限界メシを食いつつ、昨今の食育を憂う
「クリス。お前さん随分と、ガッツリしたメニューを作ってきたな」
わたしの肉挟みパンを眺めつつ、ソナエさんが唖然としています。
「あなたも大概ですからね。ソナエさん」
ソナエさんは焼き鳥と焼きおにぎり、水分はひょうたんの酒ですか。昼から飲むつもりですね。
「児童を引率するのに、飲酒ですか?」
「これは甘酒だっ。ガキのお守りをしてるんだから、アルコールは飲めないよ」
そういってソナエさんは、ノンアルコールのお酒をぐいっと煽ります。
わたしも、食べましょうかね。
「いただきます」
お肉たっぷりのパンに、かぶりつきます。
「ああ、
パンを硬めに焼いたのが、正解でした。柔らかいパンだと、すぐにお肉の油分を吸ってしまいます。そうなると、よりパンが柔らかくなりすぎてしまいますからね。
ややカチカチに焼くことで、油分やタレがほどよくパンに染み込んで、歯ごたえも残っているという。
この絶妙なバランスが、より罪を深めてくれます。
「白目をむいてるぞ、お前」
「これはキマります」
ザックザックと口の中を動かしながら、わたしはタレとお肉の旨味でトビました。
秋の涼しさと相まって、わたしの気分は木枯らしに吹き飛ばされるモミジのようにふわふわっとトンでいます。
「キマったらアウトだろ。お前こそガキの引率係じゃねえか」
「キメますよ。むしろキマるくらいたらふく食べなければ、やんちゃな子どもたちの相手なんてしていられませんよ」
「お前が結婚できない理由が、わかるよ」
甘酒を煽りながら、ソナエさんが呆れ返りました。
「そうですねえ」
わたしは、自分で出産することは考えていません。母親になるという想像はできるかもしれませんが、特定の相手と添い遂げるイメージが、自分でも湧かないのです。
食事に、すべてを捧げていますからね。
「それにしても、なんなのでしょう? あの量は」
子どもたちのお弁当を見て、わたしはため息をつきました。
なんかお弁当が、妙に小さいんですよね。お菓子がメインなのでしょうかと思いましたが、そうでもありません。全体的に、持ち込んでいる食事量が少なめですね。
「少ないです」
「チビだから、あれくらいだろ? 好き嫌いもあるだろうし」
「にしては、持ってこさせなさすぎでは? いくら栗ご飯を食べる分の胃袋を空けておく必要があるとはいえ」
あの程度の量で、後半の栗拾いでバテないのでしょうか?
あれだけのボリュームで過ごせと言われたら、わたしの胃袋がボイコットしますよ。
「あいつらは、お前とは違うんだよ。子どもたちはあれでちょうど、カロリー消費ができるんだろうよ」
「わたしの燃費が悪いだけだと? それは認めますが」
「いや認めるのかよ?」
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