一足早い、はぴはろ
子どもたちの引率は、これで終わりです。
園児たちはみんな、迎えに来た馬車で帰っていきました。
栗をもらって、大満足です。
「あんたはどうせ、泊まるだろ?」
「もちろん」
それに、もうすぐハロウィンです。となると、やはりあの人が……。
「ハッピー・ハロウィンですわ!」
来ましたよ。例の人が。
「ウル王女、貴族様と入れ違いでいらっしゃるとは」
「ええ、シスター・クリス。ハロウィン当日は、あなたがお休みだと聞きましたの」
「はい」
シスターたちは、遠足で園児たちの引率をするか、ハロウィンのどちらかに参加する必要があります。
わたしは今年、遠足のほうを取りました。
「で、今日は絶対ソナエさんといっしょだろうと、ヤマを張っていましたのよ。ドンピシャですわ」
わたしの行動パターンを、あっさり看破なさるとは。まあ、他のシスターから聞いたのでしょう。
「ああ。あたしも、あんたが来るだろうと思っていたよ」
例年のように、突撃はしません。今日は園児たちの相手で、疲れました。
「でしょ? ですから、こちらからお邪魔した次第ですの」
なんという行動力。
「さて、なにかありませんの? お菓子はこちらでご用意いたしましたわ」
「いいねぇ。これは、季節限定の栗きんとんか。今ちょうど、焼き栗が余ってる。栗のお返しが栗で、申し訳ないが」
「いえいえ、お構いなく。それに今日は、特別ゲストがいましてよ」
「やほー、シスター。はぴはろ~。わちきが来たわよ~」
ウル王女が連れていたのは、花魁のような出で立ちの女性でした。もう、できあがっています。
「ご無沙汰しています、キサラさん!」
現れたのは、キサラさんというお姫様でした。ソナエさんと色恋で少々トラブルになった、東洋国の王女です。
「そんな格好をしているから、一瞬誰かわかりませんでした」
「いいでしょ~。これ~。魔物の革を使って作ったの~。わちきもウルも、魔法使いっしょ~? 加工は簡単だったわ~」
ウル王女とキサラさんが着ているのは、カピバラのキグルミです。
「それとね、ソナエにプレゼントがあるの。じゃあーんっとな」
アイテムボックスから、キサラさんが大量のお米とお酒が出てきました。
お酒の方は、ひと瓶だけ半分くらい減っています。ああ、飲んじゃったのですね。
それと……。
「でっかいカボチャだなあ」
「動物園のカピバラショーのために、一つはあげたの。でも、作りすぎちゃって、まだこの一個が余ってんのよ」
カピバラにあげる野菜は、間に合っているそうです。なので、ソナエさんのお家で消費できないかと、キサラさんは相談に来たのでした。
「いいぜ。キサラ。なにが食いたい? カボチャの定番っちゃあ、シチューだが」
「これでみんなに、グラタンを作って欲しいのよ~」
「グラタンかあ。いいね!」
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