第31話 美央の父との食事

時は少し戻り、みやび君とはるかさんが2人で温泉旅行に行っていたとき、私、白雪美央は1人である場所に向かっていた。

「お久しぶりです、お父様」

「おお、久しぶりだな、みお」

そう、ここは美央の父親の職場である。

「今日はどうしたんだ?こんな所まで訪ねてきて」

「はい、今日は少しお願いがありまして」

美央は少し改まった様子で言う。

「あの、みやび君を含めて3人で食事に行きませんか?」

「ほう、どうしてだ?」

美央の父親は疑問に思い、美央に聞く。

「お父様にもみやび君に会ってもらいたいので!」

美央は笑顔で言う。

美央の父親は少し考える素振りをした後

「わかった、どんな子なのかも見たいし、もうすぐ夏休みだろう?その時にでも行こうか」

と、美央の提案を了承する。

「はい!お願いします!」

しかし、美央の本当の狙いは他にあったのであった...


夏休みも後半分もない、というところで美央からあるお願いをされた。

「みやび君!」

美央が少し緊張した様子で俺を呼ぶ。

「どうした?」

「あの、父からお食事に誘われたんですが、みやび君にも来てほしい、とのことなのですが...」

「なるほどな」

おそらく、美央の父親は俺と美央が普通に付き合ってると、思っているのだろう。

「うーん..そうだなぁ」

「だめ...ですか?」

美央は少し目を潤ませながら、そう言ってくる。

「わ...わかったよ」

俺は美央の提案を了承する。



「ほ、本気?それ」

その日の夜、美央からの提案を遥に伝えると、驚きの声をあげる。

「あ、ああ、行かなかったら怪しまれるかもしれないし...」

もし、俺がその場に行かなかったら、本当に付き合ってるのか、という事が疑われるかも知れない。

まあ実際には付き合ってないのだが。

「で、でも...」

遥は寂しそうな目をしながら、こっちを見てくる。

「そんな顔するなよ、別に浮気とかしないからさ」

「う、うん..それは..わかってるつもりだけど...その、心配で..」

遥は顔に不安を浮かべ、行かないで、というふうに俺の服の裾を掴む。

「大丈夫だって、な?」

「うん...」

それでもまだ、遥には不安が残っている様だ。

「はるか、こっち向いて」

俺は遥の顎を掴み、俺と目を合わせる。

「み、みや..び?」

「ん..」

俺はそのまま、遥の唇に自分の唇を重ね、そのまま遥を抱き締める。

「はぅ..み...やびぃ...」

「信じてくれるか?」

遥はとろんとした目で俺を見る。

「うん..待ってるね...」

「ああ」


翌日、俺と美央は、電車に乗り、美央の父親に招待された場所まで着いた。

「た、高いな...」

目の前には、最上階を見上げると、首が痛くなるほどに高い建物が建っている。

「では、行きましょうか」

と言って、美央は俺の手を掴む。

「あ、ああ」

俺は若干驚きはしたが、直ぐに恋人のフリ、という事を思い出す。

そして、俺たちは中のエレベーターに乗り、招待されたレストランの中に入る。

「あそこです」

美央が指差した所を見ると

「あの人が?」

そこには無精髭が生えており、目つきは鋭く、シワが無数にある。

といった、いかつい感じのおじ様が座っていた。

「はい、あれが私の父です」

俺たちはその人に近づく。

「まっていたぞ、みお」

その人は俺たちに気付き、声を掛けてくる。

「おはようございます、お父様!」

「ああ、そっちは..」

と言って、美央の父親は俺を見てくる。

「どうも、父からご紹介頂いた神楽雅です」

「ああ、君が..顔を合わせるのは初めてだね、僕は白雪聡(しらゆきさとし)、よろしく」

それから一通り挨拶を終え、俺たちは食事の席に着く。

「ところでみやび君、どうだね?うちのみおは?」

食事をしていると、聡がそんな事を聞いてくる。

「どういう意味ですか?」

俺は何が聞きたかったのか、わからず聞き直す。

「ほら、みおを気に入ってくれたかい?」

「え?ええ..まあ、いい子だとは思います」

俺がそんな事を言うと

「ははは、そうだろう、そうだろう、昔から厳しく育ててきたからねぇ」

聡は誇らしそうに言う。

「ところで...」

聡は少し周りを見渡しながら言う。

「なんですか?」

「体の方はどうだい?小さい頃からしっかり育ててきたから、見てくれは悪くないはずだよ」

「なっ⁉︎」

「お、お父様...」

聡は突然、父親として最低の事を口にする。

「そ、そんなの..わかりませんよ...」

俺は少し焦りながら、隣の美央を見ると、顔を真っ赤にしながら、恥ずかしさを必死に堪えて、震えている姿が見えた。

(みおの...か、体..)

俺は思わず美央の体を凝視してしまう。

「み、みやび君...恥ずかしいです...」

すると、俺の視線に気づいた美央は、目を逸らしながらそう言う。

「わ、悪い..」

そんな様子を見た聡は

「もしやまだなのかな?それは失礼、わっはっは!」

と、笑いながら言ってくる。

(この人はいつもこんな感じなのか?)


「はぁ..お腹いっぱいだなぁ...」

食事も終わり、俺たちはレストランから出る。

「ご馳走様です」

俺は聡にご飯のお礼を言う。

「ああ、別に構わないよ」

「ありがとうございます」

俺がお礼を言うと

「にしてもみおとはまだなのか...」

聡はそう呟いて、どこかに電話をし始めた。

「み、みやび君、父が失礼な事を聞いてしまって...その..すいません..」

美央はまだ少し恥ずかしそうに言う。

「あ、ああ、俺は気にしてないよ」

俺たちが話していると、聡の電話が終わる。

「よし、みやび君、みお今からホテル予約したからそこに泊まって行きなさい」

と、聡は言う。

「えぇ⁉︎な、何やってるんですか⁉︎」

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