第41話 新たな相手

視線が一気に俺に集中する。

このクラスに陸上部クラスの速さは俺と遥しかいない、おそらく俺が男、ということで反射的に俺の方を向いたのだろう。

俺は助けを求め、遥の方を見る。

すると、遥はやっちゃいなよ!と言うふうにガッズポーズをしながらこちらを見てくる。


「はぁ...」


今、本番で出る予定の競技だけでは、雅は大した疲れを覚えていない。

正直、今の競技だけでは雅も物足りなかった部分がある。

それに、見たところ3年の生徒は勝てない相手、というわけではないように思った。

なので


「..俺がやります」


俺はそう言って、手をあげる。


「お、神楽じゃないか!たのんだぞ!」


先生はそう言って、ホームルームを終わらせ、さっさと帰る。

というわけで、雅は学年混合リレーにも出ることになったわけだが、出るからには絶対勝ちたい、と思いみやびは気合を入れるのであった。





「みやび!頑張ってね!」


帰り道、遥は笑顔でそう言う。


「やれるだけやってみるよ」


「うん!みやびなら何があっても絶対に勝てるよ!」


そこまで信頼されると、逆にプレッシャーになってしまう。

そんな俺を察してか美央が


「そんなに心配そうな顔しなくていいですよ、肩の力を抜いてください」


美央が優しい声で言い、自然な流れで俺の腕に自身の腕を絡ませる。


「み、みお!みやびに優しい声かけないで!」


遥はそう言って、俺の腕をがっしりと掴み、何があっても離すまい、と言った様子だ。


「ふふ」


美央は不敵に笑うと、更に俺と密着する。


「うわっ⁉︎」


すると、美央のその豊かな胸が俺の腕に押し付けられ、俺は思わず声をあげてしまう。

この手のことは何度もされているが、未だに慣れない。


「ふふ、みやび君は何度しても反応が可愛いですね..」


美央は可笑しそうに笑う。

そのいたずらに成功した子供のような、美央の様子に、不覚にも雅は少しどきっとしてしまったのであった。


「み〜や〜び〜」


そんな俺を見て、遥は頬を膨らませる。


「わ、悪い..」


「もぉ〜みやびはぁ〜」


遥は怒っているように見えるが、どこか嬉しそうに見えた。

おそらく、俺とすることをして、勝ち誇っているのだろう。





『これより、体育祭を始めます!』

翌日、俺たちは体育祭本番の開会式が終わる。

そして、自分の席に着くと、俺はある人物に呼ばれる。


「ちょいちょい、こっちこっち!」


そこには、長い金髪にピアスをあけ、腕組みしている女子生徒がいた。


「咲先輩?」


彼女は松川咲、高校3年で生徒会副会長もしている。


「覚えててくれたんだ!」


咲先輩は嬉しそうに言う。


「どうかしましたか?」


俺は咲先輩に用件を尋ねる。


「君、学年混合リレーに出るんだってね!」


咲先輩はどこで知ったのか、そんなことを言ってくる。


「まぁ...」


「やっぱり!それで私も出ることにしたんだ!」


咲先輩は軽くウインクをしながら言う。


「え⁉︎そうなんですか..」


「ん?なんか嫌そうだなぁ..」


咲先輩は口先を尖らせながら、拗ねたように言う。


「い、いえ、別に嫌とかでは..」


(参ったな...)

咲先輩は聞いたところ、陸上部のキャプテンらしく、俺のようなどこにも所属していない生徒が勝てる相手ではない。

クラスのみんなが少なからず俺に期待してくれている。ということで雅は1年に勝利させたかったのだが、どうも簡単にはいかないらしい。


「ま、そういうことだから、楽しみだね!」


と言って、咲先輩は走って戻っていく。


「は、はい...」

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