第18話 林間学校2日目(午後)
「よぉ、お前らがC班か?」
声の主を見て、俺と遥は目を合わせて驚く。
なんと、そこにはあの阿部という男が立っていたのだ。
「はい、よろしくお願いしますね!」
と、美央は笑顔で応える。
一方、遥はかなり警戒している様であまり喋ろうとしない。
「俺は氷川誠司だ。よろしく」
と、誠司が先に出て挨拶をする。
「大丈夫か?はるか」
と、遥に聞く。
「う、うん」
遥はまだ怖いのか俺の裾を掴んでくる。
「とりあえず行けるか?」
俺たちは、C班の集合場所まで行かなければならないので、俺は遥の手を握った。
すると、
「よろしくな」
と、阿部が俺に握手を求めてくる。
「ああ、よろしく」
俺はそれを片一方の手で握り返す。
すると、阿部の手に力が込められる。
しかし、俺が痛がる気配が無いためかすぐに力を抜き手を離すと、取り巻きを連れて先に行ってしまった。
どうやら取り巻き達は、俺を避けている様だった。
集合場所に行きある程度、説明をされる。
そして、俺たちはラフトに乗り、出発する。
俺の横に遥、後ろの列に誠司と美央、その後ろに阿部達だ。
遥は冷静さを取り戻したのかすっかりいつもの調子に戻っていた。
「あはは、楽しいね!」
と、遥が俺に言う。
「ああ、そうだな!」
そうして、ラフトは終点地まで着く。
「ふぅ、楽しかった!」
と、遥は満足気だ。
俺たちは他の班と合流する。
そして、俺たちは昼飯を支給される。
時計を見ると今は午後3時だ。
そのまま、弁当を食べ始める。
「みやび、あーん」
と、遥が俺にご飯を乗せた箸を向けてくる。
「お、おう」
俺は、それをありがたくもらい、俺も遥に食べさせる。
「ほら」
「ん」
遥は、それを美味しそうに食べる。
「みやびくん!私も!」
と、美央も俺の方へ箸を向けてくる。
「あ、ああ、ありがとう」
俺は美央からもご飯を食べさせてもらう。
すると、美央は何か期待した様な目でこっちを見てくる。
「えっと..どうした?」
と、俺が聞くと
「あの...私にもお返しは無いのかなって...」
美央は少し顔を赤くしながら上目遣いで見てくる。
「ああ..はい」
俺は少し美央から目を逸らしつつ、お返しをする。
「むぅ〜」
すると、遥が拗ねた様な目でこっちを見てくる。
「えっと..はるか?」
「なに?」
遥の声がいつもより低い..やっぱり怒っている。
「いや..ごめん」
と、言いながら俺は遥の口元へ、ご飯を近づける。
「もぉ、こんなのでご機嫌取ろうとしても無駄!はむっ」
と、言いつつも遥は美味しそうに、それを頬張る。
(可愛いなぁ)
思わず、雅は遥の頭を撫でる。
「ふぇ⁉︎ちょっいきなりはだめだよ..」
遥は頬を赤く染めて雅をみる。
「ああ、悪い」
俺は手を離す。
「べ、別に嫌とは言ってないけどさ..」
と、遥はつぶやく。
その間、阿部達は俺たちの事を横目に見て、何か言っている。
もしかしたら、まだ遥の事を狙ってるのかもしれない。
寮に帰ってきた俺たちは、晩御飯まで遥と一緒にぶらぶらして時間を潰した。
「晩御飯は何かなあ?」
今、俺たちは晩御飯を食べに行っている。
席に着くと、そこには鍋が置かれていた。
「はふはふ、美味しいね」
と、遥は鍋を早速食べている。
俺も鍋から具材を取り口に入れる。
「美味いな」
俺は遥に言う。
「みやび、今日も来れる?」
と、遥は言う。
「ん?ああ多分行けると思う」
「お!期待するよ?」
「うん、行けるよ」
「待ってるね!」
と、遥は嬉しそうに言う。
その日の夜、俺は風呂からあがり、一旦部屋に戻る。
そして、遥の所に行く。
「はるか!」
女子寮から出てきた遥に俺は駆け寄る。
「みやび!」
と、遥は笑顔で呼んでくれる。
「みやび、来てくれたんだね!」
「うん、ちょっと散歩でもするか?」
「うん!」
そのまま、俺たちは近くに湖があったので、そこの周りを回ることにする。
しばらく歩いていると、ちょうどいいベンチがあったのでそこで一休みする。
「ちょっと休憩するか」
「うん」
「星が綺麗だな」
と、俺は空を見ながら言う。
「うん、綺麗..」
遥も空の星を眺めて言う。
「みやび..」
と、言いながら遥は俺にもたれてくる。
「はぁ..ずっとこの時間が続いたらいいのに..」
と、遥は呟く。
「そうだな」
「みやび..」
遥は顔を赤くしてこっちを見てくる。
俺は遥を抱き寄せ、その唇に俺の唇を重ねる。
「んっ..ちゅ...はぁ..ふっ...」
遥から甘い声が漏れる。
その声が愛おしく唇を離したくない。
「はぁ、もう長すぎ!」
しばらくすると、遥は俺から唇を離す。
「わ、悪い、つい夢中で..」
と、俺が謝る。
「まあ..別にいいけどさ..むしろしたいし..」
そんな事を言ってくる。
「可愛いよ..」
俺はもう一度キスを求める。
「もぉ..しょうがないなぁ..」
と、遥は嬉しそうにキスをする。
そのまま俺たちは就寝時間ギリギリまで、一緒に過ごした。
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