第39話 体育祭練習

『これより、体育祭を始めます!』


という放送が流れ、体育祭の練習が始まる。


「頑張りましょうね、みやび君!」


美央は手でガッツポーズを作りながら言う。


「おう、そうだな」


俺たちは今から、体育祭の予行練習をする。

体育祭は1年から3年の混合で行うようだ。


「お!初めはみやびがでるのか!」


そう言って、話しかけてきたのは、俺の中学からの友達、氷川誠司が立っていた。


「ああ、行ってくるよ」


「がんばれよ!」


「ああ」


俺は誠司と別れ、言われた場所へ行く。


「きみはここだね」


先輩に配置を教えられ、俺はその位置につく。


「みやびー頑張ってねー!」


遥が応援してくれる。

俺は遥に向かって、軽く手をあげる。

そして俺の番が回ってきたので、スタート地点に立つ。

周りを見ると、明らかに走る事が苦手そうな人ばかりだった。

俺たちの学校は全4クラスあるが、その全員が走る事を得意としていないようだった。


「よーい、ドン!!!」


と言われ、スターターピストルの引き金が引かれる。

俺はそれと同時に、走っていく。

結果は予想通り、俺は軽く走っただけでも1位を取る事ができた。




「お疲れ、みやび」


席に戻ると、遥が水を渡してくれる。


「ああ」


俺は水を受け取り、少し飲む。


俺の次の競技は午後からなので、のんびり他の競技を眺めることにする。




「みやび!お昼行こ!」


午前の競技が終わり、お昼休みとなった。

遥が誘ってくれたので、一緒に食べることにした。


「おう、行こうか」




俺たちは適当にご飯を食べ、午後の競技に臨む。

午後の俺の競技は200メートルリレーだ。


『次は200メートルリレーです』


と言うアナウンスが流れ、俺たちはコース前まで出て行く。

俺の順番は8人中6番目なので、初めの方は戦況を見守る。

1番走者は惜しくも2位で、バトンを次に渡した。

差はそこまで開いていないため、抜けると思われたが、他のチームの走者が意外にも速かったため、3位という結果で次に回る。

3走者目、4走者目は接戦だったが、最下位に落ちてしまう。


「そろそろか...」


俺はコースに並ぶ。


「よぉ、久しぶりじゃねえか」


コースに並ぶと、横から聞いたことがある声が聞こえる。

横を見るとそこには、金髪に不敵な笑みを浮かべた男子生徒、平塚恭弥がいた。


「お前も一緒だったんだな」


どうやら俺は平塚と競争するらしい。


「くくく、お前とか..おもしろくなりそうだ」


平塚はそう言って、バトンを受け取り、思い切り走りだす。

俺もタッチの差でバトンを受け取り、走る。

俺は地面をしっかりと蹴り、平塚を捉える。


「ちっ、もう追いついてきたのかよ」


平塚は少しスピードを上げるが、おそらくそれが限界なのだろう。平塚のスピードはそれ以上上がらない。


「残念だったな」


俺は更にスピードを上げ、平塚を追い越す。

その後は前の1人を抜かして、2位の状況でバトンを次に渡した。

最終結果は2位ということになってしまったが、悪くはないだろう。




「お疲れ様です、みやび君」


試合が終わり、美央が近づいてくる。


「ああ、お疲れ」


「走ったらとっても暑いですね」


と言って、美央は服をパタパタとして仰ぐ。

美央はかなり汗をかいており、男子の目線が一気に集中している。


「お、おいみお!」


「ふふ、どうかしましたか?みやび君」


美央が服で仰ぐたびに、胸の谷間が見え、そこに流れた汗が雅の興奮を引き立てた。


「ふふ、もっと見たい...ですか...?」


美央は更に俺に近づき、俺を誘惑してくる。


「っ⁉︎」


「ほらほら..いいんですよ?みやび君になら...」


美央は少し頬を赤らめて、肌の見える面積を広げていく。


「みやび君...」


周りからは、舌打ちや恨みのこもった声が聞こえる。

そんなことも気にせず、美央は俺の顔を手で包み、自分の顔に近づける。


「み、みお⁉︎」


俺は慌てて美央を制止しようとするが、美央は止まる気配を見せない。


(だ、だめだ、このままじゃ...)


『選手の方は待機場に戻ってください』


「わ、悪い、戻らないと!」


アナウンスが流れた途端、俺は美央から離れ、急いで席に戻った。

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