第23話 林間学校終了

「はぁ...」

寮の中、誰もいない廊下で俺は一人ため息を吐く。

昨日、美央を暗い森の中に一人置き去りにし、俺は1人で寮へ戻ってしまった。

俺はふと、窓に映っている自分の顔を見る。

「はぁ...何やってんだろ..」


「ふふふっ...」

朝、洗面所に立ち、顔を洗っていると思わず笑みが浮かんでしまいます。

すると、後ろから声がかかります。

「おはよ、みおちゃん!なんか良いことあった?」

そこには、高城さんがいました。

「ふふっとっても上手くいきました!」

「本当?根回しした甲斐があったね!」

私たちはそう言って、顔を見合わせて笑います。


ーーー遡ること、林間学校2日目の夜のこと

私は高城さんにとある相談をしていました。

「あの..高城さん..」

「ん?なぁに?」

高城さんの赤い瞳がこちらを向く。

「私..どうすれば良いんでしょうか?..」

「ん?なにが?」

「その..みやび君のことで」

「なんかあった?」

「いえ...ただ、みやび君とこの林間学校中に2人きりになりたいんです...」

「うーん、なるほどねえ...」

茜はしばらく考える素振りをする。

「あ!それだったら1つ考えがあるよ!」

「考え?」

どうやら、何か考えてくれたみたいです。

「うん!4日目の夜に肝試しをやることになってるんだけど、その時に神楽と組ませてあげるよ!」

と、言う。

「肝試し、ですか..でもどうやって?」

「どうせ、はるかちゃんとの取り合いになるでしょ?だからそれをくじ引きで決めて当たりのやつだけ、みおちゃんに教えてあげるよ!」

「なるほど!ありがとうございます!」

「いいよ!」

と言って、高城さんは笑う。


と、こんな感じで高城さんとやり取りをして、絶対にみやび君と2人きりになる様な状況にしたのです。

そして、肝試しが終わった後、私は強引にみやび君に迫り、そのままキスをしました。

しかも濃厚なのを...

みやび君は走って行ってしまいましたが、それはおそらく、私を意識してくれたのでしょう...


「おはよう、はるか」

俺は集合場所に行き、遥を見つける。

「あ!みやび!」

遥は嬉しそうに駆け寄ってくる。

「よう」

「み、みやび...昨日..なにもないよね..」

遥は心配そうに俺を見てくる。

「えっと...」

俺は返答に困る。

(俺が美央とキスしたなんて聞いたら、はるかはどう思うか...)

「おはようございます!みやび君!」

俺が困っていると、美央が来る。

「あ、ああ、みお、おはよう!」

「ふふっ、昨日は楽しかったですね...」

美央は遥の方を少し見ると、そう言って体を寄せてくる。

「な、何言ってんの...え?...みやび..?」

遥は不安でいっぱいな表情で、俺を見てくる。

「ふふっ、私は昨日みやび君とキスをしたんですよ、それも濃厚な」

美央は片目を閉じ、指を口に当てて言う。

「そ、そんな...みやびぃ...」

遥の目に涙が溜まる。

「ご、ごめん...」

俺は誤魔化せないと思い、素直に謝る。

「ひどいよぉ...」

「ほ、ほんとに悪かった!」

俺は頭を下げる。

「..ぐすっ..もぉ..みやびぃ..」

「ご、ごめんな..ほんとに..」


雅が私、に頭を下げて謝ってくる。

その顔は非常に申し訳無さそうだ。

あぁ..そんな顔しないで..私はあなたの笑ってる顔が好きなんだから..

...でも、これは許せないかな..

私はチラッと美央を見る。


しばらくすると新幹線が到着し、俺たちはそれに乗る。

席は、誠司が遥と場所を代わり、俺の隣に座ることになった。

「ほんとにごめんな..」

俺は改めて謝る。

「もう良いってば、どうせみおがなんかしたんでしょ?」

そう言って、遥は俺の方へ頭を預ける。

「許してくれるのか?」

「うん!いいよ」

「あんなことしたのに?」

「うん!ただ..」

「ちゅ..」

遥は俺の唇に自分の唇を重ねる。

「えへへ..」

遥は恥ずかしそうに笑う。

「はるかっ!」

俺は思わず、遥を強く抱きしめる。

「ごめんな..はるか..」

「もういいってばぁ..そのかわり私のこと大事にしてよ?」

「うん...」

(そうだ...俺にはこんなに思ってくれている彼女がいる..だから俺が美央に惚れるなどないはずだ...)



私は、新幹線に揺られながら、少し前の様子を見てみます。

「はるかっ!」

と、みやび君が遥さんに抱きつきます。

「むぅ..」

私は思わず唸ってしまいます。

しかし、今の私はそんなこと気にしません。

なぜなら、昨日私がみやび君にキスを迫った時に、みやび君はそのまま、逃げていってしまいました。

さっきも言いましたが、それはおそらく、私を意識してくれている。ということなのでしょう。

今はまだ遥さんへの気持ちの方が強いでしょうが、いずれ私の事を好きになる。いえ、してみせます...

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