第22話 林間学校4日目(午後)
時刻は午後7時を過ぎたところだ。
俺たちは外で行事がある、とのことなので外に出ている。
「この4日間よく頑張った、少し問題もあったが、誰一人欠けること無く全員で頑張れた事を嬉しく思う」
そう言うと、先生は1人の生徒に変わる。
どうやらその生徒は高城さんの様だ。
「どうも、実行委員の高城です!いまから肝試しを開催しまーす!」
と、その高城さんが言う。
「ええ!肝試し⁉︎」
遥は露骨に嫌そうな顔をする。
遥は確か、怖いのが苦手だったか。
「みおは大丈夫なのか?」
と、俺が聞いてみる。
「え?ああ、私は少し苦手かもです」
と、少し苦笑しながら美央は言う。
「大丈夫なのか?」
と、俺が心配する。
「はい、そこまで苦手ではないので」
「そっか」
「では、グループが決まったらこっちに来てくださーい!」
と、高城さんが言う。
俺たちはそこに近づいて行く。
「3人で」
「いや〜すみません、グループは2人でして..」
と、高城さんが言う。
「え?そうなの?」
と、遥が不満そうに言う。
(それはグループじゃなくて、ペアじゃないのか?)
「じゃあ、くじ引きで決めてもらうね!」
と、奥からくじ引きの箱の様なものを、持ってくる。
中には10本くらい割り箸が入れてある。
(準備がいいな...)
「さあさあ!早く引いてよはるかちゃんか、みおちゃんのどっちから引く?ちなみに当たりは先っぽが赤色に塗られていて、当たるまで引いてね!」
と、高城さんが説明する。
「では、私から引かせて頂きます!」
と、真っ先に美央が手を挙げる。
「え?私は..後でいっか」
遥は後の方が有利と考えたのか、素直に引き下がる。
「では..」
美央は沢山ある中の一本を引く。
「あ、当たりました!」
「「ええ⁉︎」」
俺と遥の声が被る。
なんと美央はあの中から、一本のあたりを一回で引いたのだ。
「おお!美央ちゃんおめでとう!」
「こ、これでみやび君と2人きりに...」
「納得いかなーい!!!」
「絶対不正してるでしょ!!」
と、遥は不満をぶつける。
「はい?してませんが?」
美央は至って冷静に言う。
「いいや!絶対におかしい!」
「まあまあはるかちゃん、みおちゃんは10個中1個を、たまたま引いただけだよ〜」
「そうです、たまたまです」
「ええ〜」
遥はまだ不満そうだ。
「諦めて下さい、運ですから!」
「はるかちゃん諦め悪いよ〜?」
「な...なんで私が彼氏のみやびと組めないの...」
遥は今にも泣き出しそうな顔をしている。
「ま..まあ帰ったら一緒に温泉旅行行こうな?はるか」
と、俺が言う。
「...うん..」
「暗いですね..」
「そうだな...
「はい」
俺と美央の番が回ってきて、今は肝試しのルートを歩いている。
山の一本道を進んで、その先にある神社まで行ってから折り返すというルートらしい。
遥は女子の友達と組んだ様だ。
俺たちがルートに沿って歩いていると
「きゃっ⁉︎今何か動きましたよ!」
美央がそう言い、腕に抱きついてくる。
美央が指さした方向を見ると
ガサガサ...ガサガサガサ...
と、草むらから音が聞こえる。
「多分、なんかの動物だろ」
「そ、そうでしょうか?」
「うん」
俺たちはそう言って、また歩き出す。
「あの..みお?」
「な、なんですか?」
美央は相当、怖がっている様だ。
「歩きづらいんだけど」
美央はさっきからずっと、俺の腕に抱きついていて、正直歩きづらい。
(あと、当たってるしな...)
「ご、ごめんなさい..でも、怖くって...」
「ま、まあいいけどさ..」
そのまま、俺たちは進んでいき、折り返し地点の神社まで来る。
「ここ..ですかね」
「そうみたいだな...」
「お!来ましたね!ではこちらをどうぞ!」
すると、近くの男子生徒に話しかけられ、何か渡される。
「これは...」
見るとそれは、懐中電灯だった。
「これを持って、あそこの道からお帰りください!」
と、来た道とは別の道を指さす。
カチッと音を立て、懐中電灯がつく。
「ったく、こんなもんがあるなら、先に欲しいよな」
「ふふっその通りですね」
そのまま、俺たちが道を進んでいると
「わっ!!!」
と、後ろから背中が叩かれる。
「きゃう⁉︎」
「うわっ」
後ろを見ると、白い布を被った、人型の物がいた。
おそらく、実行委員の1人で、参加者を驚かす役なんだろう。
そして、その人はそのまま森に走って行った。
「び、びっくりしました...」
美央はそのまま腰が抜けたのか、地面に座り込む。
「大丈夫か?」
と、俺が美央に聞く。
「い..いえ、その..非常にお恥ずかしいのですが...」
と言いながら、美央はこっちを見つめてくる。
「ああ、おぶろうか?」
「お...お願いします..」
そして、俺は美央をおんぶする。
「すみません..」
「大丈夫だよこのくらい」
...しかし
(やばい..歩くたびにみおの胸の感触が伝わってくる...)
そう、美央をおんぶすることは造作もないが、雅は今、別のことで危険な状況になっていた。
途中、道の陰から脅かし役の生徒が何人か来たが、雅はそれに構っている暇などなかった。
しかし、毎回美央が少し驚き、体が反応し雅を掴んでる腕に力が込められるので、必然的に胸も強く押し当てられる。
その度に、雅は自分の中の男を抑えるので必死になったのであった...
「はぁ、やっと着いた..」
ようやく元の場所まで戻ってきた雅達。
「もう平気です。ありがとうございました、みやび君」
と、美央は雅の背中から降りる。
「そ、そうか」
「はい!」
そして、そのまま受付に近づく。
「お!みおちゃんたち帰って来たんだね!終わるまでもう少しだから、ゆっくりしててよ!」
と、高城さんに言われる。
「では、あっちに行って見ませんか?」
と、美央が俺に言ってくる。
「なんかあるのか?」
美央が指さしたのは、森の茂みの中だ。
「はい!」
そして、そのまま美央に手を引かれてついて行く。
「...やっぱりなにも...」
「えい‼︎」
すると、美央は力を目一杯いれて、雅を押し倒す。
「えっ⁉︎」
「み..みお?」
「みやび君!」
美央は真っ直ぐな目で見つめてくる。
「な..なんだ?」
「んっ」
すると、美央はそのまま雅にキスをした。
「っ⁉︎」
「んっ...はぅ..ちゅぅ...」
「み、みお!」
俺は美央の肩を掴み、唇を離す。
「んっ」
しかし、美央はそれを押し除け、再び唇を交える。
(ま、まずい..みおのペースに飲まれる...)
この状況をどうにかしようと、雅が頭を働かせていると
「っ⁉︎⁉︎」
なんと、そのまま美央は舌を入れてきたのだ。
「ちゅる..はぅ...ぁん..みゅぅ..」
(だ、だめだろ流石に⁉︎)
「みお‼︎」
俺は美央を強引にどかし、そのまま皆がいる場所へと、走って行った。
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