててね」


遥はそう言ってトイレの方へ走っていく。


「あ、俺も行ってくるわ」


遥が見えなくなったところで、宮里もトイレに向かっていった。


「みやび君!2人で先に行きませんか?」


2人がトイレに行ったところで美央がそんな事を提案してくる。

おそらく、そこで俺と一緒にフォークダンスを踊るつもりなのだろう。


「ええ..」


俺としては、フォークダンスで踊るなら遥とがいい。


「お願いします!」


美央はそう言って頭を下げる。


「で、でもなぁ...」


「だめ..ですか?」


「うっ..」


美央は目を潤ませ、悲しそうな表情で俺を見つめてくる。


「だ、だめだよ..」


俺は美央から視線を逸らしながら言う。


「はぁ...そうですか..では行ってあげて下さい..」


美央のその悲しそうな声に思わず申し訳なる。


「わ、悪い..」


俺は美央に謝り、再び校庭を眺めていると


「あの..なにをしているのですか?」


美央は驚いたように言う。


「ん?なにって?」


「いえ..はるかさんのところに行くのかなと思いまして..」


「流石にトイレの中には行かないよ」


俺も男だが紳士である。

女性のトイレを覗きに行ったりはしない。


「みやび君?気づいてないんですか?」


「?」


俺には美央の言っている事が理解できない。


「宮里くん、おそらくはるかさんに好意を持っていますよ」


「それは薄々気付いていたよ」


「それと、はるかさんと宮里くん、帰りが遅くありませんか?」


俺は美央にそう言われてハッとする。

(たしかにトイレに行ったにしては遅すぎる)

しかもそれは1人じゃなく2人なのだ。


「...まさか」


俺は最悪の事態を想像してしまう。

そして、俺は全力でトイレの方へ走っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る