第43話 生徒会長の話

「さて、少し話があるのだが..」

悠先輩は口を開き言う。


「なんですか?」


俺は悠先輩に聞く。


「率直に言わせてもらう、神楽、生徒会に入らないか?」


ん?俺?


「な、なんで俺?」


「ふっ、僕は君に生徒会に入る素質があると思っている」


(ま、まさか..俺の隠された才能が見抜かれたのか..⁉︎)

まあ、俺に隠された才能などないのだが...何故、悠先輩は俺に入る素質があると思ったのだろうか。


「俺にそんな素質ありませんよ」


俺は悠先輩の言ったことを否定する。


「ふっ、入るつもりはないのか」


「まあ、そうですね」


今は遥たちのこともあるため、生徒会に入るつもりはない。

(生徒会の仕事などで、遥との時間が奪われるのは惜しいからな)


「そうか、今はまだいいさ、さあ食べようか」


と言って、悠先輩は自分のご飯を食べ始める。


そこから、悠先輩は特にしつこく言うわけでもなく、他愛のない話をしながら、ただご飯を食べていただけだった。


「はーちょっと緊張しちゃったね」


生徒会室から出て、俺たちは午後の競技に臨むところだ。


「そうだな」




午後は遥の出る二人三脚では、見事1位を取り、今うちのクラスは学年で1位、という結果になっている。

学年混合リレーは順位には関係しない為、うちのクラスが1位で確定している。


「よし、行くか」


俺はコースの近くの待機場まで来て、俺の番が回ってくるのを待つ。

多少順番を入れ替えた学年もあるが、戦況は練習とほとんど一緒だ。

このまま行くと、2位で俺にバトンが回ってくるだろう。

しかし


「「「おぉー‼︎」」」


いきなり観客席から歓声があがる。

なんと、前にいた3年と1年が一気に追い抜かれ、さっきまでビリだったはずの2年が、1位に躍り出たのだった。

(これは予想外だ...)

もしかしたら、練習の時はあえて遅い選手を出し、切り札を本番までとっておいたのかもしれない。

そのまま、2年が1位という状況でいよいよアンカーに回ろうとする。

俺もコースに並ばないといけないので、立ち上がる。


「勝負だね、みやび君」


先に並んでいた咲先輩が俺に軽く声をかけてくる。


「もしかしたら勝つのは2年生かも知れませんよ」


「ふふ、そうかもね、でも負ける気はしないなぁ」


咲先輩はそう言って笑う。

咲先輩は午前の競技では、その長い金髪を下ろしていたのに、今ではまとめられておりポニーテールとなっている。

俺たちが話しているうちに、2年がバトンを受け取り走って行く。


「楽しみだなぁ、君との勝負」


「どうして俺と戦いたいんですか?」


俺は少し気になっていたことを聞く。


「スポーツをする人は、強い人を求めるものだよ」


咲先輩はバトンを受け取り、去り際にそう言った。

俺もその数秒遅れでバトンを受け取る。

(強い人..か)

俺は足に思い切り力を込め、地面を思い切り蹴った。

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