第8話 ファーストキス

俺と遥は映画のチケットを買って席に着いていた。

「楽しみだね!」

「ああ、そうだな」

「今流行りの青春映画なんだよ!」

「へぇ、それは面白そうだな!」

「うん!あ、ポップコーンも買っていこうよ!」

「いいなそれ!」

俺たちは1つポップコーン(塩味)を買い館内に入って行った。


間もなくして館内の電気が消え映画が始まった。

どうやらこれは陰キャの主人公が余命を言い渡されている少女と恋をする物語の様だ。

そして物語がクライマックスに入る。

主人公が少女に想いを伝え付き合う事になったのだ。

しかしそこで衝撃の事実が発覚する。

「私..実は後余命1週間なの...」

「え?残り1ヶ月じゃ...」

「ごめん...それ嘘...」

「な..なんで..そんな事...」

「そんなの...好きだからだよ」

そして、その少女は笑顔でこう言った。


「私のファーストキス、君に貰って欲しいな」


そして2人は熱いキスをした。

俺は思わず遥の方を見る。

ハリが良い綺麗なピンク色の柔らかそうな唇に思わずドキッとしてしまった。

そこからその事が頭から離れず内容はあまり入ってこなかった。


「面白かったね!」

「ああ、そうだね」

映画を見終わった俺たちは家に帰る道を歩いている。

「特に最後のシーンとか感動したなぁ」

「...そうだな」

(やばい...さっきのシーンで遥の方見てからやばいくらいに意識しちまう)

「んー?何?」

俺が遥を見ていると遥が俺に気づいた。

「キスしたいな」

「...」

「...」

「ええええぇぇぇぇ⁉︎⁉︎」

遥は顔を真っ赤にしながら叫ぶ。

(やっちまった、つい本音が出ちまった...引かれたりしてないか...?)

ちらっと遥の方を見ると

「その...雅がしたいなら全然いいんだけど...その...なんというか...まだ心の準備が...」

耳まで真っ赤に染めていた。

「わ、悪い今のは...その...なんというか...つい思ってたことを...」

「じゃあ...雅は...したいの?..キス」

「えー..っと..その...したい」

と言うと遥は、更に顔を赤くする。

「じゃあ..キス..する...?」

(え?いいの?やばい!したい、したすぎる)

「...したい」

すると、遥は大きく深呼吸してから

「じゃあ...ん」

と、目を瞑って顔をこっちに向けてきた。

(キス顔⁉︎可愛い、可愛すぎる!!!)

俺はゆっくり顔を近づける、そして遥のピンクの唇に自分の唇を重ねる。

遥の唇はとても柔らかく、ずっとキスしていたくてたまらなく、さっき食べた塩の味ですら甘く感じる。

「んっ...ふっ..んっ..くぅ...はぁはぁちょっと、長すぎ」

「あ、ごめん」

(や、やべえ、つい夢中になっちまった)

「ん、もう一回!」

と、遥が言ってくる。

「いいの?」

「うん、私もしたいな」

「じゃあ、遠慮なく」

「まって!」

「ん?」

「今度は..私からしたい」

「え⁉︎」

「...だめ?」

遥が上目遣いで聞いてくる。

(か、可愛すぎるだろ⁉︎)

「いや、お願いするよ」

「うん!」

そして、俺たちは再び唇を重ねる。

「ふっ...んっ..はう...はぁ」

(遥の吐息やべぇ、興奮してきた)

雅は気持ちを抑えながら遥とのファーストキスをしたのであった。


「ただいま」

「おかえりなさい、もうご飯出来てますよ」

「え?今日は遥じゃないのか?」

「ふふっそうですよ、でも私達はある契約をしたんです」

「え?」

と、遥の方を見る。

「何したの?」

「はぁ、雅と映画行く時に電話したでしょ?その時に明日、雅と一日中一緒に居らせろだって」

「そうなの?」

と、美央に問う。

「はい、なので明日は私と一緒にいて下さいね!」

「でも、美央はすごい人気だから、俺みたいな陰キャが一緒にいたら、美央にも悪いと思うんだけど」

「ふふっ私は気にしませんよ」

美央は上品に笑う。

「そ、そうなんだ、遥は?」

「ん?何が?」

「いや..その...俺が美央と居ても良いのかなって...いやごめん自意識過剰かも」

「あーいいよ、信頼してるし、そ•れ•に映画にいかなかったら、あんな事に出来なかったでしょ?」

遥は可愛くウインクしながら言う。

「そうだな」

「あの...何かしたのですか?」

と、美央が聞いてくる。

「あんたには教えないわよ」

遥がいたずらな笑みを浮かべながら言う。

「む〜」

美央が頬を膨らませて怒っている。

「雅くんは教えてくれますよね?」

「んーと...」

俺が困って遥の方を見る。

「だめだよ!」

と、遥が力強く言ってくる。

「まあ、そう言うわけで言えない、まあ実は...俺もそんなに言いたくない」

「そう...ですか」

美央は残念そうに目を背ける。

「でも、明日はお願いしますね!」

「わかった」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る