第6話 それぞれのカースト

俺は教室に入り遥を探す。

すると、女子8人くらいと一緒に談笑していた。

(遥、もう友達できたの?早いな)

そんな事を思いながら、遥を見ていると、ふいに遥と目が合う。

すると、遥が近づいてきて、腕に抱きついてくる。


「おはよ〜みやび〜」


「お、おい」


俺が突然のことで戸惑っていると


「紹介するね、この人が私の彼氏の神楽雅くんです!」


と、勝手にその女子グループに紹介された。


「へぇー、なかなかイケメンじゃん!なんかオシャレに気を使ってるって感じ!」


俺は遥に告白するため中学時代にオシャレを覚えた。

それを高校でも使っている。

そのまま俺が女子グループの人たちに色々聞かれていると、


「あれ?でも今日白雪さんと茜ちゃんと一緒に登校してきたの?」


と、女子グループの1人がいった。


「えーっと...」


と、俺が口籠る。

すると、茜が


「あー、途中で会ったんだよ、雅くんと」


「へぇー、そうなんだ!白雪さんも?」


と、美央に聞く。


「いえ、私は雅くんのこん...」


「ス、ストーップ!」


俺と遥は慌てて口を塞ぐ。


「美央、頼むから外ではそういうこと言わないでくれ」


と、小声で言う。


「どうしてですか?」


美央はきょとんとした顔で聞いてくる。


「だって彼女が居るのに婚約者がいるなんておかしいでしょ!」


と、遥が言う。


「では、遥さん、雅くんと別れてください」


「はぁぁ?なんで私が別れないといけないのよ⁉︎」


遥は若干キレ気味で言う。


「だって、私は婚約者ですから」


「はぁぁ?意味わかんないし!」


遥は今にも掴みかかりそうな勢いで言った。その時、丁度先生が教室に入ってきた。


「はい、ホームルームはじめるぞ」


と、言われ、俺たちは席につく。

ホームルームで、プリントが前から配られる。


「はい、雅くん」


と、美央がプリントを送ってくれる。


「ああ、ありがとう」


俺がそれを受け取ろうとすると、美央の手からプリントが落ちる。


「すみません、拾いますね」


美央が申し訳無さそうに言う。


「いいよ、俺が拾うから」


と、言い雅が拾おうとすると、


「あっ」


美央と手が重なった。正確に言えば美央が重ねてきた。


「お、おい、美央?」


と、美央の方を見ると何故か天使の様な笑顔で手を離そうとしない。

それどころか雅の方へ少しずつすり寄ってくるくらいだ。


「お、おい美央」


と、困っていると


「せんせーい、雅くんが白雪さんに何かされてまーす」


と、遥が言う。

すると、


「チッ」


と、言いながら美央は自分の席に座り笑顔で


「すみません、プリントを落としてしまったので、拾っていただけです」


何事もなかったかのようにする。

(いま、舌打ちしたよな...)

雅も自分の席へ着く。

そして、ホームルームが終わった。

そして、俺が遥にさっきのお礼を言おうと喋りかける。


「遥、さっきはありがとな」


「当然でしょ、というか雅は誘惑に弱すぎ」


「いや、でも、あれはプリントが落ちて...」


「はぁ..あんなのわざとにきまってんじゃん」


「え⁉︎そうなの?」


俺が驚いていると

「おやおや、遥さん酷いこと言いますね」


美央が話に入ってくる。


「いやいや、絶対わざとでしょ」


「違いますよ、手が滑ってしまっただけです」


「はぁ?」


「はい?」


2人とも笑顔でお互いを見ているが、2人の間に火花が見えた気がする。

そして、1限が終わる。初めは教科書を配られたりするだけなので楽だった。

そして、休み時間に入る。

美央の周りには沢山の人が来ている。美央の人気はすごく他クラスからも人が来ている様だ。

(あれはクラスのカースト上位の人間だな)

しばらくすると、


「ねぇ、雅こっち来てよ」


と、遥に言われる。


「え?」


「だから、雅の性格じゃ友達作るのきついでしょ?だから、男友達が出来るまで私達と一緒にいよ?あと...私も一緒にいたいし...」


と、遥が少し顔を赤らめて言う。


「あ、ああ、あり..がとう」


「おやおや?熱いねぇ」


遥のグループと思われる女子がこっちに来て言う。


「もぉ〜、茶化さないでよ」


そして、遥の周りには朝一緒にいたメンバーが続々とやって来る。

(ていうか、遥のメンバーに入ったら男俺だけじゃん)

俺は少し気まずく思う。


「ねぇねぇ、どっちから告ったの?」


と、メンバーの1人が言う。


「んーとね、雅が中学の終わりに告白してくれたの」


「へー」


など、色んなことが聞かれる。

女子は俺と遥の出会いに興味深々のようだった。

ちなみに俺は、ほとんど遥が答えて俺に振られた時にしか発言していなかった。

そして、全ての授業が終わり、帰ることになった。

遥達は、放課後遊びに行くことになっていた。しかし、俺は一足先に帰る、と言った

べ、別にそのグループに溶け込めないと言うわけではないわけではないが...

ということで、俺は教室から出て下駄箱で靴を履き替えていると、


「雅くん!」


と、俺を呼ぶ声が、みると、そこには美央がいた。


「あれ?今日は友達と遊ばないのか?」


「はい、今日は雅くんと帰りたかったので...」


と、美央は少し顔を赤らめながら言う。


「そ、そうか、じゃあ帰るか」


「はい」


と、一緒に帰路に着こうと思っていると、


「おい、あの男誰だよ?」


「しらねぇー」


「くそっ、俺の美央様と一緒に下校するじゃねぇ!」


「殺せ‼︎殺せ‼︎」


どうやら、美央には過激派のファンがいるらしい。

俺が少し周りを気にしていると


「気になりますか?」


美央が少し心配そうに言ってくる。


「いや、気になると言えば嘘になるが...」


「美央ちゃん、一緒に帰らねぇか?」


俺と美央が話していると、突然誰かが割り込んで来た。

見ると、金髪でいかにもヤンキーみたいな男がいた。


「えっと...あなたは?」


どうやら美央も知らない人らしい。


「俺は平塚恭弥(ひらつかきょうや)よろしくな、ほら、こんな陰キャといてもつまんないだろ、俺たちと遊ぼうぜ」


見ると、廊下の影から仲間と思われる男達が出てくる。

(おいおい、なんで、入学早々ヤンキーに絡まれないといけないの?しかも力尽くで来る気か?)


「なぁ、いいだろ?俺たちと遊ぼうぜ、美央ちゃん」


「ごめんなさい、私はこの人と帰るので」


「ああ?いいじゃねぇか?ほら、来いよ!」


そいつは、美央の手を掴みそのままどこかへ連れて行こうとした。


「おい、やめろよ」


と、雅が言う。


「ああ?陰キャが調子に乗んな」


と、腕を振り上げて殴ろうとしてくる。

雅はそれを軽く避ける。


「俺は一応武道をやっていた。素人が勝つことはできない」


と、言う。

すると、こいつの取り巻きみたいな奴らが出てくる。

(やばい、こいつらやる気だ...)

ざっと見て、10人くらいは居る、雅は親が少し武道にハマってから習っていたが、人数差から見て、まず勝てない。

そのまま、取り巻き達が走ってこっちにくる。

すると、


「先生!美央ちゃんと雅くんがいじめられてまーす!」


見ると、そこには茜がいた。

ヤンキー達はそのまま舌打ちして逃げていった。


「大丈夫?」


と、茜が近づいてくる。


「はい、助かりました」


「ねぇ、一緒に帰らない、雅くんもいいかな?」


と、茜が言ってくる。


「ああ、俺は構わない」


「私もです」


「じゃあ、行こっか!」


と、言いながら俺たちは帰路に着く。


「いや〜、美央ちゃん大人気だねぇ」


「そうでしょうか?」


「そうだよ!」


などと、話していると、


「じゃあ、私こっちだから」


と、言い、茜が違う道へ行く。


「はい、ではまた明日学校で」


「じゃあ」


「じゃあね、雅くんも美央ちゃん守ってあげてよ!」


「あ、ああ」


と、いい俺たちは別れた。

2人で家に帰っていると


「そういえばどうして俺の婚約者になりたいんだ?まだ、出会ったばっかだし、俺は容姿も整ってない」


「あれ?言ってませんでした?私は、雅くんと昔、会ってますよ?」


と、美央が言う。


「え?そうだったか?」


「はい」


「いつ?」


「まあ、その内思い出します、いえ、思い出させます」


と、言いながら笑顔で家に入った。

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