第32話 美央とのホテル

「よし、みやび君、みお今からホテル予約したからそこに泊まって行きなさい」

「えぇ⁉︎な、何やってるんですか⁉︎」

俺はびっくりして大声をあげる。

「いいだろう別に、お金は僕が出すから」

「そ、そう言う問題じゃ..」

「もう予約は取ってるから今更無理だよ、じゃあ僕は仕事があるから、後でみおにホテルの場所送っておくよ、後この話に乗らなかったらきみのお父さんとの契約は切っておくよ」

聡はさらっととんでもない事を口走り、車に乗り、さっさと行ってしまった。

(なんでこうなった...)

「ど、どうしますか?」

美央は少し期待のこもった目で見てくる。

「ど、どうって...」

遥に心配するな、と言っておいて美央とホテルに行く、というのは流石におかしい。

しかし、もし本当に契約を切られてしまうと、父さんにまで迷惑をかけてしまう。

「お願いします」

美央は甘い声を出しながら言ってくる。

「えぇ..」




「はぁ〜、結局来てしまった...」

時刻は午後10時過ぎ

俺は押しに負け、結局ホテルに来てしまい、今は遥への罪悪感でいっぱいだった。

とりあえず俺は、遥に電話をかける。

〜♪

遥はワンコールで電話にでた。

『みやび?なんかあったの?』

遥は嬉しそうに電話に出る。

「ああじつは..」

俺は今までの事を話す。

『信じてたのにぃ...』

遥はすっかり拗ねてしまった。

「ご、ごめんな」

俺は精一杯謝る。

『やだ、早く帰ってきてよ』

「そう言うわけにもいかなくなったんだよ..」

『えぇ〜、あの時、みやびが私に告白してきてくれて..私、ホントに嬉しかったのに...』

遥が泣きそうな声で言ってくる。

「ホントに悪かった」

『絶対埋め合わせしてよ』

「ああ、わかってるよ、なんならホテルでも行くか?」

俺は明らかに、今言うべきではない事を口にする。

『っ⁉︎..みやびのバカ...』

遥は若干、照れた様な声で言う。

『まぁ早く帰ってきてよホントに、待ってるからさ!』

「...うん、じゃあ..」

「うん...また明日ね」

そう言って、俺たちは通話を終わる。

最後の遥の悲しそうな声に、さらに罪悪感が増してしまう。

(遥って昔から甘すぎるところがあるよな...)

もちろん俺が悪いのだが、ここまで甘いと少し心配になってしまう。

「はぁ」

俺は思わずため息を吐いてしまう。

冷静になって考えてみると、彼女がいるのに許嫁、と言う事でホテルに行くと言う行動がどれだけ最低か理解し始める。

「はぁぁ...」

俺がさらに深くため息をついていると

「みやび君、お風呂先に入ってきてはどうですか?」

美央が俺に、お風呂に入るよう勧めてくる。

「あ、ああ、じゃあ先にもらうよ」

そう言って俺は風呂場に入っていった。



みやび君がお風呂に入っている間、私はベッドの上に腰を下ろし、少し目を閉じます。

今回の食事はある程度、計算したものでした。

美央の本当の狙いとは聡は思い立つとすぐに実行するという人間なので、雅と美央がまだ経験していないとなると、すぐに2人きりにしてもらえると思い、今回の話を持ちかけたのだった。

まぁ流石にホテルに行くことになるとは思っていなかったようだが...

なぜ、私がここまでみやび君のことを想っているかと言うと、私はみやび君には中学生の時、守ってもらった時に惚れた、と言いましたが、実はそれは嘘でした。

あの時には既に、私はみやび君の事を好きになっていました。

私がみやび君と初めて会ったのは...そう、小学生の頃です。

あの時の私は全く目立たずに、休み時間も1人で過ごす時間の方が多いくらいでした。

そんな時

「おーい、白雪さん!何読んでんの?」

突然本を読んでいた私に、みやび君が声をかけてくれました。

「えっと..」

困惑している私にみやび君は

「あ!それ俺も読んだことあるよ!面白いよね」

そこから、その休み時間はみやび君とお喋りをして、本当に楽しかった事を今でも覚えています。

それからはあまり、みやび君と喋ったりはしませんでしたが、あの時の事が本当に嬉しく、その時に好きになりました。

人によっては、なんだそんなことか、と思うかも知れませんが、私にとってはすごく大きな事だったのです...

あの時の1人の私に、気さくに話しかけてくれた1人の少年に、私は恋をしてしまいました。

その後はみやび君に振り向いてもらおうと、たくさん努力もしました。

しかし、中学にあがるとみやび君と離れてしまったのが残念で仕方ありません。

ですが、私は絶対にみやび君と結ばれてみせます...

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