第1話  許嫁の宣戦布告

「それで、みやびはどっちを選ぶの?」


俺に将来の奥さんができた事を聞くと、俺の彼女こと、氷室遥は怪訝そうに俺に言う。

俺は両親に許嫁を紹介された後、すぐに遥の家に来ていた。

遥の家は隣にあるのですぐに来れる。


「もちろん俺は、はるかを選ぶよ」


「じゃあ断ってきてね」


遥は笑顔で言う。


「それが...上手くいかないんだよ」


「どうして?」


遥は不満そうな顔をしながら俺に聞く。


「俺の両親とあっちの両親とで話がついているらしいんだよ」


「えー、そんなのって...」


「話の途中にごめんなさいね、みやび君」


俺たちが話していると、遥の部屋のドアが開けられ、お父さんが呼んでるよ、と、遥の母に言われ、すぐに来いとの事だったので渋々家へと戻った。


「みやび?なんではるかちゃんの所に行ってたんだ?」


「...ちょっと」


俺は言葉を濁す。

もう両親は決めてしまっているらしく、今俺が遥と付き合っているということは、とても言い出しづらい。


「ったく、今からお互いの事を知って貰おうと思っているんだから、どっか行くなよ、じゃあな」


そう言うと、父さん達は部屋を出て行った。


「...は?」


すると、この部屋には俺と俺の許嫁の子しかいなくなる訳だ。


「...」

「...」


俺たちの中に沈黙が流れる。

(まずい...何の話をしたらいいか全く分からん)


「あ、あの!」


長い沈黙が流れると、俺の許嫁と言われた子が気まずそうに言う。


「まずは、自己紹介からですよね。私の名前は白雪美央(しらゆきみお)と申します。」


美央と名乗った子は笑顔で話しかけてくる。


「ど、どうも、神楽雅と申します。」


俺は美央の丁寧な言い方に、こっちまで丁寧になってしまう。


「ふふっ敬語じゃなくていいですよ」


美央は気さくに笑いながら言う。

その笑顔は本当に可愛く、天使のようだった。


「でも君は敬語で話してるし...」


俺だけ敬語じゃないというのはおかしいのではないだろうか。


「私は小さい頃から父に教えられたので」


「そ、そうなんだ...へぇ」


この子はどこかのお嬢様なのか?

俺は敬語だと喋りにくいので、お言葉に甘えて敬語をやめる。


「あと、みやびくんのことも沢山聞かされました」


美央は思い出したかのように言う。


「そうなんだ、どんな事聞かされていたの?」


「はい、例えば、女性の好みは可愛い系より美人系、そして、黒髪ロングの背は自分と同じくらいの女性が好み何だとか」


「だ、誰にも言ってないはずなんだが」


「私、みやびくんの好みに会うように日々努力しています!」


確かに美央は雅の好みに合う女性だ。

ちなみに、もちろん遥も雅の好みだ。


「あと、幼馴染の女性ととても仲が良いだとか」


「うっ、そのことなんだけど」


「はい?何でしょうか?まさか紹介して頂けるとかでしょうか?」


美央はまさかその子と付き合っている、なんて微塵も思ってないようだ。


「い、いや、そうじゃなくて、俺...」


「その幼馴染の女性と付き合っているんだ!!!」


そう言うと、美央は一瞬驚いた顔をした後、すぐに笑顔に戻り


「...はい?ふふっみやびくんは冗談も言うんですね。みやびくんのお父様からは彼女はいないって言っていましたよ」


「...冗談じゃない、今日付き合うことになったんだ」


俺がやっとの思いでそう告げると、美央は少し考える素振りをした後、また笑顔に戻り


「では、今すぐ別れて来て下さい!」


「...悪いがそれは出来ない、俺は彼女の事、好きだから」


「でも、私とは、将来一緒になるんですよ?」


「本当にすまん、さっきも言ったがそれは...」


「でしたら...私がみやびくんに好きになって貰って彼女さんと別れて頂きます!」


美央はそう言って立ち上がりながら、俺の前で遥に宣戦布告をした。

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