第17話 林間学校2日目(午前)

「くあぁっ」

俺は朝、大きく欠伸をする。

窓から日が差してきて眩しい。

時計を見ると午前6時だ。

起床時間は午前9時半なので、まだまだ時間がある。

俺は少し散歩でもしようと思い、外へ出る。

周りは緑に囲まれており景色がいい。

そして、少し外をぶらついていると

「朝1で行ってやろうぜ」

「そうっすね阿部さん」

と、何やら話す声が聞こえる。

俺は気配をころして近づくとあのチャラ男達の様だ。

阿部と呼ばれたリーダー格の男が、先頭に立ってどこかに向かっている。

(あの方向は..女子寮か...?)

「どいつから犯すかなぁ⁉︎」

「どうしましょうか」

などと下品な会話をしている。

「で、でも教師がいるんじゃ..」

と、取り巻きの1人が言う。

「教師?ボコせばいいだろ?」

と、阿部と呼ばれていた男が言う。

(...あいつら本気か?)

もし教師を殴ったりしたら必ず問題になるはずだ。

(しかし...これでもし女子寮に入られたら..)

雅はその事を考えると、少し怖くなり、そのチャラ男達に近づいていく。

すると、雅に気づいた男が

「あ?お前は..」

そして、次々と雅の方を向いてくる。

「ん?テメェはあんときの奴じゃねえか?」

と、阿部が言う。

「ああ、久しぶりだな」

と、雅も返答する。

「ははっそうだなぁ?まさかこんなあっさりかりを返す時がくるとはなぁ?」

阿部は笑いながら言う。

「かりなんてあったか?」

「はっ!あん時お前のせいで逃しただろ?」

「ああ、そのことか、あれはお前達が悪いと思うが..」

どうやら、遥のことを言っているらしい。

「だから今日俺がハメてやろうと思ったんだよ」

「そうか..でも行かせないぞ?」

「..お前..痛い目みたいのか?」

阿部は俺を睨んでくる。

「見せられるものならな」

「はっはっ上等じゃねえか」

と、阿部は笑う。

そして

「おい」

と、近くにいた取り巻きを見る。

「は、はい」

すると、取り巻きの何人かがこちらに向かってくる。

「さぁ、どうする?前みたいに逃げるか?」

阿部はニヤニヤしながら言う。

「いいや?こいよ?」

俺は周りを確認しながら言う。

すると、阿部は少し冷めた表情で

「行け」

と、取り巻きに言う。

そのまま取り巻き達がこちらへ向かってくる

ざっと10人くらいだろう

「おら!」

と、その中の1人が俺の顔目掛けて拳を突き出してくる。

しかし、俺はそれを躱しそいつの首に手刀を入れる。

「ぐわっ」

すると、そいつはそのまま地面に倒れ込む。

しかし、今度は3人同時に俺を攻撃しにくる。

だが、全員バラバラで全く連携がなっていない。

俺はそいつらを難なく対処する。


その後、俺は取り巻き達を対処したが、どうやら阿部は逃げた様だ。

一応、女子寮も確認したがなんとも無かった。

そして、朝のミーティングが終わり、俺たちは食堂に着いた。

そして、座席を確認して

「あそこみたいだな」

と、俺たちの班の席を指さす。

「昨日は寝れたか?」

と、俺は遥に聞く。

「う、うん..お陰様で...」

遥は俺の顔を見ながら少し顔を赤くしている。

もしかしたら、昨日のキスがまだ尾を引いているのかもしれない。

「雅くん、私が食べさせてあげます!」

と、美央が言っても遥は

「...」

と、黙ったままだ。

「遥?」

と、俺が聞くと

「みやびぃ〜」

と、俺の肩に頭を乗せて甘えてくる。

「は、遥?」

と、俺が名前を呼ぶと

「雅..好きだよ」

と、急に伝えてくる。

「あ、ありがとう...」

「でも、どうしたんだ?遥」

「ん〜なんか雅が私の彼氏なんだと思うと我慢出来なくて...」

そして、なんとそのままキスを迫ってきた。

「ちょっ、ストップ!」

と、言い俺は人気のない所に遥を連れてくる。

「ど、どうしたんだよ遥!」

と、俺が聞くと、

「あ、あのね...なんか朝から雅と会うと胸がドキドキして..自分でもよくわからないの..」

と言ってくる、その姿はとても愛らしい。

「っ⁉︎そ、そっ..か」

「うん、だからごめんね?ちょっと戸惑ってるだけだから」

「ああ、そっか...」

そう言って俺たちは戻り、食事を済ませた。

もしかしたら、昨日のキスで、遥の中の俺が幼馴染が主軸の彼氏という感覚から彼氏が主軸に変わったのかもしれない。知らんけど。


今日はラフティングをするようだ。

今はその会場まで来ている。

施設の会場からラフティングの説明を受ける。

「8人乗りだから西流の班と組んでもらう」

と、先生が言う。

「組む班はこっちで決めてあるから、この表を見て確認してくれ」

と言われたので俺たちはそれを見に行く。

俺たちはC班の様だ。

「よぉ、お前らがC班か?」

声の主を見て、俺と遥は目を合わせて驚く。

なんと、そこにはあの阿部という男が立っていたのだ。

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