第35話 遥との初バイト

「こ、こんにちは...」

俺たちは無事バイトに採用され、バイト先のファミレスまで来ていた。

俺たちは今までバイトをしたことがなかったので、これが初めてのバイトになる。

「あ!こんにちは!」

店の中に入ると、1人の店員さんが迎えてくれる。

「こんにちは!司さん!」

遥は元気よく挨拶をする。

(ん?司さん?)

「はるか、この人と知り合いなのか?」

俺は小声で遥に聞く。

目の前の女性は、どう見ても大学生くらいに見える。

「うん、お姉ちゃんの友達だよ」

「そうなのか」

どうやら春菜の知り合いらしい。

類は友を呼ぶのか、司と呼ばれた女性も春菜同様、とても綺麗な人だ。

「やあ、はるかちゃん..と..」

すると俺たちの目の前まできて、司は挨拶をしてくる。

「あ!こっちはみやびです!」

遥が俺の代わりに答えてくれる。

「そうそう!みやび君だね!じゃあ色々説明するから、こっちに来て!」

と言って、俺たちは案内された場所に向かう。

「まずは自己紹介だね、私は奈良坂司(ならさかつかさ)よろしく!」

と言って、司は自己紹介をする。

「ども..神楽雅です..」

「氷室遥です!」

俺たちは自己紹介を終え、仕事内容を教えてもらう。

「君たちにはホールについてもらうから、簡単な説明だけするね」

と言って、仕事内容が説明される。

簡単にまとめると料理をテーブルに運んだり、料理の片付け、レジ打ち、などの接客業だ。

「あ!早速開店するからやってみてね!」

と言って、司さんは俺たちから少し離れる。

すると、ガチャという音と共に、お客様が入ってくる。

ふと、司さんを見るとテーブルに連れて行け、というジェスチャーをしてくる。

「何名様ですか?」

すると、遥がお客様に近づき、そんな事を聞く。

「2人です」

と、そのお客様は答え、遥はそのままテーブルに案内して行った。

「やった、できたよ」

遥は初めての接客を完了し、とても嬉しそうだ。

「やったじゃん!はるかちゃん!」

「はい!」

俺が黙ってその様子を見ていると

「はい、次はみやび君だよ!」

と、司さんは入り口を見て言う。

俺も見ると、そこには数人のお客様が待っていた。

(よし、行ってみるか!)

俺は覚悟を決め、お客様に近づいて行く。

「何名様でしょうか?」

俺が聞くと

「4人で」

と言われ、俺は4人席に案内する。

「こちらにどうぞ」

と言って、俺はその場を離れる。

「ふぅ..」

初めての接客というのは、確かに達成感があるものだった。

「いけたじゃん!みやび!」

遥は嬉しそうに言ってくれる。

「ああ、なんとか」

俺たちが初接客で喜んでいると

「ちょいちょい、まだ始まったばっかだからね?」

と言って、外を指差す。

「「ええ⁉︎」」

そこにはかなりの人だかりが出来ていた。

(この人達全員⁉︎)

俺は少し気を引き締めて、入り口へと向かうのであった。


接客をしていくうちに、俺たちもだんだん慣れていき、基本的なことは大体出来るようになった。

「いらっしゃいませー」

俺はお客様を席に案内する。

ふと、前を見ると、遥が俺の方を見ていた。

「あっ⁉︎」

遥は俺と目が合うと、顔を赤くし、急いで視線を逸らす、しかし少し経つとまた俺の方を向き、ぎこちない笑みで微笑んでくる。

俺はそんな様子の遥に近づいていく。

遥は少し焦った様子を見せるが、すぐに観念したかのように遥も少しこちらへくる。

「どうかしたか?」

俺が遥に聞くと

「い、いや⁉︎えっと...今のはただ..仕事中にみやびを見てただけというか...はぁ〜..恥ずかしぃ...」

遥は顔を真っ赤にしながら、少し俯く。

恥ずかしがっている遥は、本当に可愛かった。

「可愛いよ」

俺は思わず伝えたくなったので、声に出して言う。

「んぇ⁉︎ちょ..恥ずかしいよ...」

すると遥の顔が更に顔を赤く染める。

「ん、んん!ちょっと2人とも!仕事中になにしてんの!」

司さんは大きく咳払いをし、俺たちの間に入ってくる。

「...ぁ..すみませ..」

遥は小さな声で謝る。

恥ずかしがっているのを、他人に見られ、戸惑っているようだ。

「全く、仕事中なのにいちゃつかないでほしいなー」

司さんは少し呆れたように言う。

「ごめんなさい...」

俺も恥ずかしさで、顔を逸らしながら謝る。

「ほんとやめてよね、見てるこっちが恥ずかしいんだから!」

「は、はい...」


「はぁぁ..結構疲れるね」

ようやくバイトも終わり、俺たちは帰路に着いている。

「ねぇみやび、手、繋ごっか」

遥が手を差し出してくる。

「ん、繋ごうか」

そして、俺たちはお互いの手を絡ませる。

いわゆる恋人繋ぎというやつだ。

「えへへ」

遥は照れ笑いをしながら、俺の腕にくっついてくる。

俺たちは2人の呼吸音が聞こえるほど、距離が近くなる。

遥の方を見ると、少し顔を赤くしながら、何か言いたそうな顔で、俺を見つめている。

「どっか寄り道でもするか?」

俺がそう提案すると

「うん!」

遥は待っていました、と言わんばかりに素早く反応する。

「どこ行くんだ?」

「んーとね、こっちこっち!」

と言って、俺は遥に引っ張られるまま、その場所へと向かったのであった。

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