勇者ケンタ一行
「トリック・オア・トリートですわ!」
また来ましたか。お騒がせ王女が。
たいてい、ハロウィンの季節になると、仮装して我が教会に現れますね。
「おや? あなたは今日、主役じゃないんですね?」
本日のウル王女は、全身キグルミのネコです。首輪までしていますよ。
「ええ。今日の主役は、やっぱり勇者ケンタと同郷の方でなければ」
ネコルックのウル王女が、手を後ろに広げてとある人物を示します。
やはり、ソナエさんでした。
東洋の袴の上に、甲冑を着込んでいますね。
ソナエさんは、勇者ケンタと同じ地区出身なのです。
「だからって、あたしがわざわざやる必要もなくね?」
「誰が勇者になるかで、説得力が違いますわ」
「あたしには、誰が魔王を倒したかなんて、どうでもいいんだけどな」
彼女はむしろ、酒に溺れたいのでしょう。ケンタに退治された魔王【スキバラドウジ】のように。
「で、わたしにも仮装に出ろと」
「もちろんですわ。あなたどうせ、お菓子を配るのでしょう?」
「はい。教会特製のソフトキャンディを」
わたしの手には、くっつかないよう表面に粉をまぶしてあるソフトキャンディがあります。
「あんまりおいしくないんですよね、これ」
なのに受け手がやたら、ありがたがってくれるですが。なぜなのでしょう? って思うほどです。
「シスター・クリス。あなたはもっと、ご自分の人徳というものを理解すべきですわ」
わたしから人徳を感じようという方のほうが、ヤバい気がしますけど。
「では、参りますわよ。その前に、こちらを」
わたしにも、衣装があるみたいです。ニワトリのキグルミですね。
「あとはブタさんなんですが、どうしましょう?」
「あたしがやるわ」
なんと、シスター・エマが名乗り出ました。
エマとウル王女とは、珍しい組み合わせですね。
「まあ。シスター・エマが。恋愛相談はよろしくて?」
「後輩のフレンが、受け持ってくれるわ。子どもたちに、キャンディを配るんでしょ? あたしもシスターよ。お勤めを果たすわ」
「すばらしい、お心構えですわ。では、参りましょう」
エマをブタキグルミに着替えさせて、出発です。
「ごきげんようみなさん。トリックオアトリートですわ」
まずは近所の少年のおうちに、お邪魔します。
「うわあ。勇者ケンタだ」
勇者ケンタの衣装に喜んでいる少年に、エマがソフトキャンディを渡しました。
「あたしのおっぱいと同じ弾力になるよう、こねてあるわ。これで母性を思い出して、お母さんに優しくなさい」
「おっぱい」
少年の性癖が歪みそうですね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます