限界メシは、背徳の味

詰め込めるだけ、詰めるっ

 秋も深まってきました。

 今日は、幼稚舎の遠足を引率します。


 いつもは、そこにお給仕の方たちもついていくことになっていました。

 ですがお給仕班は、他の児童たちの引率に向かうそうです。

 児童たちも、お弁当を持ってくるそうで。


 となると、わたしもお弁当が必要になるわけでして。

 

 お料理なんて、久々です。

 どちらかというと、わたしは人が作ってくれたものにこそ価値を見出すのですが。

 自分が作ると、ただ胃袋に物を詰めるだけの作業になってしまうので。


 ホームレスさんたち相手の炊き出しには、慣れています。ドカっと作ればいいので。


 ただ自分のお弁当となると、ドカっと作っていいものやら。

 料理人やメイドさんではないので、凝ったものはまるで作れないんですよねー。


 どうせお腹が空いたら、児童の相手なんて務まりません。

 

 これは詰め込めるだけ、詰め込みましょう。


 わたしが真の食育というものを、お見せいたします。


「まずは、お肉をおしょうゆで甘辛く」


 おしょうゆは、ソナエさんからいただきました。

 お砂糖は少ないので、若干のブドウ果汁を加えます。


 お肉も超激安で、手に入れました。冒険者をやっておくものです。

 干し肉ではなく、思い切ってバラを使いましょう。


「ああ~罪の音ぉ」


 朝からこれは、背徳感満載の音ですね。


 あとはパンを焼いて、と。


 おっと。シスターの朝ごはん用に、じゃがいもを蒸かしておかなくては。


 蒸かし芋を作りつつ、こちらは芋をマッシュします。

 三つ使いたいですが、それだとわたしの朝食がなくなりますからね。

 一つだけ潰して、あとはきゅうりや玉ねぎなどのお野菜でかさ増しいたします。


 じゃがいもをマッシュしているだけなのに、口の中がよだれだらけに。

 ゴクリ、と生ツバを飲んでしまいました。



「おお、お肉がいい感じにできあがりましたよ」


 別皿に、焼いたお肉を移します。粗熱を取って、と。


 次に、パンに切込みを入れます。


「これ、モーニングで食べて以来、ずっと気になっていたんですよねえ」


 とある日、国王とジョギングがれた食べたモーニングに、このメニューが追加されていました。


 題して「肉ダバ」。


 これが意外と、コーヒーと合うのなんの。あの罪深うまさ、最強でした。


 で、自分流の肉ダバが完成します。

 

「りんごは……切らなくていいですね」

 

 料理は、肉パンで力尽きました。そのまま現地で、マルカジリしましょう。

 

「なんという、背徳的なお弁当ができてしまったのでしょう」


 わたしは久々に、ホームレスのお給仕以外でお弁当を作りましたよ。やれば、できるもんですね。

 レシピはありませんでしたが、なんとか自力で「肉ダバ」を作れました。


 さて、行ってまいります。

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