第20話 林間学校3日目(午後)

「そろそろ行くか」

俺こと、神楽雅はそう呟いて寮を出る。

時間は午後7時を過ぎた頃だ。

おそらく阿部達は、お風呂から上がった遥のところに行く頃だろう。

俺は、それを見計らって取っ捕まえようと考えている。



「いやー明日で最後かぁ」

と、私の友達が呟く。

「楽しかったですね!」

と、美央が言う。

今日の昼、私こと、氷室遥は美央に呼び出され、そこでおそらく今日か明日に阿部達は私たちに何か仕掛けてくると言われた。

ならば、こっちが返り討ちにしてやる。と思って少し準備もした。

雅に頼ろうとも思ったけど、余計な心配はかけたくない。だからこの件は雅に気づかれないようにする...


私たちがお風呂を上がり歩いていると、前から人が歩いてくるのが見えた。

それをよく見るとやはり阿部達だ。

そして、阿部達は私たちの前に来て

「おい」

と、声を掛けてくる。

「なんでしょう?」

と、美央が話しかけに行く。

すると、

「ちょっと俺たちと遊ばねえか?どうせ暇なんだろ?」

と、言ってくる。

その下心丸わかりの発言に、みんな黙ってしまう。

「ごめんなさい、私たちはこれから寮に戻るので」

と、美央が断りを入れる。

すると

「別に俺らも女子寮行ってもいいぜ」

阿部がとんでもない事を言い出す。

「ごめんだけど、貴方達とは遊びたくないから」

私がそう言って、阿部達を避けて寮に戻ろうとすると

「まあまてよ」

と、阿部の取り巻きの1人が腕を掴んでくる。

「離して」

私はその人を睨む。

しかし、その人は軽く笑いながら

「いいじゃねえか、ちょっとぐらい!」

と、離そうとしない

「無理だから!離して!」

私は少し強めに言う

しかし、その腕に込められた力は全く緩まない。

すると、今度は

「はぁ..正直気持ち悪いから早く離して?」

と、私が少し煽る。

すると、

「あ?舐めてんのか?」

と、腕に込められる手の力が強まる。

しかし、私は煽り続ける。

「ホントにキモいからやめてくんない?」

すると、我慢できなくなったのか、そいつは腕を振り上げて私を殴ろうとする。

「このくそ女!」

そのまま、そいつの腕が私の頭に当ろうとする直前

「まて!」

阿部達は少し驚いて声の方向を見る。

すると、そこには私たちの担任の柊朝香先生がいた。

実は、美央に言われた後、私たちは柊先生に事情を説明し、こっそりついてきてもらっていた。

「ちっ」

と、取り巻きの1人が舌打ちするのが聞こえた。

「お前たちのやった事をお前たちの学校に報告させてもらうぞ」

と、追い討ちをかける。

すると、

「はっあんたも馬鹿だな」

と、阿部が言う。

「どう言う意味だ?」

と、先生は聞く。

「あんたを黙らせればいいだけだろ?」

すると、阿部達はいっせいに先生の方へ走っていく。

「なっ⁉︎」

そして、そいつらは先生を殴ったり蹴ったりする。

「あ?どうだ?反撃したらどうだ?出来るんならな!」

「くそっ」

先生が生徒に手をあげたとなると問題になるので、先生はずっとガードする事しか出来ていない。

「くっ」

「ほら、そろそろ降参しねぇとやばいんじゃねえか?」

一方阿部達は余裕の表情だ。

なんせ反撃が無く、ただ殴ればいいだけなのだ。

「やめっ..ぐふっ」

そうして、先生の意識がなくなる直前

「ぐおっ」

と、阿部の取り巻きの1人の体が飛ばされる。

「お前は..」

視線の先を見るとそこには

「みやび!」

なんと雅が立っていた。



俺こと神楽雅は寮を出た後からずっと遥たちを尾行していた。

そして、あいつらが教師に手を出し始め、流石にやばいと思い、その中の1人をぶっ飛ばした。すると、案の定そいつらの注目は俺に集中した。

「へっ今日は来ないって聞いてたんだけどなぁ?」

阿部はそう言うと自分の取り巻きを睨む。

「ひっ」

すると、そいつらは怯え俺の方を睨む。

「な、なんでここにいるんだ!」

と、俺に怒鳴ってくる。

「お前たちが怪しい動きをしていたからだよ」

「ちっそうかよっ」

すると、突然、阿部の取り巻き達が俺の方へ走ってくる。

「何度来ても無駄だよ」

「ぐはっ」

俺はそいつらを難なく対処する。

残るは阿部だけだ。

「形勢逆転だな」

と、俺が言う。

「へっ別に俺1人でもいいさ」

すると、少しずつ俺に歩み寄ってくる。

人質でも取るかと思ったが、それはしないらしい。

「じゃあ..いくぜ..?」

すると、阿部はとても素早い動きで俺の方へ向かってくる。

流石にあいつらのリーダー格なだけあって、少しは出来るらしい。

「はっ」

そのまま阿部は俺に回し蹴りをしてくる。

しかし、俺はその足を掴み阿部のバランスを崩そうとする。

「おらっ!」

しかし、阿部は俺の、みぞおちにそのまま拳を叩き込んでくる。

「ぐっ」

俺は痛みで阿部の足を離し、少し後ろに下がる。

「はっどうした?そんなもんかよ?」

阿部は俺を見てそう言うと、またこちらに走ってくる。

「おらっ!」

すると、今度は俺の顔目掛けて、拳を向けてくる。

俺はそれをギリギリで回避し、そのまま、阿部の首に手刀を入れる。

「ぐはっ」

すると、阿部は一瞬よろけたが、また向かってくる。

俺と阿部の戦いが始まってから、10分ほど経ち、お互い体力の限界が近づいていた。

「ふんっ」

阿部は今度は飛び蹴りをしてくる。

「はぁっ!」

しかし俺はそれを回避し、直ぐに阿部の腹に蹴りを入れる。

「ふぐっ」

すると、飛び蹴りの勢いもあり、かなりの衝撃が阿部の体に流れる。

それが決定打になったのか、阿部はそのまま地面に倒れ込む。

「はぁ...はぁ...もう..だめだ..」

しかし、俺の体も限界のため、そのまま意識を失ってしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る