遠足先は、神社

「ソナエさん、どうも。お世話になります」


「おーう。クリスにガキども。よく来た」


 今日の遠足内容は、栗拾いです。


 ソナエさんが管轄する神社の裏手に、栗の木がたくさんありまして。


「遠慮せずに拾って帰ってくれ。で、お前ら。お家で調理は、できるよな?」


 子どもたちは、元気に手を上げました。


 一応、幼稚舎の子どもたちですからね。お貴族様ですから、メイドさんなどもいるでしょう。

 拾い物を食べる習慣がないなら、別ですが。


「それで、拾ったものの一部は、こっちに寄付してくれな」


 ソナエさんが、大きめのザルを用意しました。こちらは孤児や、労働者さん用の分となります。ハロウィンのお菓子にも、使うそうですよ。


「だいたい栗は、こういう形で落ちている」


 サンプルとして、ソナエさんがイガグリを手に持ちました。手には、革製のミトンをはめています。


「栗はこっちだ。この木製のトングで拾ってくれ。軍手もあるけど、素手で掴むなよ」


 続いてソナエさんが、人数分のトングを配りました。


 一通り、行き渡りましたね。


「あの、わたしの分は?」


 わたしだけ、トングをもらえていません。


「あんたは、割る係だ。手袋さえあれば平気だろ? あたしもだけど」


 まあ、わたしは半分冒険者ですからね。栗を素手で掴むくらい、造作もありませんが。トングを使う方が手間ですし。


「ほいじゃ、始めてくれ」


 幼稚舎の子どもたちが、栗を拾い始めます。


 カゴいっぱいのイガグリが、わたしの元に集まってきました。


「ホ割った!」


 わたしも、栗を割り続けます。

 カゴからイガグリを出して、ミシミシと割っていきました。


 ホントはイガを踏んで栗を出すのですが、靴底を貫通すると危ないので。

 ソナエさんと一緒に、イガグリを割り続けます。


 みずみずしい栗を見ていると、そのままかじりつきたくなりますね。今食べると、アクまみれなのでやりませんが。


「クリス、自粛しろよ」


「わかっています」


 わたしは今回、主役ではありません。


 はあ。それにしても山を登って栗を拾って、いい運動になりましたね。

 お腹が空いてきました。

 お弁当タイムが、待ち遠しいです。

 

「栗ごはんとかは、ないのでしょうか?」


「もう栗ごはん用の分は、前もって拾って下処理済みだ」


 集めた栗もほとんどが、食べるためではなく寄付する用です。

 まして今日拾った栗は、半日ほど水につけておいておくのだとか。中から虫を出すのです。


「もうすぐ、炊ける頃だよ。栗拾いのシメに作ってやるから、楽しみにしておけ」


「お願いします」


「ただクリス、自粛しろよ」


「当然です」


 わたしって、どれだけ信用がないのでしょうか。


 さて、お昼ごはんとなりました。

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