第5話 美央との登校

遥と俺は帰宅し、いっしょにテレビを見ていると、ガチャ、と玄関のドアが開いた。


「美央か?」


俺は、玄関の方に向かって問いかける。


「はい、ただいま帰りました」


「おう、おかえり」


と、言ってから俺はハッとした。

(なんだかんだ俺も美央と遥の同居を受け入れてるのかな...)

まだ、同居して間もないがそう思う雅なのであった。


「こんな時間まで何してたの?」


遥は不思議そうに聞く。

今、時計を見ると午後8時を過ぎていた。


「友人達と遊びに行っていました」


どうやら、もう友達ができたらしい。

(まあ、あの人気だもんな)

俺は学校での美央を思い出す。


「では、今日のご飯は私が作るので少し待っていて下さいね」


そう言って、美央はキッチンに向かって行く。

俺たちの家では、雅が料理を全くできないため、遥と美央の2人が交代でご飯を作り、他の家事は、雅がするということになっている。


「雅くん!雅くん!」


「なんだ?」


美央が急かすように言ってくる。


「その..このエプロンどうでしょうか?...」


美央は少し顔を赤くして、照れた様に言ってくる。

美央のエプロン姿は、正直に言うとめちゃくちゃ可愛い、美央はスタイルが良く出るところも出ているため、エロいくらいだった。

しかし...


「じー...」


先程から遥の圧がやばい。

ふと、遥の方を見てみると

ふいっと目を逸らされる。

(ここは正直に言うべきか、いや、しかし...)


「似合ってるよ」


雅はあえて可愛いなど言わず似合ってるとだけ言った。


「ふふっ、ありがとうございます」


すると、美央は満足気にキッチンに向かって行った。


「あ、そうだ美央、今日はありがとな」


雅が自己紹介の時の礼を言う。


「はい?なんのことでしょう?」


美央は、心当たりがない様だった。


「ほら、自己紹介の時、助けてくれただろ?」


「ああ、なんだ、そんなことですか」


美央は笑顔で言う。


「そんなの当たり前ですよ、雅くんは律儀ですね」


「そうか?」


「はい、そうですよ」


と、笑顔で言いながら美央は料理に戻る。

すると、


「えいっ」


いきなり遥が雅の胸の中に飛びこんできた。


「は、遥?」


「んー?」


「えっと..どうしたの?」


と、遥に聞いてみる。


「私..雅の彼女だよ?だから、甘えてるの」


遥はそう言って、雅に甘える。

(やばい、可愛すぎるだろ)


「そうだな」


と、言いながら俺は、遥の頭を撫でる。

すると、遥は


「えへへ〜」


顔を綻ばせ、嬉しそうに笑う。

(俺の彼女が可愛すぎる件..)

その後は3人でご飯を食べた後風呂に入り、3人で寝たのであった。

ちなみに、遥と美央が話し合った結果、1日交代で雅と一緒に遥と美央は寝ることになっている。



翌日、俺は美央と学校に行っていた。

遥は

『ごめん、入学初日は友達を作りたいから早く行くね』

そう言って、先に学校へ向かった。

なので、俺と美央の2人きりだ。


「あ、あの、美央さん...歩きにくいんですが」


美央は家を出てから、ずっと雅の腕に抱きつきながら学校に行っている。


「ふふっ、照れなくていいですよ、私は雅くんの婚約者なんですから」


「いや...そういう問題じゃないんだけど...」


学校の近くに来ると


「あれって、白雪さんじゃないの?」


「おいおい、一緒にいるあいつ誰だよ」


と、周りの人達が言う。


「...」


ただでさえ美央の容姿は目立つ、しかも新入生代表として、みんなの前に立ったので大体の生徒は存在を知っている。


「お、おい、流石に目立つからこの辺で...」


「む、私といるのがそんなに不満ですか?」


と、上目遣いに聞いてくるので


「い、いや、そういうわけじゃ...」


雅は思わず返答に困ってしまう。


「おーい、美央ちゃーん」


すると突然、後ろから呼ぶ声が聞こえる。

美央が後ろを振り向く


「あら?茜さんではないですか」


「おはよう!」


と、赤い髪にショートカットのスポーツ系と思われる女の子が言った。


「あれ?美央ちゃんの横の人は彼氏?」


と、言う。


「いや、ちが...」


「彼氏ではなく婚約者です!」


美央は突然、とんでもないことを公言する。


「お、おい」


「え?婚約者?まじで言ってんの?」


茜と呼ばれた子は、かなり戸惑っている様に見える。


「いや、その、違くて...」


と、俺が弁明しようとすると


「よろしくね!えーと、名前は?」


その子は笑顔で言ってくる。


「お、俺は神楽雅...です...」


俺は普段、いわゆる陽キャと言われる存在と話さないため、自然と敬語になってしまった。


「あー!いたねぇ、雅くんだね」


「う、うん」


「私は高城茜(たかぎあかね)よろしくね!雅くん!」


「う、うん、よろしく...」


「いやー、美央ちゃん美人だから変な男に引っ掛けられるんじゃないかと思ったけど、けっこう優しそうな人だね、ていうかその歳で婚約者って早くない⁉︎」


と、ニコニコしながら言う。というか、前半は親戚とかが言いそうなことだな。


「あの、そのことなんだけど...あんまり、言わないでくれるかな?」


「え?なんで?」


「なんでって...」


俺は黙ってしまう

(事情を説明すべきか?でも、まだ知り合って間もないし...)

と、俺が色々考えていると


「実は雅くん、彼女がいるんです」


美央はやれやれと言った感じで、そう言った。


「え!?」


「お、おい!」


と、雅と茜の声が重なる。


「なになに!?雅くんってば婚約者いるのに彼女作ってんの?それってただのやり○ンだよね?ね!?」


茜が急に下ネタをぶっ込んでくる。


「い、いや、あの、先に彼女が出来たんだ」


「え〜⁉︎彼女が居るのに婚約者作ったの〜!?」


「い、いや、違くて...」


(まずい...このままだと拉致が開かねえ...)

このままだとおれがただのやり○ン外道野郎になってしまうので弁明はしたい。


「だとしたらやばいよね、美央ちゃん!」


「はい、早く私と一緒になって欲しいのですが、素直じゃなくて...」


(...さらに話が悪化する前に弁明せねば)


「はぁ〜...」


と、俺はため息を吐きながら事情を説明する。


「なんだ〜でもその彼女ってそんなに可愛いの?」


と、茜が聞いてくる。


「ああ、当然だろ?」


「美央ちゃんよりも?」


「悪いが、そうだ」

遥が可愛いということは、譲ることはできない。


「へ〜、会ってみたいなその子と」


と、茜が言うので


「ああ、勿論だきっとあいつも喜ぶ」


と、言って俺たちは教室に入っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る