パンプキングラタンは、罪なボリューム 

 ウル王女とキサラさんが、グラタンを作ってくれといいます。

 

「でもこんなどでかいカボチャ、どうすんだ? 調理場がないぜ」


「ご心配なく」

 

 王女とキサラさんが、魔法でカボチャを浮かせました。

 風魔法で、スパスパと切っていきます。中身まで、くり抜きました。


「おおーっ」


「種はまた、ウチで使うわ」


 種だけアイテムボックスにしまって、キサラさんとウル王女が、具材のお野菜を切ります。包丁ではなく、風魔法でスッパスパ刻んでいますね。

 具材も、宙に浮かんでおりますよ。


 ソナエさんは、ホワイトソースをグルグルとかき混ぜていました。


「わたしは何をすれば?」


 さすがに、お手伝いをしないわけには参りません。

 なにかしようと、わたしは立ち上がりました。


「クリス。お前さんは、座ってろ」


 言われた通り、わたしは座っておきます。


「今日は、我々がおもてなしをしますわ」


「そうそう。いつもお世話になっているからねー」


 だいたいおいしいものを提供してもらっているのは、こちらなんですけどねぇ。


「グラタンの用意はできてっから、ぶち込むぞ」


 ソナエさんのホワイトソースが、完成したようです。


「いつでもどうぞ」


 ソナエさんが、「おりゃっ」と、グラタンの具材やらパスタやらをおばけカボチャの中に投下しました。チーズを乗せて、あとは焼くだけです。


 火術を使って、キサラさんと王女の二人してグラタンを焼き始めました。


 上のチーズが、トロトロになってきましたよ。ああもう、これは目の毒ですね。おいしいのが、わかりきっています。

 これはもう、見る拷問ですね。こういう処罰が、将来的にできるんじゃないでしょうか。


「お釜がないと、グラタンは作れないと思っていました」


「知らないのか? グラタンってのは、フライパンでも作れるんだぜ」


 それにこの香りは、シーフードですね。


「具材は野菜の他には、きのこ、鮭とイカの切り身だな。鶏肉も入ってるぞ」


「ああ、単語を聞いただけで、ライスが進みます」


「ライスは栗ご飯の残りだけど、いいか?」


「釜が空っぽになる覚悟が、おありなら」


「いいぜ。たらふく食ってくれ」

 

 グラタン、なんという背徳的な響きなのでしょう?

 ぷくぷくという音でさえ、胃袋が悲鳴を上げます。

 

「グラタン、パンプキンのグラタン。しかもお化けサイズの完成だ」


 ハロウィンらしい、最高のメニューが完成しました。


 まだブクブクと、音を立てています。できたてのグラタンというのは、音でこちらの胃袋を刺激するのですね。

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